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「想定外のこと」に備える不動産取引慣習

住宅の契約をめぐり想定外の事態が起きたとき、法律よりも不動産取引慣習のほうが合理的な場合もあります。慣習や慣例を否定的にとらえるのではなく、その背景をしっかりと理解することが欠かせません。

執筆者:平野 雅之


普段の生活からは想像もできないような事件や事故が毎年のように発生しています。

「想定外のこと」として意識の外に追いやってしまうのは簡単ですが、実際の被害に遭われた人だって、まさか自分が巻き込まれるとは考えてもみなかったケースが大半でしょう。しかし、冷静に考えればいつどこでどのような災害や事故、事件に遭遇するか分かりません。

それと同じように、大地震や大雨など自然災害による建物損壊の危険性とまったく無縁でいることもできないでしょう。

通常の住宅売買では、契約締結から引き渡しまでに1~2か月、場合によっては3か月以上の期間を要するケースもあります。

それでは、引き渡しまでの間に自然災害による建物の損壊だけでなく、隣家の火災で類焼してしまったり、車に突っ込まれて大破したり、隣の工事現場のクレーンが倒れてきて建物自体が倒壊したりした場合にはどうなるのでしょうか?

このようなとき、たとえ購入した建物が無くなってしまっても「買主は残代金を支払わなければならない」とするのが日本の民法です。

それに対して「不動産取引の慣習」では白紙解除を認めることが一般的な取り扱いで、危険負担の特約としてたいていは契約条項に記載されています。不測の事態は滅多に起きないとしても、万一に備えることは常に欠かせません。

ときどき、不動産取引の慣習や慣例にことごとく否定的な意見をぶつけている人もいますが、すべてがよいとはいわないまでも合理的な部分も多く、あらゆる取引慣習などを排除することはできないでしょう。

もちろん悪い部分は直していかなければなりませんが、逆にすべての面で取引慣習よりも法律の原則を優先すれば、買主がきわめて不利になったり、買主のリスク負担が増加したりする部分も多いのです。

不動産取引で生じた問題に対してこちらから何らかのアドバイスをしたとき、「その法的根拠は何なのか」「法律のどこに書いてあるのか教えてくれ」などと、取引上の細かい部分についてまで「法律」にこだわる人もいます。

しかし、法律ではない「不動産取引慣習」も長年の蓄積によって形作られたものであり、「法律に書かれてないから認めない」という姿勢では、うまくいかない場面があることを理解しておかなければなりません。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2006年12月公開の「不動産百考 vol.6」をもとに再構成したものです)


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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