恋の痛手は、恋では埋まらない?

去っていった彼。心の隙間が埋まらないとき、どうする?

去っていった彼。心の隙間が埋まらないとき、どうする?


昔から、「恋の痛手を埋めるのは、次の新しい恋」という考え方があった。新たな恋にめぐりあえば、前の失恋など忘れてしまう。女性は常に「今」を生きるものだからだ。とはいえ、最近はそうでもないらしい。


恋人と友人を一度に失い、自暴自棄に……

行きずりの相手と……そんな生活を見かねて。

行きずりの相手と……そんな生活を見かねて。


「恋の痛手を埋めるのは恋ではないと思う。むしろ、そう考えたらいけないとさえ思っています。賛同してくれる同世代の友だちもけっこういますよ」

そうきっぱり言うのは、シノブさん(34歳)だ。30歳のとき、4年つきあっていた彼に二股をかけられていることを知って別れた。しかも相手はシノブさんの友人。恋人と友人を一度に失い、一時期は悪夢で眠れなくなるほどふたりを恨んだ。

「彼を忘れたい、恨んでいる自分がイヤだ。そんな思いにとりつかれていました。忘れるために新しい恋をしよう、恋をしなくてはと焦って友だちに紹介してもらったり合コンしたり。正直言って、一夜限りの関係も何度ももちました。でも男によって癒やされることはなかった。傷口に自分で塩を塗り込めているようなものでした」

半年ほど荒れた生活をしているときは、友だちからの忠告も耳に入らなかった。だがある日、ラブホで知らない男と寝ている自分に自己嫌悪を覚えたという。

「こんな生活をしていてはいけない。強くそう思いました」

ちょうどそのころ、女友だちが数人、彼女のために集まってくれた。

「慰めるでもなく励ますでもなく、ただただ飲み食いしながら一緒にいてくれた。それがうれしかったんですよね。明日からちゃんと生きるよとみんなに宣言しました」


まずは仕事で自分を立て直した

仕事と習い事で、足元を固めた

仕事と習い事で、足元を固めた

まずは仕事に精力的に取り組んだ。たとえアシスタント的な業務でも、緻密に正確にこなした。それが続くと、少しずつ与えられる責任が大きくなっていく。

「引き立ててくれる先輩がいたこともあって、仕事がとにかく楽しくなりました。もちろん、うまくいかなくてへこむこともあったけど、それでも着実に成果が出ることがおもしろくなって」

平日は仕事やつきあいで失恋を忘れていられたが、週末になると、ひとり暮らしの彼女は「どんよりした自分」を持て余していた。そこで、以前から気になっていた空手を習うことにしたのだという。

「力強く体を使うと、メンタル的にもすっきりするかなと思って」

これが功を奏した。体も気持ちも少しずつ強くなっていくのを感じている。

「普通だと、その空手教室で誰かと知り合って次の恋をしました、ということになるのかもしれませんが、それはありません(笑)。恋愛が私の人生にとって、それほど重要なことではなくなってしまったのかもしれない」

もう恋などしないという意味ではない。ただ、闇雲に恋愛をしなければいけないと思わなくなったのだという。


ステキな恋って何だっけ?

女性はいつのまにか、「ステキな彼と出会って、ステキな恋をする」のが当然だと刷り込まれている。男にモテてちやほやされたい、あるいは自分を理解してくれるステキな男性を確保したいという気持ちは、誰にでもあるのかもしれない。

だが、現実には恋をしなくても生きていける。そこに気づいた女性は強い。

「今になってみると、彼と本当に理解しあっていたのか、本当にお互いを必要としあっていたのか、恋愛しているという事実の上に惰性で一緒にいたのではないのか。そんなふうにも思えてきます。ステキな恋の実態がわからなくなった。もちろん、人を好きになること、恋することはいい面もたくさんあるけど、私はまずはもう少し自力と地力、両方をきちんとつけて、そこから誰かを求めていきたい。そんな気がしています」

周りでは結婚していく友だちも多い。だが今は、幸せそうな彼女たちの顔を見て、よかったなとは思うが焦りは感じていないそうだ。

「私には私の人生のスピードがあるのかもしれないと思っています。友だちには『最近、やけに達観してるじゃん』とからかわれるけど、達観したわけでも悟りを開いているわけでもありません。ただ、ヤケになって荒れた生活を送っていたころの自分が、なんとなくせつなく思い出されるんですよ。どこにも居場所がない、誰も受け入れてくれない。そう思っていたころの自分に言ってやりたい。まずは自分を受け入れて、自分で居場所を作らないといけないんだよって……」

にっこり笑ったシノブさんの笑顔はとても明るい。自分の人生だもの、自分で愛おしく思わなくちゃと言って、彼女は足取り軽く去って行った。
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