穴場を中心に、江ノ電各駅下車を楽しもう

もはや、その人気は全国区ともいえる江ノ電は、鎌倉駅と藤沢駅の間、およそ10kmを結ぶ鉄道路線。

沿線には、人気の観光名所である鎌倉大仏・長谷観音の最寄り駅である長谷駅や、江の島観光の玄関口である江ノ島駅などがあり、観光路線として活躍する一方、地元住民の通勤・通学の足としても利用されています。

腰越駅と江ノ島駅の間の路面電車区間を走る江ノ電

腰越駅と江ノ島駅の間の路面電車区間を走る江ノ電


江ノ電を紹介する記事は、すでにたくさんあるので、今回はちょっとマニアックに、一般の観光ガイドブックに載っているような有名観光名所へは立ち寄らずに、穴場を中心に、江ノ電各駅下車の旅を楽しみたいと思います。

本記事は鎌倉市編です。後編(藤沢市編)もあわせてご覧ください。

鎌倉~和田塚は鉄道遺跡がいっぱい?

江ノ電は藤沢発と鎌倉発、どちらが上り列車か気になるところですが、鎌倉発藤沢方面行きが上り列車だそうです。今回の旅は、鎌倉駅から出発することにします。

江ノ電一日乗車券「のりおりくん」

江ノ電一日乗車券「のりおりくん」


出発前に入手しておきたいのが、一日乗車券「のりおりくん」(600円)。江ノ電は最低運賃が190円と意外と高いので、何度か乗り降りするなら一日乗車券を買うのが、断然お得です。

さて、切符を購入したら出発ですが、"江ノ電の旅"がテーマであるにも関わらず、いきなり、電車に乗らずに歩きはじめます(笑)。鎌倉駅の西口側にある江ノ電改札から左手に見える「御成通り」商店街に入っていきます。

少し行くと右側に「鎌倉市景観重要建築物」に指定されている旧安保小児科医院の建物があるので、そこを左に進むと江ノ電の踏切があり、その踏切内にはこんなものが。

手動遮断機の跡(安全に配慮し、踏切の外からズームで撮影しています)

手動遮断機の跡(安全に配慮し、踏切の外からズームで撮影しています)


これは、手動遮断機の跡です。昔は踏切警手というおじさんがいて、電車が来ると、手動で遮断機を上げ下げしていました。よく見ると、道の反対側には、遮断機を受ける側の器具も残されています。

さて、旧安保小児科医院まで戻り、御成通りを先へ進みましょう。ほどなく、由比ガ浜大通り(バス通り)に突き当たりますが、ここにも江ノ電の踏切があり、そのそばに、「江ノ電 大町 停留所跡」と書かれた白い看板が立っています。

江ノ電の藤沢駅~小町駅(現・鎌倉駅)の全線が開通したのは明治43年10月ですが、『江ノ電百年物語』(湘南倶楽部編 JTB)によれば、当時はなんと、わずか10kmの路線に、40もの駅があったのだそうです。

江ノ電「大町停留所」跡。大町駅は開業時から昭和19年6月に廃止になるまで存在した駅。大町駅と鎌倉駅の間には、蔵屋敷駅があった

江ノ電「大町停留所」跡。大町駅は開業時から昭和19年6月に廃止になるまで存在した駅。大町駅と鎌倉駅の間には、蔵屋敷駅があった


駅といってもバス停みたいな感覚で、きちんとした駅舎がつくられたわけではないのでしょうが、それにしても10kmの路線に40駅とはずいぶん多いですね。

江ノ電の駅数が現在の15駅に落ち着いたのは昭和25年のことで、それまでには数の増減、駅名の変更や場所の移動など、様々な変遷があったようで、大町駅は昭和19年に廃止になりました。

ちなみに、開業当初、鎌倉駅(当時は小町駅)は東口の若宮大路沿いに存在したため、大町駅から鎌倉駅方面に向かう電車は、横須賀線のガード下をくぐり、若宮大路沿いを路面電車のように走っていました。江ノ電鎌倉駅が現在の西口側に移動したのは、昭和24年のことです。

元銀行の建物。現在は、バーとして営業

元銀行の建物。現在は、バーとして営業


さて、由比ガ浜通りを進み、「六地蔵」の交差点に差し掛かると、角に古い石造りの建物が見えてきます。これは、元銀行の建物で、現在はバーとして営業しており、その左脇の細道を150mほど行くと、和田塚駅に到着します。

和田塚の駅名は、駅の少し先にある、鎌倉幕府の武将で、北条氏と争って滅亡した和田一族を埋葬した地という「和田塚」に由来しています。

由比ヶ浜のタンコロは、寂しそう?

