【5~6月の注目ミュージカル】
『グレート・ギャツビー』5月8日開幕←観劇レポートUP!
『リトル・ヴォイス』5月15日開幕←観劇レポートUP!
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』5月17日開幕←観劇レポートUP!
『パレード』5月18日開幕←石川禅さんインタビュー&観劇レポートUP!
『CLUB SEVEN-ZERO-』5月26日プレビュー開幕←観劇レポートUP!
『俺節』5月28日開幕←観劇レポートUP!
【All Aboutミュージカルで特集(予定)のミュージカル】
『レ・ミゼラブル』海宝直人さんインタビューを掲載(『ノートルダムの鐘』『ジャージー・ボーイズ』等についての海宝さん最新インタビューはこちら)
『ビリー・エリオット』特集(柚希礼音さん・島田歌穂さんインタビュー等)掲載予定
『パレード』
5月18日~6月4日=東京芸術劇場プレイハウス、6月8~10日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、6月15日=愛知県芸術劇場大ホール【見どころ】
『パレード』撮影HIRO KIMURA レオ役の石丸幹二さんは製作発表で「世界が激動する今、本作は僕らが向き合わなくてはいけないテーマの作品。(劇団時代以来の共演となる堀内敬子さんと歌うと)二人のデュエットのスタイルを思い出し、ぴたっと合う瞬間が心地いいです」と笑顔。「石丸さんは振り覚えとターンが早くなりました」という堀内さんの言で会場が和む場面も。
窮地に立たされることで互いの真の姿に気づき、絆を深める夫婦の愛情物語としての一面も加わり、物語は衝撃のクライマックスへ。ジェイソン・ロバート・ブラウンのドラマティックな音楽に彩られた本作を、フランク夫妻役の石丸幹二さん、堀内敬子さんはじめ、岡本健一さん、武田真治さん、石川禅さん、新納慎也さんら個性的な実力派たちが、ミュージカルは今回が初となる若手演出家・森新太郎さんの演出でどう演じるか。“魂のドラマ”の誕生に、期待が集まります。
【検事ヒュー・ドーシー役・石川禅さんインタビュー】
パワフルで深く、ダイナミックなミュージカルに
脳に汗をかきつつ、取り組んでいます
石川禅 64年新潟県生まれ。92年『ミス・サイゴン』でミュージカル・デビュー、以来『回転木馬』主演、『レ・ミゼラブル』『ピーター・パン』『マリー・アントワネット』『エリザベート』『レディ・べス』『天使にラブ・ソングを』など多数のミュージカルで厚みのある人間像を演じ、洋画吹き替えや音楽活動も行っている。(C)Marino Matsushima
「題材になった事件は聞いたことがありました。当時、米国では南北の経済格差があり、南部の貧しい白人たちにとって、優秀で成功しているユダヤ人というのはとても妬ましい存在だったんですね。そんな折に白人少女の殺人事件が起こり、人々は北部から来て鉛筆工場の工場長だったレオを無理やり犯人に仕立ててしまう。皆さんKKK(クー・クラックス・クラン)という白人至上主義団体のことは聞いたことがあるかと思いますが、この事件がきっかけで、彼らは黒人に加えてユダヤ人も差別対象にするようになったそうです」
――石川さん演じる検事ドーシーは、犯人候補として黒人の警備員とユダヤ人のレオが挙げられた時に、レオを選ぶ。彼の人生を狂わせた張本人なのですね。
「台本にはありませんが、史実によると実在のドーシーはその前の事件で2回ほど失敗しており、汚名返上に躍起になっていたそうです。そこでなぜ黒人でなくユダヤ人を選んだかというと、当時、南部の白人の中ではまだ黒人への差別意識が強烈にあり、例え黒人が犯人だとしても、黒人一人を死刑にしたくらいでは白人女性の命に見合わない、という感覚と、ユダヤ人に対する妬ましさがあった。日本人の感性では理解しにくいけれど、ドーシーの中にもそういうものがあって、レオ・フランクを犯人に仕立て上げてしまったのだと思います」
――主人公を追い詰める役柄としては『貴婦人の訪問』で演じられた校長役が良心と欲の狭間で揺れ動いていたのに対し、今回は……。
製作発表では新納慎也さんとの楽曲「洪水の時、お前は?」も披露。政治活動家ワトソンを演じる新納さんは「ワトソンはおそらく本作で一番の悪役ですが(笑)、当時は英雄的存在でした。五輪で世界中から人が集まってくる中、日本が“平和バカ”に見えないよう、多くの方に御覧頂きたいです。繊細な森さんの演出には、絶大な信頼を置いています」とコメント。
――それが今回、本作を日本で上演する意味に繋がってくるのかも……?
