平均額の貯蓄があれば足りるかも?
総務省の「家計調査年報(平成28年)」によると、高齢者世帯(世帯主が60歳以上である2人以上の世帯)の貯蓄残高の平均額は2385万円でした。平均額は貯蓄額の低い世帯によって引き下げられます。そこで、貯蓄額の低い世帯から高い世帯へ順番に並べたときに中央に位置する世帯の値(中央値)で見ると、1567万円です。では、この金額で老後資金は足りるのでしょうか? 下記の前提で必要な老後資金を計算してみました。
●夫婦は同い年の65歳
●夫婦ともに95歳まで生きたとする
●夫婦ともに亡くなるまで自宅で生活
●夫婦の生活費の不足額は月5万4711円=総務省の「家計調査年報(平成28年)」の「高齢夫婦無職世帯の家計収支」より
65歳から95歳までの生活費の不足分は、5万4711円×12か月×30年=1969万5960円。夫婦それぞれのお葬式代が50万円ずつかかったとして、約2070万円です。65歳時点で平均額の2385万円の貯蓄残高があれば老後資金は足ります。残高0円世帯は当然、中央値近辺の残高しかない世帯はとても足りませんね。
しかし、この計算は、住宅のリフォームはせず、いわゆるPPK(ピンピンコロリ)のケースです。実際には、65歳時点で住んでいる自宅を30年間、お金をかけずに居住し続けられるとは思えないので、300万円単位のリフォーム費用を含めるとギリギリです。
5000万円の貯蓄があっても足りない?!
また、夫婦ともに95歳まで大病もせず、要介護にもならずに生活できるとも思えないので、医療・介護費用も考えると不足額は大きくなります。夫婦どちらかが介護施設に入居しなければならなくなると、自宅に残った方の生活費の他に介護施設の費用がかかります。高齢者の1人暮らしの生活費は月14万円から15万円かかりますし、介護施設の費用は入居一時金なしで安くても月20万円から25万円はかかります。すると、5000万円の貯蓄があっても足りないかもしれません。
最近、連れ合いが入居する介護施設費用をねん出するために、複数の職場でパート勤務をして疲れている「過労老人」が増えていると聞きます。
今後、公的年金は減る、公的健康保険と公的介護保険の保険料や自己負担は増える、長期で考えると物価はそれなりに上がる、95歳より長生きする可能性もある……で、老後資金はもっと必要になると予想されます。もちろん、夫婦ともに、さほど長生きしなければ必要な老後資金は少なくなりますが。
やはり、長生きを想定して現役で働いている間に貯蓄をし、定年後もできる限り働く期間を長くして貯蓄は増えないまでも減らさないようにするなど、心して老後資金を作りましょう。