和田塚駅から次の由比ヶ浜駅までは電車で移動しましょう。

由比ヶ浜駅の改札を出て、右手の山側に進めば鎌倉文学館などがあり、左手に進めば由比ヶ浜のビーチがあります。今回は、海側へ歩いて行きましょう。

海浜公園にポツンと置かれた「タンコロ」の車両

海浜公園にポツンと置かれた「タンコロ」の車両


海辺の国道(134号線)沿いにある由比ヶ浜海浜公園の一角に、ポツンと江ノ電の車両が置かれています。

もちろん、とっくの昔に廃車になった車両ですが、かつて「タンコロ」の愛称で親しまれた江ノ電100形車両です。今の江ノ電は2両でセットの"連接車"ですが、昔は"単車"で走っていたことから「タンコロ」という愛称がつきました。

このタンコロは、雨天・強風の日を除いて、毎日、9:00~16:30まで、車内に入ることができます。床や座席が木でできており、ある年代以上の人は、昭和の時代が思い出され、懐かしく感じると思います。

長谷から趣深い極楽寺駅周辺へ

次の長谷駅は、鎌倉大仏や長谷観音など、鎌倉観光の人気スポットへの玄関口で、大勢の人々が乗り降りする江ノ電の主要駅の一つです。

今回は、長谷駅から極楽寺駅へは電車で移動しますが、極楽寺駅までは、風情あるオススメの散歩道があるので、詳しく紹介している下記の記事も、ぜひ、ご覧ください。

撮影裏話も!『海街diary』の世界観を楽しむ鎌倉散歩

極楽寺駅は「関東の駅百選」に選ばれている

極楽寺駅は「関東の駅百選」に選ばれている


極楽寺駅は、山間の駅を思わせる趣深い駅舎で、「関東の駅百選」に選ばれており、駅舎をバックに記念撮影もしたいところ。駅周辺は、古くはドラマ『俺たちの朝』、最近ではドラマ『最後から二番目の恋』や、コミックが映画化された『海街diary』など、数々の映画・ドラマ等のロケ地になってきました。

極楽寺駅より、少し長谷寄りに「桜橋」という朱色の欄干の橋があるのですが、この橋の上からは、江ノ電唯一のトンネルである馬蹄(ばてい)形のトンネル「極楽洞」を出入りする江ノ電の姿が、バッチリ見え、オススメの撮影ポイントになっています。

「極楽洞」を出入りする江ノ電の姿が、バッチリ見える!

「極楽洞」を出入りする江ノ電の姿が、バッチリ見える!


こんな小さなトンネルの中を小さな電車が出たり入ったりする様子は、おとぎ話かアニメの世界を見ている感じがしますね。

【2017/08/21.注】記事初出時、トンネルの名称を「極楽寺洞」と表記していましたが、正しくは「極楽洞」でしたので、訂正いたします。

稲村ヶ崎からは、いよいよ海辺へ

極楽寺駅から稲村ヶ崎駅へは、再び電車で移動します。駅から、夕日の撮影ポイントとして名高い「稲村ヶ崎」へは、海岸国道を渡り、徒歩5分ほど。

稲村ヶ崎は武将の新田義貞が、岬の波打ち際から攻め入り、鎌倉幕府を滅ぼしたという古戦場跡でもあります。

稲村ヶ崎から見た夏の夕日と江ノ島

稲村ヶ崎から見た夏の夕日と江ノ島


稲村ヶ崎から次の七里ヶ浜駅までは、海岸国道を歩いて行きますが、国道には、「稲村ヶ崎」「姥ヶ谷(うばがや)」というバス停があり、時刻表を見ると、なんと土曜と休日の朝に1本だけしかバスがない!

