照明・LED

LED電球なのに寿命が短くなってしまう理由

LED電球は約4万時間の寿命が大きな特徴になっています。しかし、普及し始めた当初は購入して数か月もたたないうちに切れてしまうといったクレームをよく耳にしました。そのような問題は実際に数少ない現象かと思いますが、高価な電球のため問題を大きくしていると思います。それにしてもなぜ早く切れるのでしょうか。その問題となる要因を探ってみます。

中島 龍興

執筆者:中島 龍興

照明ガイド

何故切れるのか?LED電球

LED電球は白熱電球や蛍光ランプなど従来の光源に比べランプ寿命の長いことが大きな特徴になっています。

それが魅力で購入された方も多いと思いますが、実際は購入してまもなく切れた、という苦情を耳にします。特にLED電球が出始めたころはそのようなクレームが多く、実際私も初期に購入したものが数か月後に切れた体験をしています。

最近になってやっと落ち着きを見せているようですが、それでも全く問題がなくなったわけではありません。LED電球なのになぜ早く切れてしまうのか?その5つの原因を以下で見ていきましょう。

【1】そもそも定格寿命(設計寿命)は予想値である

一般照明用LED電球(バルブが普通電球とほぼ似た形状)の寿命は4万時間とされるものが多いです。

LED電球が一般的に普及し始めたのは、6年前の東日本大震災後から。その頃に購入されたランプは、もし一日10時間点灯したとしても、まだ切れるはずがありません。

しかしながら購入してすぐに点かなくなるケースがあり、当時は今より高価だっただけに問題になりました。

そもそも、LED電球が4万時間持つとしている「定格寿命」の定義とは何なのでしょう?

社団法人・照明器具工業会(2008)によると「一般用照明器具の主光源として使用する場合のLEDの寿命は、全光束が初期全光束の70%、または、光度が初期光度の70%に低下するまでの時間とする。 ただし、表示または装飾の用途に使用する場合はこの限りではない」とあります。

LED電球メーカはランプの寿命を加速試験と科学的データに基づいて算出するのが普通です。これを設計寿命、または定格寿命と言います。

このデータはLED電球にとって良い使用条件の下で試験されているため、実際の使用環境等が考慮されているわけではありません。

つまり寿命が4万時間と言っても、それは予想値で保証値ではないのです。

【2】LED電球の弱点である「熱」を逃がしにくい器具を使っている

いかなるランプでも消費電力の100%が光になるわけではありません。

例えば白熱電球は約10%が光で、残りの90%は熱。したがって点灯時の白熱電球は触れないくらい熱いし、消費電力の割に光の量の少ないことが分かります。

一方LED電球はどうでしょう?LEDは光が約30%、残りが熱です。白熱電球より発光効率は良いですが、それでも70%前後は熱となっています。

実はLED電球は熱に弱い光源。それが寿命に大きく影響してしまうのです。

LEDは明るさをアップさせようとすると多くの電流を必要とします。それが熱になって寿命を短くする、といった悪循環の性質があります。

LEDの悪循環

図1. LEDの悪循環


LED電球の構造はLED素子部と電気を送る電源回路部に大別されます。

熱に弱いのは後者の電源回路部で、そこは多くの場合電解コンデンサーという電子部品が使われており、もし高温で破損すれば、寿命が著しく短くなることも考えられるのです(図1)。

そのため回路のある周辺をフィンのような構造にして空気で放熱効率を高めているランプが初期のものに多かったようです(写真1)。

フィン

写真1.真ん中が普通電球、両サイドがフィンを持つLED電球


最近のランプは放熱技術が進んでいるため、フィンが見えず、ほとんど普通電球と変わらない形状になっています。

それでも放熱の悪いガラスグローブ器具、もしくは筒形の器具でランプを下向きに使用すると、熱は逃げ場を失い電源回路部が高温になりやすくなります(写真2)。

筒形のLED

写真2. 筒型器具


パッケージ

写真3.LED電球のパッケージ

このような場合は一般形のLED電球ではなく、密閉型器具対応のランプが求められます。密閉型器具対応かどうかは購入時にパッケージを見ればわかります(写真3)。

また白熱灯の断熱施工用のダウンライト器具にLED電球を代替する場合は、断熱施工対応型を選ぶことが大事です。

 

【3】電圧の変動が起きやすい環境にある

私たちが日常利用している商用電源は、100Vを境に微妙に電圧が変動しています。

通常はあまり意識がありませんが、近くに電気を多く使う工場などがあると、就業時間が終わり電源が落とされるのにしたがって周辺の家々の電圧が急に上がってしまうことがあります。そうした電気ノイズに半導体であるLEDは弱いのです。

供給電圧が若干高くなるだけで発熱量も大きくなり、これが寿命を著しく短くする原因にもなりかねません。

また静電気でも壊れる可能性があります。LEDのバルブは樹脂製なので静電気が発生しやすいです。そのためそれを防止するための回路が設けられますが、それが上手く働かない場合や回路自体が付属されていないと壊れる確率が高まります。

多く場合LED電球は上記のような電気ノイズを防ぐ回路が入っているようですが、それを知るすべがないのが残念です。

【4】明るさの変えられる器具に調光器対応型LEDを使っていない

壁スイッチ、もしくは手元に調光スイッチのついている照明器具にLED電球を入れる場合は「調光器対応」のLED電球を使用しなければなりません(写真4)。

LED調光

写真4. 明るさの変えられる調光付器具には調光器対応型LED 電球を.


逆に調光器対応型LED電球を調光付ではない普通の器具に使用しても寿命に影響することがあります。同様にセンサで点滅する器具にLED電球を使う場合も注意が必要です。

【5】湿気が多い環境にさらされている

LEDは湿気にも弱い特性を持っています。

例えば食卓の上についているペンダントは鍋料理などで湯気にさらされることがあります。この場合、ランプは当然寿命に影響しますので注意しなければなりません。


一般的に初期トラブルというのは1年以内に起こる確率が高いです。したがってその期間を超えてしまえば、使用環境の変化がない限り、長持ちすると考えてよいでしょう。なお、最近は何年かの保証期間を設けているメーカもあります。

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