2017年公示地価は、商業地平均が+1.4%に拡大。下落エリアも
平成29年地価公示が発表されました。全国平均では、住宅地平均が前年の-0.2%から0%の横ばいに、商業地平均が前年の+0.9%から+1.4%と上昇するなど堅調に推移しています。また、都道府県別に動向を見ると同じ東北エリアでも、宮城や福島の平均値が上昇を強める一方で、青森・岩手・秋田・山形の4県では、住宅地・商業地ともにマイナス圏にあるなど地域によって状況は大きく異なります。
日本全体の人口がマイナスに転じる中、人口や商業の吸引力の高い場所に需要が集まり地価のトレンドに表れています。
今年の公示地価で、顕著に表れているのが訪日外国人客増加によるインバウンド需要の影響です。2003年にスタートしたビジットジャパンキャンペーン以降、訪日外国人の数は、拡大しており訪日外国人数は、2003年521万人から
- 2014年・・・約1341万人(対前年比29.3%増)
- 2015年・・・約1973万人(対前年比47.1%増)
- 2016年・・・約2403万人(対前年比21.8%増)
全国の変動率上位順位表を見ると、「道頓堀1丁目37番外」の前年比+41.3%をはじめ上位5位までを大阪府が占めています。来阪街客数は、2013年の約262万人から2015年の約716万人へと2年間で約2.7倍に増加しており増加の著しい地区の一つ。中心エリアでは、民泊の影響もあり中心部で募集賃貸物件が減少している影響で賃料も堅調です。
また、東京圏では、+29.0%の「銀座6丁目4番13外」の8位をはじめ銀座アドレスが8位から10位を占めています。この4月20日には、銀座松坂屋の跡地を中心とした地区に大型複合商業施設「GINZA SIX(ギンザ シックス)」がオープン。日本国内のみならず世界中の人々が楽しめる商業施設を目指し誕生します。昨年オープンした数寄屋橋交差点の東急プラザ銀座などレジャースポットが相次いでオープン。ホテルの建設計画も発表されています。
■GINZA SIXの概要
約47,000平米(約 14,200 坪)の商業施設や、基準階1フロア貸室面積が約 6,100平米(約1,850 坪)の大規模なオフィス、文化・交流施設「観世能楽堂」などから構成される、地上13階、地下6階の銀座エリア最大級となる大規模複合施設。エリア最大級の広さを確保した屋上庭園や観光バス等の乗降スペース等の来街者を迎え入れる施設も導入。
訪日外国人旅行者数増加の背景には、中国や韓国、台湾などアジア周辺諸国の経済発展など様々な要因が挙げられますが、海に囲まれた日本においては、ローコストキャリア(LCC)の誕生による航空運賃の低下は大きなプラス要因です。世界的な海外旅行の需要はこれからも伸び続けると言われており、堅調なホテル需要は将来の日本の地価に影響を与えそうです。
ホテル用地との競合で、商業地のマンション供給は厳しくなる?
平成29年公示地価平均値の変動率(東京23区)
東京23区の公示地価変動率を見ると都心3区の住宅地は、前年より上昇率が弱まっているものの(とはいえ高いですが)、商業地は高い上昇率が続いています。また都心周辺エリアの商業地の上昇率も高い水準が続いており今後ホテル用地と競合するような場所は、マンション用地としての取得が難しくなってくるかも知れません。
一方、東京都下のような郊外エリアの住宅地は、地価上昇の伸びは大きくありません。前年の伸びを下回る地域も目立ち東北地方と同様に首都圏内でも吸引力の高い街とそうでない街の差が目立ってきています。2017年は、郊外エリアのマンション供給が活発化する兆しもあるので、都心と異なり大幅な価格上昇はないと想定されます。
いづれ、東京都や首都圏も早晩人口がマイナスになる時代がやってきます。価格重視で郊外を選ぶか、資産価値重視で都心を選ぶか悩ましいところですが、自分の価値観を大切に納得感のあるマンション購入がこういう時代だからこそ大事なのではないでしょうか。