代償分割とは
最近、久しぶりに学生時代の連中と呑みました。全員50代。話の中身は、子どもの教育、持病、年金、相続に関するものが大半で、「ああ、そういうお年頃になったのね」と、改めて自分が中年後期に入ったことを実感した次第です。さて、その中の一人が、こんな話をしていました。親が亡くなってからも、親と同居していた自宅に住んでいるのですが、どうやらお姉さんが「私も自宅の半分を相続する権利があるのよ」とねじ込んできており、「さあ、どうする」という状況になっているようです。
貯蓄を取り崩しても評価額の半分には満たず、かといって自宅を売却するわけにもいかない状況とのこと。そこで、自宅を担保に不動産ローンを組み、そこから評価額の半分を、現金で姉に渡すことを検討しているそうです。
これを「代償分割」というのですが、これはこれでいろいろ大変です。
代償分割の問題点
まず、自宅の評価額をどう算定するかという問題。不動産価格は、株価のように一物一価ではありません。もちろん周辺の評価額から近似値を求めることはできますが、実際に売却したら1~2割程度のブレが生じると言われています。評価額が安ければ、代償金も安くなりますが、逆に評価額が高ければ、代償金も高くつきます。その他、金融機関からの借入で代償金を賄う場合は、不動産担保ローンの金利負担が生じます。不動産担保ローンに適用される金利は、住宅ローンに比べて高めに設定されています。
しかも、仮に途中で返済が滞ったら、担保に入れた自宅は差し押さえの対象になります。また、金融機関は差し押さえた不動産を市場で売却しますが、その際の価格が融資金額に満たない場合は、不足分についても請求されます。
株式や債券などの有価証券、現預金を相続した場合は、複数の相続人がいても簡単に分けられますが、不動産だけはそう簡単にいきません。しかも、売却するにしても、代償分割するために金融機関から借り入れを受けるにしても、煩わしい手続きと時間が掛かります。
50代になったら親の資産を把握しよう
このように、複数相続人の間で簡単に分けられない遺産については、分けにくいものを無理に分けるのではなく、他の遺産と相殺する形で、特定の相続人が一つの遺産を全部相続する形にした方が良いでしょう。それは、親が存命中に、相続人と被相続人の間でよく話し合って決めることですし、決まったものについてはきちんと遺言状に書いてもらうようにした方が無難です。さらに言えば、自分が50代になったら、自分の親が持っている資産の中身をある程度、把握しておくことも肝心です。親が80歳、90歳というように高齢の場合であればなおさらです。いずれにしても手間はかかりますが、せっかくの埋蔵金ですから、知らずに損をすることのないようにしたいところです。