Q:建物の不具合は何が一番多いのですか?
5年前に住宅を新築した友人がいます。今後私達も新築を計画するにあたって、話を聞きに行ってきました。そこで、すでにさまざまな不具合が起きていることを聞かされ、しかも施工業者とはあまり上手くいっていない様子でした。参考までに知りたいのですが、建物の不具合は何が一番多く、どんなことに留意すればよいですか。
A:建物の不具合の8割は「雨漏り」です
住宅品確法ではすべての新築住宅について、構造を支える部分や雨水の浸水に関して、引き渡し後10年間の性能保証を義務付けています。その性能保証に関する事故をみると、全体の8割を雨漏りが占めています。雨漏りといえば屋根を連想しがちですが、実際には雨漏りの8割以上が側面からの原因によるものです。それも釘穴から雨が浸水する、防水施工への知識不足や配慮が欠如しているなど、施工ミスによる事故も多く見られます。特に防湿のために行う「通気工法」という施工方法への知識不足があるようです。通気工法は、建物壁内にたまる湿気を外部に放出するための工法ですが、これは外壁仕上げにサイディングが使われるようになってから登場したものです。
建物の不具合は雨漏りの他にひび割れやフローリングの隙間、窓枠の膨らみ、建具の不具合など様々あります。雨漏り以外の不具合は修繕や補修をすることで直すことが出来るのですが、雨漏りはすぐにはわからず大事になってわかる事が多いのです。
雨漏りによる湿気また結露などは、住宅が断熱化・気密化されればされる程わかりにくい現状があります。近年は軒の出のない屋根やスッキリしたデザインなどが人気ですが、雨仕舞の対策をしっかりと考え、できれば無理な設計は避けることです。とにかく日本は365日のうち1ミリ 以上の雨が100日を超えるということを認識しておいて下さい。
■住まいの外装仕上げはモルタルからサイディングへ
住宅の外装仕上げは水を使ってモルタルを塗る仕上げが以前は多く、これを湿式工法と呼んでいます。これに対し近年は水を使わない仕上げでサイディングを張ります。これを乾式工法といっています。
実は通気工法はこのサイディングが使われるようになった頃に生まれたのです。したがって通気工法を教育する機関も制度もなく、職人達は見よう見まねで覚えていった人達が多いのです。
なかには思い違いを、勘違いのまま自分流の通気工法の納まりに納得している職人も少なからずいたのでしょう。事故の報告をみると壁内の湿気による結露、カビなどが発生した例も多くあります。なかには表面的には室内側の石膏(せっこう)ボードの裏面からカビが発生し、どす黒いカビとなって視認できるほど発生していた例もありました。最近は通気工法への理解も深まってきましたが、工務店など設計・施工でお願いするときなどは年のため施工実績を確かめておくことです。
■新築住宅のトラブルに関して
一般に新築住宅のトラブルは大きく分けて2種類に分類することができ、そのうち不具合が原因のものは約60%、契約に関わるものは約27%弱です。
- 不具合が原因のもの…雨漏りやひび割れなどの不具合が発生し補修等をめぐるトラブル
- 契約に係るもの… 工事結果が依頼と異なる。(寸法や色違いも含めて)契約解除などによる補修や損害賠償をめぐるトラブル
これらのトラブルで補修して直せる物は良いですが、意外なのが事前の説明と異なるといったトラブル内容の50%を占めていることです。つまりよくある「言った」「言わない」のやりとりです。
したがってやはり内容を書面で残しきちんと意思疎通を図っておくことがトラブルを防ぐにはもっとも重要なことといえます。
※データ等はすべて住宅・リフォーム紛争処理支援センターによるものです。2013年10月調査
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