以前の住まいにはリビングに窓が無く、日中から照明をつけなくてはならなかったので、奥様の伯父にあたる越賀克郎さんに設計を依頼するにあたって、何より「明るい家」を希望されました。
三角屋根の積み木のような家
三角のコンクリート打放しの張り出しと切妻屋根が印象的な東南側の外観。2階の外壁はガルバリウム鋼板張り。 |
北側のガレージは、2階を張り出すことで雨除けになっている。 |
東側の真ん中に造られた切り欠き庭。シマトネリコが植えられている。2階の外壁とデザインを揃えた1階の目隠しはアルミルーバー。 |
植栽が覆いかぶさるように設えられた玄関のアプローチ。テーマカラーのブルーの帯と玄関扉が訪問者を玄関に誘う。 |
モルタルの玄関アプローチには、青いビー玉がランダムに埋め込まれている。 |
最寄りの駅から環八を渡ると、Yさんの家のある成熟した住宅地が広がっています。家の前を走る道路は思いのほか交通量があり、その騒音と振動の影響を考慮して1階は堅牢なコンクリート造となりました。その上に木造の2階を建ち上げています。
正面の三角のコンクリートの壁と、大きな箱のような2階の上に三角の屋根が載った外観は、積み木のような印象です。
柱が連続する大空間のLDK
ダイニングからリビングとテラスを見る。床は竹のフローリング。 |
西側の壁に沿って空調用のダクトが立ち上がる。壁の本棚には奥様のアート本が並ぶ。 |
ベランダからダイニングとキッチンを見る。横たわる2本の太い梁はSPF材。 |
天井のトップライトから柔らかな光が降注ぐ。奥の梁の上はロフトになっている。 |
ロフトからLDKを見下ろす。魚の絵柄のカーペットはギャッツベという南ペルシアの遊牧民の手織り絨毯。 |
2階は11本のSPF(Spruce:スプルース、Pine:マツ、Fir:モミの頭文字)材の2×10材の柱が45.5cmのピッチで連続して大空間を造り出しています。天井は最も高い所で4.45mもあり、西側のトップライトから入り込む自然光が室内を明るく照らします。LDKの広さは約16帖ですが、この天井の高さが数倍の空間の広がりを演出しています。
またこの部屋の空調は、壁のダクトで天井の高いところに溜まった暖気を一階床下収納に吹き込み、床下の防湿と生活熱の回収するシステムを採用しています。快適な室内環境をつくりだす、シンプルでいながら充分に効果的なシステムになっています。
東側に並ぶダイニングとキッチン
正面に張り出した南向きのベランダ。高さ1.8mのコンクリート打放しの壁がプライバシーを守る。晴れた日には物干し場にもなる。 |
柱の間を利用したリビングの本棚。足元から38cm立ち上がった小上がりは収納も兼ねている。 |
ガラスを載せた飾り棚がアクセントになったダイニングの窓。 |
キッチンはステンレスの天板と収納部分の家具をそれぞれ発注し組み合わせた、建築家のデザインによる特注品。シンクの下のダストボックスは奥様のこだわりでセレクト。 |
2階の東側は、本棚のあるリビングの小上がりとダイニングとキッチンが一直線に並んでいます。小上がりは奥行きが80cmもあるので身体を横たえて寛ぐスペースでもあります。
ダイニングでは、切り欠き庭に植えられた緑を窓越しに眺めながら朝食を楽しむことができます。この緑には隣家との目隠しの役割もあります。白と青の2脚の椅子はデンマークの建築家アルネ・ヤコブセンのデザインしたフリッツ・ハンセン社の「タンチェア」。ルイスポールセン社のペンダントライトもヤコブセンのデザインで、共に建築家の越賀さんがYさんご夫妻に薦めたものです。
宙に浮いたバスルームから空を眺める
玄関と廊下は柔らかな色合いの竹のフローリング。コンクリートのタタキの先は切り欠き庭へと続いている。写真:設計コア |
南側に造られた五角形の部屋は奥様のネイルルーム。床は玄関と同じ竹のフローリング。コンクリートの壁に開けられたスリット状の窓から外の光が入り込む。 |
寝室には東側の切り欠き庭に面した高窓から夜明けに朝日が入り込む。姿見の大きな鏡を引くとクローゼットが現れる。 |
2階の北側にある洗面所と洗濯機置場。南側のハイサイドライトが採光と通気を促す。壁の近くを走るパイプは家干し用の物干竿。写真:設計コア |
洗面所と一間続きになっているバスルーム。テーマカラーのブルーの壁が立ち上がる。写真:設計コア |
1階は大きなコンクリートのボックスのような構造で、2階の土台となっています。先端は奥様のネイルルーム、廊下を挟んで北側には寝室が配置されています。寝室はYさんの希望で東側の高窓から朝日が入り込むようになっています。
2階の北側、キッチンの奥にあるバスルームはガレージの真上に張り出しています。まさに宙に浮いたバスルームです。北側の斜線制限で傾けた天井からは、南側に設けられたトップライトから空を眺めることができます。ここから降注ぐ自然光がバスルームを明るく照らしています。
階段には、まだ生後間もない娘さんのためにネットが張られています。天井の高い伸びやかなリビング空間は、優しい心地良さに包まれています。ここで繰り広げられる日常の豊かさは、幼い子供の記憶にしっかりと刻まれていく事でしょう。
[荻窪の家] | |
所在地: | 東京都杉並区 |
構造・規模: | 木造 地上2階 |
竣工年月: | 2013年7月 |
敷地面積: | 70.00m2 |
建築面積: | 41.65m2 |
延床面積: | 37.78m2 |
設計・監理: | 設計コア/越賀克郎 山里幸司 |
構造設計: | 本岡構造設計事務所/本岡淳一 |
設備設計: | 平本設備コンサルタント/平本 久 |
越賀克郎[設計コア]プロフィール
「限られた土地、建物又は既存のマンションでも、その中で色々な住まい方はできるはずです。同じ面積、同じ予算でも、楽しく健康に住まい続ける事ができるはずです。そんな工夫、提案をしていきたい」をモットーに、自分なりの生活を健康的に過せ、楽しく住み続けられる住宅の実現を目指して、設計活動に励むベテラン建築家です。設計コア |
Tel.03-3377-8800 |
http://www.sekkeikoa.com |
越賀克郎 [Koshiga Katsuro] |