平日は、待てど暮らせど、バスはやって来ません(笑)。

バスの路線開設には免許が必要ですが、その免許を維持するために、最小限の定期運行を行っているようです。現状は、この国道は渋滞で有名なので、路線バスを走らせるのは難しいのかもしれませんが、将来的には本数を増やすことがあるのかもしれません。

バスは、土休日の朝に1本のみ

バスは、土休日の朝に1本のみ


ちなみに、バス停名として残っている「姥ヶ谷」という地名ですが、かつては同名の江ノ電の駅が存在しました(昭和20年廃止)。

江ノ電の姥ヶ谷駅は、西岸良平さんの人気マンガ『鎌倉ものがたり』の第24話「姥ヶ谷の麗人」に登場するので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

さて、国道を歩きながら江ノ電の線路のほうを見ると、最初は、鎌倉プリンスホテル、続いて、県立七里ガ浜高校の建物が見えてきます。

ホテル下の直線を走る江ノ電の車両

ホテル下の直線を走る江ノ電の車両


この付近は、江ノ電にしては珍しく直線の線路が続き、「ホテル下の直線」と呼ばれ、電車の速度が上がる場所です。

この"ホテル"というのは、鎌倉プリンスホテルのことではなく、現在の七里ガ浜高校の敷地に、かつてあった「七里ヶ浜ホテル」のことだそうです。

ホテルを運営していた西武鉄道の社内資料を調べていただいたところ、「1972年7月」に「七里ヶ浜ホテルほかホテル運営を西武不動産へ業務移管」という記載があり、七里ヶ浜ホテルは昭和40年代の後半までは営業していたようです。

あまりにも有名になった踏切

七里ヶ浜駅を出た江ノ電は、さらに海岸線を走り、途中、駅はないものの上下線がすれ違う「峰ヶ原信号所」でいったん停止し、ほどなく、「関東の駅百選」に選ばれている鎌倉高校前駅に到着します。

意外に思うかもしれませんが、江ノ電は海辺を走る区間が長い割に、ホームから海が見えるのは、この鎌倉高校前駅が唯一。

しかし、現在、海岸国道で工事が行われており、工事用のフェンスが張られているため、ホームからの海の眺めは、あまりよくありません(工事は2017年9月29日までの予定)。

「スラムダンク踏切」として有名になった鎌倉高校前駅付近の踏切。現在、工事で眺めがイマイチなので、以前撮影した写真を掲載します

「スラムダンク踏切」として有名になった鎌倉高校前駅付近の踏切。現在、工事で眺めがイマイチなので、以前撮影した写真を掲載します


そして、鎌倉高校前駅のすぐ近くにあるのが、もはや、かなり有名になった通称「スラムダンク踏切」。アニメ『スラムダンク』のオープニングに登場することから、アジアを中心に外国のアニメファンが訪れる"アニメの聖地"になっています。

腰越駅は、扉が開かない車両も?

鎌倉高校前駅を過ぎると、江ノ電は海とお別れして、次第に内陸へと入っていきます。次に停車する腰越駅は、鎌倉市側の最後の駅で、その次の江ノ島駅は藤沢市になります。

腰越駅でちょっと注意しなければならないのが、ホームが3両分の長さしかないため、駅に停車しても、4両編成の場合、最後の車両の扉が開かないこと(鎌倉行きの場合は、先頭の車両)。うっかりすると、駅に着いたのに気付かないまま発車してしまったなんていうこともありえます。

満福寺の襖絵

満福寺の襖絵


腰越駅の周辺には、鎌倉幕府を開いた源頼朝の弟、源義経が、頼朝の怒りを解くために「腰越状」をしたためた場所とされる満福寺があり、漆画の技法で義経の生涯を見事に描いた襖絵を拝観できます。

また、小動(こゆるぎ)岬の小動神社境内にある展望台は、腰越の漁港と江の島を一望できる穴場の絶景ポイントになっています。

腰越駅から江ノ島駅の間は、江ノ電は路面電車になります。電車と自動車が道を譲り合いながら進んでいきますが、自動車を運転してここを通過するのは、ちょっと緊張します。

電柱の住所表記で鎌倉市と藤沢市の市境がわかる

電柱の住所表記で鎌倉市と藤沢市の市境がわかる


この路面電車区間の途中に、鎌倉市と藤沢市の市境があります。具体的には1階がトレーニングジムになっているマンションまでが鎌倉市。電柱の住所表記も、ここを境に「鎌倉市腰越三丁目」「藤沢市海岸一丁目」と分かれています。

後編(藤沢市編)に続く

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