高杉真宙さんインタビュー
タナカカツキ原作漫画を実写映画化した2017年7月8日公開の『逆光の頃』は、高杉真宙の今の輝きを封じ込めた作品です。京都の街を舞台に、思春期の心のゆらぎを映し出した独特の映像美の中にたたずむ高杉さんのキレイなこと!映画『逆光の頃』だけでなく、2017年は出演映画が6作品公開、7月1日にはセカンド写真集『20/7』が発売という超売れっ子の高杉さん。そこで、映画の話+俳優としての活動などについて語っていただきました。
『逆光の頃』で京都の魅力にハマる
――『逆光の頃』では赤田孝豊という高校生の役ですが、様々なことを胸に秘めた男の子という印象が強かったです。高杉さんは、孝豊という役をどのように解釈して演じていましたか?高杉真宙さん(以下、高杉)「自分に似ている男の子だと解釈しました。僕は自己評価が低いというか劣等感を抱くことが多いんですが、そこは似ているかもしれません。あと孝豊と親友の公平のシーンで現実とリンクすることがありました。
公平役の清水尋也くんは『渇き。』で共演しているのですが、僕と清水くんの間の距離感と、孝豊と公平の距離感が似ているんですよ。孝豊の目から見る公平の姿は、僕が感じている清水くんの印象と重なるんです。だから清水くんとのシーンは楽しかったですね。ただときどき、孝豊が自分に似すぎてしっくりきちゃうからこそ、難しいとも思いました」
――自分に似ているとかえって難しいものなのですね。
高杉「そうですね。わかる部分もあるから理解は早いと思いますが、似ていても僕ではないから、常に孝豊として存在していようと意識していました。
特に孝豊は、主役だけど目立ち過ぎてもダメ、出過ぎてもダメというキャラクターで、さじ加減が難しい役。微妙なラインに立ちながらも、ちゃんと映画の中で中心人物として存在していないといけないところは難しかったです。
でも京都という町と共演者の存在が手助けになりました。京都で彼らといることで、孝豊の個性は立ち上がって来ると思いましたね」
――なるほど。でもひとりのシーンでもちゃんと存在感ありましたよ。また京都が孝豊に似合っていました。ずっと京都に滞在して撮影されていたんですよね。
高杉「こんなに京都と深くかかわるのは初めてでした。修学旅行で京都に行ったことはあったのですが、あの頃は何もわかっていなかったですね(笑)。今回、京都の魅力再発見。こんなに素敵な場所だったとは!という感じです。“僕はなんで京都生まれじゃないのだろう。悔しい!”とマネージャーさんに言ったくらい大好きです。
ただ京都弁は難しかった。僕の出身地の博多弁は言葉が速いんですが、京都の言葉はゆっくりなんです。最後の最後まで調整しながら演じていました」
飛躍の2017年、出演作6作品公開!
――2017年は高杉さんにとって大忙しの年ですね。出演作6作品公開! 『PとJK』『ReLIFE』『想影』ときて、本作があり、今後は『トリガール!』(9月1日公開)『散歩する侵略者』(9月9日公開)と立て続けに公開されます。ご自身の中で「今年の俺、すごいキテるな!」と思ったりしていませんか?
高杉「さすがにキテるとは思っていませんけど(笑)、たくさんの方に見ていただける機会が増えたり、映画に呼んでいただけたりという喜びはあります。何かを求められているからこそ、僕は呼ばれていると考えているので、出演したすべての作品で、自分をしっかり残して“また高杉と仕事したい”と思われる役者になりたいです。それが僕の目標とする役者に近づく1歩だと思っています。
ひとつひとつの作品で120%の力を発揮してやっていきたい。それを取り逃すともう呼んでもらえませんから。僕は、この監督と仕事したい、この役者さんと共演したいというのはないんです。今年たくさん公開作がありますが、また仕事したいと思われる役者になるチャンスが広がったと思っています。だから“僕は今、すごくキテる!”という気持ちはないんです(笑)」
――そんな風に考えるようになったのは、何かきっかけというかターニングポイントになった作品はあったのでしょうか?
高杉「特定の作品ではなくて、仕事をやっていくうちに、監督や共演の俳優さんとまた会いたいという思いが、また呼んでもらいたいという思いに変わっていったんです。
“初めまして”という挨拶よりも“お久しぶりです”と言える喜び。それは演技あってこそなのですが、それだけじゃなく、人柄というか、高杉真宙自身がちゃんとしていないとダメだとも思います。とにかく、また会いたい、高杉にこういう役を演じさせたいと思ってもらえる役者でいたい。いろんな人に出会って、いろんな役を演じて、自分の限界を知りたいですね」
崖から落とされたような激動の20歳
――7月4日に21歳のお誕生日を迎えますが、20歳の1年はいかがでしたか?
高杉「早かったです。崖から落とされて、頑張って這い上がるような1年でした。でも映画にたくさん出演させていただいて、映画の仕事の大変さと楽しさを知ることができました。そういう意味ではターニングポイントとなった20歳です。
お酒も飲める年になりまして『逆光の頃』の小林啓一監督と飲めたのはうれしかったです。小林監督は僕が16歳の時に撮影した『ぼんとリンちゃん』の監督で、そのときから4年越し。『逆光の頃』の撮影は、19歳と20歳をまたいでいたので、20歳になったときに監督と飲めたらいいなあと思っていたんです。僕はそんなにお酒強くないんですけど、実現できてうれしかった。小林監督とは2度目の仕事ですが、こうやって仕事で再会できることが、僕の求めていることなので。
ただプライベートの僕は何も変わりません。20歳ってこんなもんか~という感じ(笑)。やっぱり自分が変わろうとしないと何も変わらないものですね」
高杉真宙(たかすぎ・まひろ)
1996年7月4日、福岡生まれ。小学生のときに地元でスカウトされて芸能界入り。2009年舞台「エブリ リトル シング'09」で役者デビュー。その後、舞台、ドラマ、映画、CMと活躍の場を広げていく。映画出演作は『カルテット!』(2012)『ぼんとリンちゃん』『渇き。』(2014)『PとJK』『ReLIFE』『想影』『トリガール!』『散歩する侵略者』(2017)など。2018年公開の『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』の出演も決定している。
『逆光の頃』(2017年7月8日公開)
京都の高校生、孝豊(高杉真宙)が、親友の公平(清水尋也)、幼なじみのみこと(葵わかな)と過ごす何気ない日常。ときどき波風を立てながらも通り過ぎていく十代のかけがえのない日々を描いた作品。
監督/小林啓一
映画『逆光の頃』公式サイト