「そうなんですよね。僕らは今、毎日トランプ政権のニュースを耳にしますが、アメリカというのはもともとこういう問題を抱えた国で、彼らは自分のプライドや主義を守るためにここまで戦い抜くんだということが、本作では登場人物の物凄いエネルギーとバイタリティで表現されています。それを知ることができるのは、差別や人権という問題に疎い現代の日本人にとって、とてもタイムリーなことなのかもしれません」
――ミュージカルはそうした題材からは“遠い”表現形態のように思われがちですが。
「ところが、ミュージカルには音楽という要素がありますよね。この音楽が入ることによって、こうした非常に重いストーリーが和らげられるんです。ジョージア州ののどかな田園が思い浮かぶ軽快な旋律がふんだんに登場して、当時の現地の人々の信念や希望も見えてくる。この事件が決して一言では解決できない、複雑な背景を持った事件だと思えてくる。森(新太郎)さんがこの作品を演出したいと思ったポイントはここなんだ、と思えます。伴奏と歌がずれていたりと、歌い手泣かせの音楽なのですが(笑)。」
――どんな舞台になりそうでしょうか?
メインキャストの方々。製作発表で演出の森新太郎さんは「音楽が素晴らしく、これを聴くだけのためでも来ていただきたい作品です。ぞくぞくするような“祭りの熱狂”をお届けしたい。また、もう一人の主役は民衆と思い、全員に民衆役をやってもらっています。恐ろしくも晴れやかな民衆のエネルギーを作り出そうとしています」と熱く語りました。
【観劇レポート
人間のダークサイドを抉り、微かな希望に光をあてる
渾身の“ヒューマン・ドラマ”ミュージカル】
*若干の“ネタバレ”を含みますので、未見の方はご注意下さい*
『パレード』撮影:宮川舞子
『パレード』撮影:宮川舞子
『パレード』撮影:宮川舞子
『パレード』撮影:宮川舞子
『リトル・ヴォイス』
5月15~28日=天王洲銀河劇場、6月3~4日=富山県民会館大ホール、6月24日=北九州ソレイユホール『リトル・ヴォイス』内気な青年ビリーは、自分に似た内向的なLVに懸命に語り掛ける。(C)Marino Matsushima
ミュージカルではありませんが、ぜひお勧めしたい舞台をご紹介しましょう。重要な要素として歌が登場するドラマ『リトル・ヴォイス』です。1992年にサム・メンデス演出でロンドン初演、98年の映画版はアカデミー賞助演女優賞にノミネートされるなど大きな話題を呼んだ本作が、大原櫻子さん主演で登場。父の死後、自分の部屋に閉じこもって形見のレコードばかり聞いていた少女LV(リトル・ヴォイス)は、歌によって新たな一歩を踏み出してゆく。
破天荒な母マリー役に安蘭けいさん、彼女を見出すプロモーター、レイ・セイ役に高橋和也さんら実力派キャストが揃い、新進気鋭の演出家、日澤雄介さん(劇団チョコレートケーキ)が演出。マリリン・モンローにジュディ・ガーランド、シャーリー・バッシ―らになりきって歌う大原さんの歌声、安蘭さんのダメダメな母親ぶりを堪能しつつ、人生を変えるほどの力を持つ歌の素敵さを感じられる舞台となりそうです。
【観劇レポート
歌を通して少女が新たな一歩を踏み出すまでを
魂の歌唱を交え、繊細に描く舞台】
『リトル・ヴォイス』酒と男に溺れる日々を送る母マリー。(C)Marino Matsushima
『リトル・ヴォイス』調子のいい音楽プロモーター、レイはLVの歌の才能を見出すが、彼女の心中を見誤ったことで悲劇の一端となってしまう。(C)Marino Matsushima
『リトル・ヴォイス』クラブでステージに立ったLVは、エディット・ピアフらになりきり(写真)、迫真の歌声を披露する。(C)Marino Matsushima
次頁で『グレート・ギャツビー』他の作品をご紹介します!