ゴルフ7からゴルフ7.5へアップデート
2017年5月末にビッグマイナーチェンジを受けたフォルクスワーゲン・ゴルフは、「ゴルフ7から7.5へのアップデート」と表現したくなる大幅な変更になっている。
運転支援システムを含む安全装備の強化、最新のデジタルインターフェイスの採用、小幅ながらもエクステリアの変更、ゴルフGTI、ゴルフRというスポーツモデルの動力性能の向上が柱で、ハッチバックだけでなくワゴン(ヴァリアント)、ヴァリアント派生のSUVであるオールトラックを含む大がかりなものだ。
走りに関しては、ゴルフGTIを10psアップの230psへ、ゴルフRを30ps向上の310psに引き上げ、ゴルフRには新開発となる湿式7速DSGを採用。さらに、GTIは同じ6速DSGのままであるものの、変速比が若干変更されている(最終減速比は不変)。
より上質さを増した走り
これ以外のパワートレーンや足まわり、ボディ関連などの変更点はとくにアナウンスされていない。
しかし、ハッチバックのTSIハイライン(1.4L+7速DSG)から走り出すと、乗り味にしなやかさが増している気がするのだ。基本的にフォルクスワーゲンらしいしっかり感と硬さをベースとしながらも、改良前で感じられたコツコツ、ゴツゴツとした乗り味や微振動が影を潜めている。硬さの中にもしなやかで上質感がある。
ヴァリアントも同様だ。試乗車のゴルフ・ヴァリアントTSIハイライン(1.4L+7速DSG)は、ハッチバックほどのボディ(とくに後席より後ろのリヤまわり)の凝縮感はないものの、改良前の荷物を積まない空荷状態で走る硬さがだいぶマイルドになっている。
今回のマイナーチェンジを機に足まわりの微調整(チューニング)が施されている可能性を感じさせるしなやかな乗り味は、試乗ステージが異なる、個体差もあるかも、という条件を前提にしても朗報と考えてよさそうだ
パワートレーンの印象は改良前と変わらない。1.4L+7速DSGによる速度域を問わず、力強い加速フィールが得られるのは「TSIハイライン」を選ぶ価値を存分に感じさせるもの。
ゴルフ・ヴァリアントRは速さとスムーズさを併せ持つ
わずか30分だけ試乗できたゴルフ・ヴァリアントR(2.0L+7速DSGモデル)も魅力は十分だ。
30psの増強により登り坂が続く山道でもどこから踏んでも「超」が付くほど痛快な加速が得られるし、第2世代にスイッチしたアダプティブシャーシコントロール「DCC」を「レース」モードに入れればエンジンはよりシャープに吹け上がり、シフトフィールもパワーバンドを外さない。なお、7速DSGを「Sモード」に入れても刺激的な走りが楽しめる。
ほかにも、電子制御式ディファレンシャルロックの「XDS」により、アンダーステアを抑制する自然なハンドリングもゴルフRの美点。今回の試乗では味見程度であったが、ヴァリアントという大開口のテールゲートを持つボディでも一体感のある走りが得られた。これがハッチバックのRならなおさらだろう。
見た目以上に中身は大きく進化
安全デバイスの渋滞時追従支援システムやレーンキープアシストなどは、パサートやティグアンなど上位モデルに採用されていたもので、コンパクトカーという位置づけのゴルフにも設定されたもの。歩行者検知機能の追加も含めて安全性、快適性が上がったのもうれしいところだ。
一方で、前後バンパーや前後ライトをLED化したという外観は、パッと見では改良前と差がわかりにくいというのも正直なところ。細部はシャープ差が増して、より上質感やウインカーが流れるように点灯するなど、先進性も増しているが、改良前のオーナーでない限り、「マイナーチェンジした」と言われないと(新色のぞく)わからないかもしれない。
Cセグメントのベンチマークはやはりゴルフ
内装の見所であるデジタルインターフェイスでは、メーターのデジタル表示により先進性と視認性が一歩進んだのがよくわかる。また、ナビ画面のサイズアップも視認性向上に大きく寄与している。
逆に、フォルクスワーゲン初のジェスチャー・コントロールは、このゴルフのシステムに限らず、どういったシーンでどうやって手をどう振るか覚える必要があるため、じっくり向き合わないと(もしくは教えてもらう)、意のままに使いこなすまでは至らなそう。
ビッグマイナーチェンジを受けたフォルクスワーゲン・ゴルフ。外観はあまり代わり映えしていないように思えるかもしれないが、使い勝手や安全、運転支援デバイス、スポーツモデルの進化などポイントは数多い。アナウンスされていない領域でも改良前よりも熟成が進んだ印象で、Cセグメント不動のベンチマーク(指標)という立ち位置は不変のようだ。