お金の悩みを解決!マネープランクリニック/40代独身の人のお金の悩み

49歳、住宅ローンを二重で支払い月15万円の支出(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、住宅ローンを2本組む40代の会社員女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 最優先にすべきは一刻も早い売却

現状を考えると、もっとも優先すべきは以前の住宅の売却となります。現在、商談中とのことですから、すでに売却できたかもしれません。もしもまだなら、どうすれば売却できるか。仲介業者といろいろ相談もされているでしょうが、個人的には値下げしてでも早く手放すことが肝要だと考えます。もちろん、大幅に値下げする必要はありませんが、すでに1年以上も空き家状態であることを思えば、価格設定を見直すことは必要だと思います。

さて、売却できた場合の資金の活用法ですが、以前の住宅のローンを完済し、残った資金は現在の住宅ローンの繰上返済に充て、返済期間を短縮する。これがベストでしょう。そもそも売却は家計負担を減らすことが目的です。以前の住宅のローンが無担保であってもなくても、ローンの支払いが発生するのですから、まずはそこを改善しなくてはいけません。

ローンを完済した残りの資金を、現在の住宅ローンの繰上返済に充てる理由は、完済が66歳の時ということ。定年後6年間も支払いが続きます。しかも、再雇用も再就職もせず、茶道教室だけとなると、月10万円の固定支出は大きいと言わざるを得ません。

仮に、今年売却ができて、500万円繰上返済に回せたとすると、返済期間は5年短縮され、支払利息は100万円近く減らすことができます。完済時期は61歳の時ですから、おそらく定年時に退職金で完済できるのではないでしょうか。
 

アドバイス2 「90歳までは足りる」老後資金をどう考えるか

一方、老後資金はどうでしょう。
データを見る限り毎月の収支は1万円程度の赤字ということになります。ただし、以前の自宅が売却できれば、ローンの支払いとランニングコストの合計約5万7000円が軽減されますから、現在の赤字はなくなり、毎月5万円は貯蓄に回せるはずです。これで年間60万円。また、毎月4万円の貯蓄が結果的にボーナスからとはなるものの、それがしっかりできれば、その分が年間48万円。今後10年継続して計1080万円貯蓄できるわけです。

退職金は500万円ですから、仮に先に触れたプランで現在の住宅ローンも完済したとして、350万円ほどは残るはず。したがって、定年時に手元にある資金は2680万円(保険は考慮せず)。これが老後資金として足りるかどうか、ということになります。

定年後、公的年金が支給される65歳までの5年間ですが、現在と同じコストが発生すると仮定すると、生活費が月20万円(住宅ローンと個人年金保険の保険料を差し引いた額)に住宅、クルマ、茶道教室のランニングコスト、税金等を加算して、ざっくりとですが年間320万円とします。
収入は月に母親からの2万円、茶道教室からの3~4万円、個人年金保険から5万円、企業年金から4万円で計15万円ほど。結果、年間140万円の赤字ですから、5年間で700万円。これを先の老後資金から捻出すれば、65歳の時点でほぼ2000万円が手元に残っているという計算になります。

65歳以降は公的年金12万5000円が加算されますので、70歳になるまでは年間10万円の黒字。70歳以降は100万円ほどの赤字になりますから、老後資金は90歳までは足りるということになります。
 

アドバイス3 茶道教室は赤字を出さないことを目標に

「90歳までは足りる」老後資金をどう考えるべきでしょうか。この試算は、自宅売却がある程度スムーズに進み、定年時に住宅ローンはすべて完済できる、というケースで行っています。また、90歳まで何も大きな支出がないということが前提でもあります。当然、長生きリスク(長生きによる生活費の増大)や医療費の発生、その他、不測の支出を想定すれば、さらに500万~1000万円程度の余裕資金は必要と考えていいでしょう。

そのために今からできることは、生活コストをダウンサイジングしていくこと。娯楽費+小遣い+雑費で約10万円。これは収入に対して、あるいは今後を考える上で多いと言わざるを得ません。通信費2万円も同様。これらを合わせて計5万円削れれば、10年間で600万円老後資金が増えます。

それと、お母さんに掛けられている養老保険は不要。元本割れしない時期に解約しましょう。加入の目的がお葬式代なのか、あるいは医療特約を付けたいと考えられたか。前者であれば、それはお母さんの資金で行うべきです。これは介護についても同様。基本的に、親にかかるコストは親の資金で。これがマネープランの原則です。また、後者であれば、この程度の医療保障を確保するより、現金を貯めて、いざというときに医療費に充てる方がはるかに合理的です。

先の貯蓄の増加分にこの保険料の浮いた分と、解約返戻金を加算すれば、おそらく800~900万円にはなるはず。これでおそらく老後資金はほぼ十分足りる額に達するでしょう。もしも、思うように生活コストを下げられなかった場合は、アルバイトでも構わないので、定年後も収入も得ることです。月6万円でも年間72万円。65歳まで働ければ、ほぼカバーできるのではないでしょうか。

最後に、趣味の茶道教室について。いただいたデータでは年間20万円程度の赤字のようです。20年続けば400万円にもなります。ですが、茶道教室は続けるべきだと思います。それ自体が、ご相談者が長年の頑張ってこられた証しのようなものであり、老後に向けての生き甲斐でもあると感じるからです。であれば、すぐに黒字にならなくてもいいので、なるべく赤字を出さないよう工夫を。そして最終的には黒字化することを目標にしてください。

 

相談者「まおまおうさぎ」さんから寄せられた感想の一部

ご指摘いただきました60歳以降ももちろん、何らかの仕事はしていくつもりですし、教室も現状はフルタイムでの仕事のため、募集も手を広げていないだけで、時間に余裕をみながら、日数と回数を増やして収入も増やしていくつもりですので、アドバイス通り、現役の時は、赤字の幅を勘案しながら、楽しみとしてやっていこうと思います。頑張ってきた自分への励みに続けていけばよいと言っていただきましたこと、本当にうれしかったです。生きたお金にしたいと存じます。とにかく現状の仕事を確保しつつ、ダウンサイジングを心がけ、趣味を楽しみながら、老後設計をしていきたいと思います。ありがとうございました。


教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん 
 
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マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ



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