そこに住まう人びとが“癒し”の場でつながっていく共同住宅


 

バナナコートは、オーナー家族2世帯と賃貸9戸を合わせた計11戸の住居兼賃貸マンションです。
となりはキリスト教会という好立地に建つこの建物は、ウッドデッキでつながった4つの棟から成っています。大きな吹き抜けになったエントランスに立つと、そこから続くデッキを導線にして、敷地の中央にある中庭へと視線が導かれていきます。
庭にはほっとするような低い灌木と小さな水場があります。チロチロと流れる水音が聞こえ、ちょっとした癒しの空間になっているわけですね。

 

このデッキの通路は賃貸住居部分の3棟の間を貫き、いちばん奥まった場所にあるオーナーが2世帯で住まう棟へと続いていきますが、そこには視線の広がりと、癒しの空間である中庭を住まい手たちが共有するという思想が生かされているようです。もちろん、風の通り道としての機能も大きなメリットでしょう。

 

賃貸部分の部屋を見せてもらうと、コンクリート打ちっ放しの壁にムクの米松を組み合わせたしっとりとした仕上がりになっています。
一枚一枚手をかけて磨き上げた米松のやわらかい質感が、この住宅にかけたつくり手の愛情を感じさせますね。すべての部屋は大空間がひとつだけのワンルームで、片側に米松の引き戸で仕切られたサニタリー+バスルームが寄せてある構成。

キッチンはこの間仕切りの中に納められているところと、独立してつくられているところがありました。そしてこの間仕切りの上には広めのクローゼットが……。そう、バナナコートではすべての部屋が天井高2850mmを確保しているのです。
「これだけ高いと、視覚的な広がりがすごいでしょう。住まい手の人びとが、自分のライフスタイルに合わせて自由につくりあげていけるよう、とにかく大きな空間をポンと提供したかったんです。よく見るとわかりますが、コンクリートの壁や天井には規則的にボルトが埋めこんであって、絵をかけたり棚をしつらえたり、ハンモックをつるしたりできる工夫をしてるんです。住まい手の想像力を引き出す仕掛けというわけですね」(越賀克郎さん)

癒しの中庭を抜けて奥まった棟に行くと、そこは3階まで突き抜けた大きな玄関のあるオーナーさんの住居棟です。
庭に面した1階は、ふたつの畳の間を持つ親世帯の住まい。となりのドアから入ると子世帯の住まいへと続く階段があり、2階が子どもたちの部屋。そして3階が一段高くなった畳の寝室とサンルーム付きのバスルーム、ウッドデッキのテラスのある子世帯夫婦の居室になっています。

 

 

正面にはどーんとキッチン、くつろぎを演出するベンチ式の長椅子がしつらえられたダイニング、あとはすべてが大リビングですね。とりわけ、バスルームに続くサンルームと、中庭を眼下にのぞむウッドテラスは贅沢のきわみ。快適なペントハウス生活を約束してくれるそうです。

もうひとつ、バナナコートの特徴はフランス漆喰壁という外壁材。これは吹きつけと左官仕上げの両方を使っているそうが、どちらもシックな奥行きのある色調の壁になっていて、なかなかいい。とくに刷毛で梳いたような感じを出すために、スタッフ総出で手塗りをしたという『設計コア』の越賀さんと栢野麻希さんの力の入れようには驚きました。
ところでバナナコートって何? と聞きたくなりますが、じつはオーナーさんのご家業が和菓子の製造関係で「芭蕉」を扱っておられたからとのこと。芭蕉というのはバナナのことなのだそうです。知ってました?

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