皮膚・爪・髪の病気

汗あれ・あせもの症状・予防法・治療法

【皮膚科医が解説】夏に増えるのがかゆみを伴う「あせも」「汗あれ」症状の訴えです。あせもと汗あれの症状、症例画像、予防法、治療法を解説します。悪化して「とびひ」になることや、カンジダなどの菌が原因のこともあるので、早めに皮膚科への受診と治療が大切です。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

あせもの原因・症例画像

汗あれ・あせもの症状・予防法・治療法

汗をかくシーズンになると、あせもや汗あれといった汗で皮膚が荒れる症状で皮膚科を受診する患者さんが増える

汗が原因で皮膚に出る発疹と言えば、「あせも」が思い浮かぶと思います。英語ではheat rashと呼ばれ、文字通り暑さにより出る発疹を指します。あせもは特に子どもに多く、かゆみを伴う赤いポツポツが特徴的です。汗のたまりやすい首、胸、肩に出やすいです。汗管(かんかん)という皮膚の表面に汗を排出する管が詰まってしまうことによりその成分が皮膚の中に残り、炎症を起こすことが原因とされています。

あせもは子どもの中でも、特に新生児に多くみられますが、汗管が成長しきっていないことが原因の1つと考えられています。暑く湿度の高い夏に多いですが、冬でも暖房をかけすぎたり、厚着をさせたりすることでも起きます。

■新生児のあせもの症例画像
あせも臨床

首、胸、肩など汗のたまりやすい場所にあせもは赤いポツポツで出現する

 
あせもの症例画像

新生児の身体に出たあせもの症例

 <目次>  

あせもの効果的な予防法・治療法……酷いときはステロイドを

あせもの症状が軽ければ、暑く汗をかきやすい環境を改善するだけで症状はひきます。冷房で部屋を涼しくする、厚着をさせないといったことに気を付けましょう。赤みが強くなってしまうと自然にひかなくなります。炎症が強い場合、放っておくと広がるので、その場合は副作用を怖がらずにステロイドの塗り薬を数日塗るのが効果的です。皮膚科を受診すれば処方してもらえます。ステロイドの副作用は数日では出ませんので、心配せずに医師の指示に従い、かゆみや赤みの症状に使ってあげるのがよいでしょう。
あせも治療

汗をサッとシャワーで流し、赤いポツポツしたあせもの範囲が広いときにはステロイドの塗り薬を数日ぬってあげれば症状がおさまります


夏の7月、8月は、夏休みということもあるのか、多くのお子さんがあせもで皮膚科を受診されます。赤いぽつぽつだけであれば、範囲が広い場合でもステロイドの塗り薬を1日2回塗ると、数日で症状は消えることがほとんどです。たかがあせもと思って放置したことで、かきこわして「とびひ」になってしまったお子さんも大勢診てきました。とびひになると細菌を殺す抗生剤による治療が必要になってしまいますし、かきこわしが強いと、皮膚に痕が残ることもあります。あせもが広がってきたら早めに皮膚科を受診して下さい。

■とびひの症例画像
とびひ・飛び火・画像・症例

とびひの症例画像。このように悪化してしまうと、細菌を殺す抗生剤による治療が必要になり、皮膚に痕が残ってしまうこともあります。

 

汗あれとは? あせもとの違い・症状・症例画像

子どもに出やすいあせもに対して、汗がたまりやすい脇や、股がこすれてできるのが「汗あれ」です。こちらは子供よりも大人に多くみられます。医学用語では間擦疹(英語ではintertrigo)と呼ばれます。夏になると汗がたまりやすい部位がむれて、脇、股が赤くなりやすくなります。また、汗をかいた首、下腹部が服とこすれて赤くなることもよくありますし、女性の場合、乳房の下が赤くなることもあります。放っておくと赤くなるだけではなく、がさがさしたり、じゅくじゅくしてくることがあります。
 
汗あれ

汗でむれて首がガサガサし、荒れはじめている。放っておくと、次第に赤くなってじゅくじゅくしてくる。


私自身も、夏になってから襟のきついワイシャツを着ていたときに、シャツに当たっていた部分がこすれて首が赤くなってかゆくなることがありますし、脇やふとももの内側に汗をかいて赤みが出ることも度々あります。そのような時には強めのステロイドの塗り薬を3日ほど塗って、すぐに症状を治めるようにしています。
 

汗あれの効果的な予防法・治療法……症状が強い場合は皮膚科へ

汗あれは、あせもと同じように、汗をかきやすくなる環境を避ければ改善します。エアコンの効いた涼しい部屋にいる、通気性のいい服を着る、締め付けの強い服を避けることが大切です。また、肥満傾向のある方は汗をかきやすく、脇や股も擦れやすくなるので、健康的な体型を保つことも大事です。運動をして汗をたくさんかいた後にはシャワーを浴びて汗がたまらないようにしましょう。赤みだけで症状が軽いときにはこれらの努力だけで自然に消えることもよくあります。

赤みやかゆみが強い、がさがさやじゅくじゅくが出てきた、というときには自然には消えないことが多いので、皮膚科医に診てもらいましょう。炎症を起こしていることが多いので、ステロイドの塗り薬がよく効きます。

また、脇や股、女性の乳房の下、といったむれやすい部分は、ただの汗あれではなく「カンジダ」というカビの一種が増えて赤くがさがさ、じゅくじゅくすることがあります。カンジダ自体はどんな人の皮膚の表面にもいるカビなのでそれ自体が悪いわけではないのですが、特に夏にむれる部位で繁殖すると赤いがさがさを起こします。炎症を起こしているだけの赤みと区別が見た目には難しいのですが、カンジダの場合は表面が湿っていて白く皮膚がむけている場合が多いです。カンジダは市販薬では対処が難しく、皮膚科の医師に顕微鏡で診断してもらう必要があります。カンジダの場合はステロイドをぬると逆効果で、カビを殺す作用のある「抗真菌剤」が必要になります。ほかのクリニックでステロイドをもらってぬっていたけれどもだんだん症状が悪くなってきたので受診しました、という患者さんで、顕微鏡検査をしたらカンジダだったという方を何人も診てきました。脇や股に治らない赤みが出現したときには皮膚科を受診して診断をつけてもらいましょう。
 

あせもも汗あれも、症状が悪化する前に皮膚科へ

夏になるとあせもや汗あれといった特徴的な皮膚の症状が出やすくなります。通気性のいい服を着たり涼しい環境にいるように心がけるだけでも症状は改善します。夏になると多くのあせも、汗あれの患者さんが受診しますが、かかるのが遅くてすでにかきこわしてとびひになってしまっている場合や範囲が広がっている場合があります。早めに治療をすれば症状がひどくならずにすみますので、皮膚科の専門医を受診して下さい。

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