熟成されたバイクYAMAHA MT-09とは?
2014年2月に発売され、発売から間もなく販売計画を大幅に上方修正するなど人気の車両となったヤマハ(YAMAHA)のMT-09。現在までにバリエーションモデルのMT-09 TRACER(トレーサー)を発売するなど選択肢の幅も広まっています。
軽量な車体とハイパワーの水冷4ストローク3気筒エンジンの組み合わせは、恐ろしくスパルタン。MT-09はD-MODE(走行モード切替システム)が搭載されているものの、一番穏やかで扱いやすい出力特性のBモードをセレクトしても、パワフルな加速を楽しむことができました。
しかし反面街中ではパワーがありすぎて、個人的にはMT-07の方が使い勝手が良いと感じる点もありました。
今回試乗するのはそんなMT-09が初のマイナーチェンジを行い、2017年2月15日に発売された2代目MT-09です。マイナーチェンジというわりには、外観はかなりガラリと変更されLEDヘッドライトなど最新の装備を纏いました。
先代モデルのMT-09と比べて現行モデルの使い勝手はどうか? いつも通り都内の通勤で試乗してインプレッションします。
新型MT-09はさらに装備が豪華に!
バイクのイメージを大きく左右するヘッドライト。新型MT-09は単眼から2眼のLED4灯タイプとなりました。白くて高級感のあるLEDのヘッドライトはロービームで2灯、ハイビームで4灯全てが点灯する仕組みとなっています。
このヘッドライトは非常に明るいのですが、一般的なバルブと比べると若干照射範囲が狭いような印象がありました。
次にクラッチレバーの操作荷重を低減するアシスト&スリッパークラッチ。カワサキの重量車に搭載されることが多かった同機構ですが、ヤマハの2代目MT-09にも搭載されました。
もともと初代MT-09のクラッチも極端に重いということはありませんでしたが、2代目になってタッチが非常に軽くなり、私のように街中でのストップ&ゴーが多いライダーにとっては歓迎したい装備のひとつです。
またアシスト&スリッパークラッチにはクラッチ操作を軽くするだけでなく、ギアダウン時にエンジンブレーキが効きすぎてタイヤがロックするのを抑止する効果もあり、ライダーの操作ミスをフォローしてくれる機構も備わっています。
ライダーの操作をサポートしてくれる機構としてはMT-09 TRACERでも採用されているトラクションコントロールも追加で装備されました。後輪のスピンを検知して走行をサポートする機構です。
さらに、クイックシフトシステムまで採用されています。シフトペダルの動きを検知すると自動でエンジン出力を補正、かみ合っているギアの駆動トルクを瞬間的にキャンセルし、シフトアップ操作をサポートする。というものですが、簡単に言ってしまえばアクセルを戻すこともクラッチレバーを握ることなくシフトチェンジできるということ。
実際に街中でも使ってみましたが、どうしてもクラッチを握る、アクセルを戻すという通常のギアチェンジの癖が抜けきりませんでした。サーキットなどではアクセルを戻すことなくシフトチェンジができる同機構は、タイムアップに繋がるのかもしれません。
そして見た目が先代モデルと大幅に変わっているのがリアのテール回りです。アルミ鍛造ステー採用の方持ちリアフェンダーは、フェンダーレスキットをつけたかのようなスッキリとしたテール周りを実現しています。
MT-09の装備は充実! 価格はいくら上がった?
