「アンダーアチーバー」の特徴とは? 持てる力を発揮できない子ども
持てる力を発揮できない「アンダーアチーバー」とはどういう子なのでしょう?
一見、賢そうに見えるのに、学業や成績がふるわない子供がいます。もしかすると「アンダーアチーバー」なのかもしれません。その原因と対策について考えていきます。
次のような子供の特徴に思い当たることがありませんか?
普段の言動に「知的さ」が感じられ、複雑な内容の話も理解でき、興味関心を持つことには、周りが驚くようなアイデアや成果を出すこともある。それなのに、学力テストや学業成績は振るわない......。
こうした特徴を持つ子に接する親や教師は、「この子はもっと勉強ができるはず」とやきもきしてしまいます。また、「わざと怠けている」ようにも見え、イライラしてしまうこともあるかもしれません。
知能水準などから予想されるより、低い学力を示す子供を「アンダーアチーバー(未達成児)」といいます。アンダーアチーバーである状態が続くと、例えば以下のように、様々な面でその子にとって悪影響をもたらす場合があります。
・自己評価の低さ
・学校や学習についてネガティブな態度をとる
・目標に向けて行動を起こすことを放棄する
・持続力の欠如
・教室で他の子の取り組みを邪魔する
力を発揮できない状態が当たり前となってしまい、「自分はどうせできない」といった誤った自己評価を持ってしまったり、何事に対しても「やる気」を失ってしまうこともあるのです。
アンダーアチーバーの改善には、まず、「この子はなぜアンダーアチーバーになっているのか?」と、「原因」を探ることが大切とされています。原因を理解することで、より具体的な改善策が見えてきます。ではアンダーアチーバーの原因とは、何なのでしょうか?
アンダーアチーバーが生まれる3つの原因
アンダーアチーバーの原因とは?
アンダーアチーバーの原因は、以下の3つの側面からとらえられます。
■原因1. 学校
何らかの理由で欠席が多い。学校が用いるカリキュラムのペースや学習スタイルが合っていない。教師や友人との関係がうまくいっていない。
■原因2. 家庭
価値基準や教育方針について一貫性がない。適度なオーガナイズがされていない。情緒的サポートがない。過度に自由が与えられている、もしくは過度にコントロールされている。
■原因3. 本人の特性
不安感の強さやうつがあったりと、情緒的に不安定である。「ひといちばい敏感」であるため周りと同じようなペースや環境で課題に取り組むのが難しい。完璧主義や発達障害がある。
こうした「環境」や「特性」が絡み合い、学校の勉強に取り組む気持ちが失われてしまう、もしくは、「やる気」があっても発揮することができないというアンダーアチーバーが生まれてしまいます。
とはいえ、子供によって、アンダーアチーバーの原因は異なります。学校や家庭での問題がそれほど見られなくても、本人の「特性」が強く関係している場合もあれば、環境面が、特性以上に要因となる場合もあるでしょう。いずれにしても、まずは個々の子供の状況を、丁寧に観察することが大切です。
アンダーアチーバー改善のために親にできる支援・対策
例えば、学習障害がアンダーアチーバーの大きな原因になっている子に対し、家庭でいくら教育方針を一貫させ、日常のスケジュールや部屋を整えたとしても、改善するわけではありません。その子のニーズに適した対応を見出し、試していきましょう。■対策1.学校や専門家との連携を深める
アンダーアチーバーとは、学校、家庭、本人の特性が絡み合って生まれるものです。家庭だけの問題ではありませんから、できる範囲で、学校スタッフや、必要ならば心理士や医療関係者などの専門家と力を合わせることが大切です。
■対策2.普段のスケジュールを見直す
日々取り組むことが多過ぎたり、予期しない出来事が頻繁に起こるといった常に不規則な生活リズムも、アンダーアチーバーの原因になることがあります。遊びや子供本人が興味関心を持つことに没頭できる時間を取り入れ、「めりはりのある心地よい生活リズム」を築いてやりましょう。
■対策3.どんな学習スタイルが合っているかを探る
子供によって、学習方法は異なるため、学校で提供される「画一的な授業スタイル」に合わないことが、アンダーアチーバーの原因となることもあります。
例えば、「創造的な子」はアンダーアチーバーになり易いという報告があります(*1)。創造的な子は、突拍子もなく見えるアイデアに溢れているため、一定の方法や考え方を「よし」とする学校の授業のあり方とは相容れない場合があるというのです。こうしたケースでは、「競争や速くこなす」といったことを避け、創造的に考え、表現する機会が与えることで、アンダーアチーバーが改善することもあります。
他にも、取り組む課題やペースなどを自分で調整できる「自主性」を与えることで、「やる気」が高まる場合もあります。図やゲームや歌を用いたり、野外体験学習など、五感や身体を用いることで、より学習がスムーズに進む場合もあるでしょう。また、順序だてて教えられるよりも、まずは全体像を掴むことで、細部により目を向けることができる子もいます。
何十人もの生徒をまとめる学校側ができることにも限りがありますから、学校スタッフと話し合いつつ、学校以外でできることに、できる範囲で取り組んでいくのも方法です。
■対策4.得意を伸ばし苦手へ向き合う自信とスキルを身につける
得意を励まし伸ばすことで、自己評価も高まり、自信がつきます。「弱み」を克服することばかりにとらわれるよりも、「強み」を伸ばすことで、弱みへ対処するための具体的なスキルを身につけることもできます。例えば、歴史が好きで、歴史上の将軍の難しい名前などを覚える内に、苦手な漢字への抵抗感が減ることもあるかもしれません。
学校の勉強や成績といった以外の、より多様な「ものさし」を持って子どもに向き合ってみます。絵を描くのが好き、スポーツが好き、虫や動物が好きなど、何でもいいのです。その子が夢中になれるものを認め、「自分はこれなら結構いけるかも」といった自信をつけてやりましょう。その子の目線に立ち、その子が持つ興味や情熱に気づいてやりたいですね。
■対策5.「能力やスキルは鍛えるほど伸びる」と強調する
「頑張ってできなかったら能力がないと思われてしまう」といった「恐れ」が、アンダーアチーバーの原因となる場合もあります。「元々の能力があろうがなかろうが、鍛えれば鍛えるほど伸びるのよ」と励ましてやリましょう。「能力は生まれつきのもので努力したってそうは変わらない」と思うよりも、「能力は筋力のように鍛えるほど伸びるもの」と信じられる方が、断然、アンダーアチーバーも改善へ向かいます。「賢い」や「できる」といった「評価」を与えるよりも、能力を鍛えようと努力する「過程の姿勢」を認めてやりましょう。
■対策6.周りとの比較ではなく、昨日の自分と比べるよう励ます
周りにとって「ほんのわずか「上達」に見えたとしても、その子にとっては大きな「ブレークスルー」かもしれません。周りとではなく、昨日の自分と比べ、自分のペースで進むのを励ましてやりましょう。その子なりの「できた!」をこつこつと積み重ねていくなら、必ず、「こんなにも遠くまで歩いてきたんだ!」と振り返る日が来ます。
子供によって異なるニーズを見出し工夫することで、その子が本来が持つ力を存分に発揮しやすくなります。アンダーアチーバーの原因と対策を正しく理解し、適切な支援をサポートしてあげましょう。
参考資料:
(*1)‘Meeting the needs of gifted underachievers – individually!’ by Smutney, J.
(*2)‘Gifted Underachievement: Root Causes and Reversal Strategies’ by Alexander R. Pagnani
(*3)‘The underachievement of gifted students: What do we know and where do we go?’ by Reis, S. & McCoach, D.
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