AIを搭載し声で操作できるスピーカー
ここ最近、IT業界で大きな話題となっているものの1つに「スマートスピーカー」が挙げられます。米国でアマゾンのスマートスピーカー「Amazon Echo」がヒットしたのを皮切りとして、グーグルが「Google Home」、アップルが「HomePod」を投入するなど、大手IT企業が相次いでスマートスピーカーの分野に参入したことで、米国を中心として急速に盛り上がりを見せているのです。とはいえ、日本ではまだスマートスピーカー自体提供されていないことから、一体スマートスピーカーとは何なのか、何ができるのか、というのはあまり知られていないかもしれません。スマートスピーカーは、その名前の通り音楽を聴くのに用いるスピーカーなのですが、インターネットに必ず接続する必要があることからも分かるように、単なる音響機器ではありません。
スマートスピーカーが“スマート”である最大のポイントは、人工知能(AI)を搭載し、声で話しかけることによって操作ができることにあります。スマートスピーカーには電源以外のボタンはほぼ存在せず、スピーカーに「曲をかけて」「止めて」といったように直接話しかけることにより、AIがその言葉を解釈してユーザーがしたいことを判断し、楽曲の再生や音量などをコントロールしてくれる訳です。
さらにスマートスピーカーには、「元気が出る曲をかけて」などと話しかけることで、気分に合った楽曲を再生してくれるなど、AIを活用し人間の曖昧な命令にも応えてくれる仕組みが用意されています。自分の思ったことを話して伝えるだけで、AIがそれに応じたコントロールをしてくれることが、人気を獲得した大きな要因の1つとなっています。
スピーカーに話しかけて買い物ができる!
ですが、スマートスピーカーの機能は音楽に関連するものだけにとどまりません。スマートスピーカーを部屋に置いておくだけで、iPhoneでいうところの「Siri」に代表される音声アシスタント機能を、部屋の中でも利用できるようになるのです。それゆえスマートスピーカーに「今日の天気は?」「今日のニュースは?」などと聞けば、今日の天気や主要なニュースを声で教えてくれますし、デバイスによっては話しかけるだけで買い物をすることなども可能。また対応する家電機器などを用意すれば、スマートスピーカーに「電気を消して」「明るさを変えて」などと話すだけで、それら機器の操作もできるようになります。
さらにいくつかのスマートスピーカーは、プラグインを追加することで、使える機能を増やすことも可能となっています。例えばAmazon Echoでは、「スキル」と呼ばれるプラグインを追加することで、ピザを頼んだり、Uberで配車したりと、さまざまな機能を追加してより便利にできるようになっています。
スマートスピーカーは便利な音響機器にとどまらず、自分がしたいことを話しかけるだけでそれに対応してくれる「AIアシスタント」でもあることが、人気と注目を集める大きな要因となっている訳です。
AIが要、スピーカー以外のデバイスも登場
スマートスピーカーの代表例としては、Amazon Echoのほかグーグルの「Google Home」が挙げられます。ですが今年6月にはアップルが「HomePod」を投入することを発表。マイクロソフトも5月にハーマンカードン製のスマートスピーカーを投入することを打ち出すなど、米国ではIT大手がこぞってこの分野に参入しています。日本ではまだスマートスピーカー自体が販売されていませんが、今年秋にはLINEが独自のスマートスピーカー「WAVE」を発売することを発表。またグーグルも今年後半にGoogle Homeを国内投入することを明らかにしており、今年の秋から冬にかけてスマートスピーカーが急速に盛り上がっていくものと考えられています。
なぜIT企業がスマートスピーカーに力を入れているのかというと、その理由はAIにあります。アマゾンであれば「Alexa」、グーグルであれば「Googleアシスタント」、LINEであれば「Clova」といったように、各社のスマートスピーカーには各社が独自に開発したAIが搭載されており、AIの優秀さを競っている訳です。
AIに力を入れるIT企業にとって、実はスマートスピーカーはAIを便利に活用してもらうための手段の1つに過ぎません。それゆえ今後はスピーカーだけでなく、より幅広い機器にAIが搭載されるようになるでしょうし、それによってAIの存在が、我々にとって一層身近なものになっていくと考えられます。
AIと聞くと遠い未来のもののように思えるかもしれませんが、スマートスピーカーの登場によって、とても身近な存在になろうとしているのです。日本で製品が出るのはもう少し先になりそうですが、安いものでは1万円台から購入できるなど比較的安価なことから、興味がある人はぜひ購入して体験してみるといいのではないでしょうか。