建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

アウトドア志向のキューブの家[木造の家]

アウトドアが大好きな一家がお好みのアンティーク家具に囲まれて元気に暮らす、石井井上建築事務所が手掛けた木造住宅の建築実例のご紹介。木造という普通の材料と普通の工法を使いながら出来るだけシンプルに造ることで、高い天井とフリープランを実現させています。

執筆者:川畑 博哉

吉祥寺から北側にしばらく行った閑静な住宅地。近くに桜並木の続く小川もある低層の家が並ぶ街に、大きな白い立方体のような2階建ての木造住宅が建っています。

T夫妻は今から5年前にご主人が東京近県に転勤したのを機に、奥様のご実家も近い吉祥寺の近隣に自宅を建てることを決めました。そこで建築家探しをしていた時、住宅のテレビ番組で石井大さんと井上牧子さんが設計した[SHIMASIMA BLDG.]を見て、建て主の家族構成も同じでその暮らし方にも共感し、お二人に設計を依頼しました。

シンプルな白いキューブの家

外観
北西側の外観。外壁は窯業系サイディング仕上げ。敷地の北側を2.2mセットバックしてガレージスペースにしている。
入口
南西側の外観。南側の2階にバスルームのテラスが張り出す。
外観
玄関の扉はデザイン性と内部への採光を考え、スチール製の框戸(かまちど)になっている。高さは約2.2m。大きな庇の上にも採光用の窓がとられている。

Tさんのお宅は比較的広めの道が交差する角地に建っています。北側と西側が道路に面し、南側と東側には隣家が迫っています。さりげなくポツンと置かれた四角い箱のようなイメージの外観が特徴的。

白い外壁には大きな青い玄関扉が映えています。デザイン性と内部への採光を考え、スチール製のスタイリッシュな框ドアが選ばれました。また将来玄関先でショップを開くことも考慮して良い「店構え」となるようデザインされています。

高い天井のワンルームのLDK

玄関
コンクリートの土間の広い玄関。自転車も置ける。玄関ドアの向かいは間仕切り収納が立ち上がる。手前の洗面台は、フランス軍払い下げの折りたたみ式手洗いのアンティークを改造したもの。上のウォールランプは、豆電球がポツンとついているようなイメージのものを選んだ。
LDK
玄関土間から続くダイニングは、ショップの奥のオフィススペースかのようなさりげない空間になっている。ダイニングのペンダントランプのシェードはガラスの漏斗を改造したもの。
LDK
リビングの南西側。下から1.5mの高い位置に大きな窓がある。家具はアンティークやアウトドア用のものが混在する。床はアッシュ材のオイル塗装。天井から吊り下がる金属製のペンダントライトは工場で使われていたアンティークもの。
LDK
リビングの北側。玄関収納と背中合わせになった間仕切りの本棚が立ち上がる。高さは2.2m。
LDK
階段が斜めに走るリビングの東側。窓のある間仕切りの奥がキッチン。間仕切の高さは約2.2m。天井まで達していない。

耐震上必要な壁はすべて外周の壁でとり、柱や梁は規則正しく配置して、極力その多くを室内に現しにしています。玄関やキッチンを仕切る壁は非耐力壁なので、将来の変更のしやすさもあります。

玄関の土間はちょっとした立ち話もでき、上がり框に腰をかけて本でも読める、縁側のような心地よい空間になっています。

リビングは天井高が約3.1mもあり空間に広がりを与えています。回遊性のあるワンルームなので子供たちと愛犬は家の中を元気に走り回っています。北側と西側は公道に面しているため、プライバシーに配慮して、道行く人が見えない高い位置にそれぞれ1つずつ大きな窓をとっています。

リビングに開いた窓のあるキッチン

階段
キッチンの手前に鉄製の階段が走る。横に長い間仕切りの窓からキッチンが伺える。
台所
キッチンの床はダイニングのフローリングとは段差が無いが、水濡れに配慮してビニル床タイルに変えている。壁はフレキシブルボードと10cm角の白いタイル張り。
台所
キッチンの壁にはバーを取付けS字フックで調理道具を吊るしている。壁の奥には収納とトイレが続く。冷蔵庫の隣に置かれたアンティークの机の足元は床下収納になっている。
台所
階段から間仕切り越しにキッチンを覗く。カウンターのトップはステンレス。レンジフードは建築家のデザインをもとに工務店が製作した。

ハードな素材も好まれるTさんの趣味も考慮して、階段は木製ではなく鉄骨製にして全体のバランスをとっています。

キッチンは階段の東側に立つ間仕切り壁だけでリビングと隔てられています。この壁は天井まで届いていないので、リビングや2階の子供室の様子まで良くわかります。お子さんはよく階段に座って、壁の窓越しにお母さんとお話しされるそうです。

光にあふれるバスルーム

2階
東側に寝室、西側に子供室、奥の南側は洗面室とバスルーム。
寝室
寝室は天井の高さを利用してロフトが造られている。ロフトの下はウォーキングクローゼット。床はラワン合板。
子供室
子供室はあえて机を購入せず、隔てて置いた収納家具に板を渡して机の代わりにしている。将来、真ん中に壁を立てて2部屋に分けられるようになっている。写真:石井井上建築事務所
洗面室
洗面室はお気に入りの理科室の実験用シンクを設置。蛇口ハンドルも陶器製。床はビニル床タイル。
風呂
バスルームの壁はFRP防水、床はモルタル金コテ押え仕上げ。バスタブの側面がむき出しなので掃除が簡単。

2階は階段を真ん中にして、東側が寝室、西側が子供室、南側が洗面室とバスルームになっています。

洗面室とバスルームはこの家で一番光の入る部屋で、テラスに面したガラス窓を開けると、一気に換気ができます。ガラス窓は洗面室からバスルームまで続いているので、外の光が入りこんできます。洗面室とバスルームはシャワーカーテンのみで仕切っているので、風通しの良い広々とした水廻りになっています。

建築家が用意したおおらかな空間には、T夫妻の選んだお気に入りの家具や道具が美しく配置されています。Tさん一家はその中で元気な子供たちの成長を見守りながら、毎日を楽しんで暮らしておられます。

[木造の家]
所在地: 東京都
構造・規模: 木造 地上2階
竣工年月: 2014年3月
敷地面積: 86.21m2
建築面積: 44.27m2
延床面積: 85.52m2
設計・監理: 石井井上建築事務所
構造設計: 石井井上建築事務所


石井 大+井上牧子[石井井上建築事務所]プロフィール

「住む人が自ら空間を変えたりつくったりする自由がある住宅を念頭において、生活の中の多様性、変化、矛盾といったものを受け入れることができる建築」をポリシーに設計活動を続け、これまでに数多くの戸建て住宅や集合住宅やリノベーションを実現させてきました。

石井井上建築事務所
Tel. 03-5684-3620
http://www.ishii-inoue.com/

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    石井 大[Ishii Dai]  井上牧子 [Inoue Makiko]


これまで登場した石井井上建築事務所の住宅



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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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