マイナーチェンジ前の2016年モデルはトラクションコントロールが追加され価格は91万5840円。マイナーチェンジ後の2017年モデルは100万4400円。人気モデルだけに、快適性をアップさせるさまざまな装備が追加されたのはわかりますが、MT-09のデビュー当時の価格はABS付でも89万9640円でした。追加されている装備を考えれば仕方がないと思いますし、実際に2017年モデルを見ると外装類の質感も上がっているように感じました。しかしバイクの価格が高騰化していくなか、手を出しやすい価格で高性能なビッグバイクのモデルだっただけに、値上げ幅はやや残念に感じるところではあります。
MT-09の走りは明らかに進化している
まずは最もスパルタンな走りを体験できるAモードにした状態で走り出してみました。走り出してすぐに感じたのは、スロットルのスムーズさ。
MT-09にはワイヤーでアクセルのスロットル開度をコントロールするのではなく、電子制御でコントロールするYCC-T(ヤマハ電子制御スロットル)が採用されています。
先代MT-09に試乗した際は、個人的にはアナログ制御と比べて若干違和感を感じました。感覚的にはアクセルがほんの少しだけ遅れてついてくるような印象です。しかし2代目MT-09となり、この違和感は解消されスムーズになっているように感じました。
信号待ちでストップし、少し強めにアクセルを開けて走り出そうとしたところ、簡単にフロントタイヤが浮いてウイリーしてしまいそうなほどパワフルに加速します。
街中でのAモードはやはり扱いにくいので、すぐにSTDモードに変更。こちらもAモードほどではないものの、相変らずの激しい加速を体感することができます。
前回同様にやはり街中ではBモードが扱いやすいように感じましたが、Bモードでもアクセルをちょっと多めに回すとかなりしっかりと加速する印象です。
初代MT-09に試乗した際には、BモードとSTDモードの間ぐらいの設定があると良いのに……と感じたのですが、まさにそのような感覚。公式には発表されていませんが、各モードのパワー特性は若干変更されているのかもしれません。
さらに2代目MT-09には、フロントサスペンションに圧側減衰力調整機構が加わりました。簡単に言ってしまえば、サスペンションを硬くも柔らかくも調整できるということです。
もともとMT-09のセッティングでは、フロントサスペンションが柔らかめになっていますが、少し硬めにするとコーナリング時に車体に安定感がでます。
ただ私のように街乗りメインで走っている方は、柔らかめの方が走りやすく、乗り心地も良いと感じるでしょう。
MT-09とMT-07どっちを選ぶか難しくなってきた!
初代MT-09とMT-07で比べると、正直筆者は圧倒的にMT-07派でした。しかし2代目MT-09になってからはアシスト&スリッパークラッチ、トラクションコントロール、フロントサスペンションの減衰力調整など、ライダーをサポートする機構が採用され、大きな加点ポイントに感じられました。
さらに個人的に大きな加点ポイントとなったのは、スロットルレスポンスが向上している点。前述したように、初代MT-09はアクセルを回した際に若干遅れてついてくる印象がありました。
しかし2代目MT-09では全くそれを感じさせませんでした。街中で走行するのに私はBモードを使用していましたが、以前に比べて加速したい時のパワー感も向上している感じがしました。
初代MT-09のときに感じた、「ここがこうだったらいいのに」というポイントを全て修正してきた印象です。
以前だったらMT-09とMT-07どちらの方が良い?と問われれば「私はMT-07」と答えていましたが、今だったら「新型だったらMT-09」と答えるかもしれません。
MT-09をカスタムするなら
国内の厳しい規制をクリアしたマフラーは「JMCA・政府認証マフラー」として販売されていますが、サイレンサーの裏側に認証プレートが貼ってあるので一目でわかります。車両の型式が変わった場合には、認証を取得し直さなければならないので、きちんと認証を取得しているマフラーかどうか事前に確認する必要があります。
ちなみにMT-09の2017年式に装着できる認証マフラーはわずか、5本。(JMCAのホームページで確認することができます。)ご紹介しているアールズギアのマフラーも、認証マフラーになります。街中を走しているMT-09を見ていると、アクラポビッチのマフラーを装着しているユーザーをよく見かけますが、同メーカーは海外メーカーのため、日本の規制に通っていないマフラーも多く注意が必要です。
MT-09は2017年から外装類が一部変更されているので、前モデルのパーツは装着できないことが少なくありません。フロント周りは大幅に変更されたので、スクリーン関係は2017年モデル用を選ばないと装着できない可能性が高いです。注意してくださいね。
ワールドウォーク製のMT-09専用スマートフォンマウントスクリーンは、ステー部分にスマートフォンホルダーをマウントできるのが最大の特徴。視点の動きを少なくして、スマホナビを使いながら走行できるので便利です。
MT-09は街乗りで1時間走行する程度であれば全く問題ありませんが、シートがやや硬めです。そのため長距離ツーリングに頻繁に出かけるなら、ヤマハ純正オプションのコンフォートシートに変更するのもおすすめ。ただ結構お値段が高いので、シートを丸ごと交換するのが難しければゲルザブなどをシートに乗せて使うのもおすすめです。
MT-09スペック詳細
型名:2BL-RN52J価格:100万4400円
カラー:ブラックメタリックX・マットグレー・ディープパープリッシュブルーメタリックC
マットダークグレーメタリック6
全長/全幅/全高:2075mm×815mm×1120mm
シート高:820mm
排気量:845cc
車両重量:193kg
ガソリンタンク容量:14L
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