あるとき、某マンションデベロッパーの「関係者」から話を聞く機会があったのですが、同じデベロッパー、同じ元請(ゼネコン)、同じ下請(施工業者)の組み合わせであっても、現場が違うと物件の内装や外装の仕上がりにかなりの差が出るケースもあるのだそうです。
しかし、現場によって職人さんのレベルにそれほど違いがあるわけではなく、原因を突き詰めていくと、すべてとはいわないまでも多くの場合が現場監督に行き着くのだとか。
決して現場監督個人を責めることはできないものの、マンションの工事現場で働く多くの人たちをチームとしてまとめ、相互信頼のもとで皆の士気を高めていくことのできる監督の担当物件だと仕上がりも上々で、そうでない場合にはいくつかの不良箇所が生じてしまうのだそうです。
ただし、それが欠陥に発展するほどの不良というわけでもないようで、消費者がみてもほとんど気付かない程度の差なのかもしれません。しかし、それを販売する側の「物件を見慣れた」立場からは、仕上がりの粗さが気になることも多いのでしょう。
これは零細マンションデベロッパーや無名ゼネコンの話ではなく、いずれも知名度の高いところのケースでしたが、社外の者からはなかなか判断できない部分の話だけに悩ましい問題です。
また、発注側が小規模な新興マンションデベロッパーなどの場合には、デベロッパー側の担当者から改善点の要望を出したり注意をしたりしたときに、まったく聞き入れようとしない現場もあるのだとか。
発注側(工事代金を支払う側)の立場が極めて弱い「逆転現場」も少なからずあるようです。
リーマン・ショック以降に新興デベロッパーの倒産や事業撤退が相次ぎ、現在は大手によるマンション供給が中心になっています。そのため、販売する側の意見が通りやすい現場が多いように感じられるかもしれません。
ところが、公共事業の増加や人手不足などを背景に、ゼネコンや現場の立場がさらに強まっている面もあるでしょう。
人が足りないからなどといって、マンションの仕上げを雑に済ませるようなことがないように願いたいものです。
もちろん、これはマンションにかぎった話ではありません。一戸建て住宅の建築でも起こり得る事態です。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2006年11月公開の「不動産百考 vol.5」をもとに再構成したものです)
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