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鎌倉の早春を彩る早咲きの桜「玉縄桜」

河津桜が咲くのとちょうど同じ頃、2月中旬頃から「染井吉野(ソメイヨシノ)」に似た白い花を咲かせはじめ、およそ1ヶ月もの長期間、鑑賞できる「玉縄桜(タマナワサクラ)」は神奈川県鎌倉市の「神奈川県立フラワーセンター大船植物園」生まれの桜。玉縄桜の誕生秘話や、開花時に行われるイベントの様子などをお伝えします。

森川 天喜

執筆者:森川 天喜

国内旅行ガイド

鎌倉生まれの早咲きの桜「玉縄桜」

寒い最中に咲く桜というと、やや紅がかった花を咲かせる河津桜(カワヅザクラ)が思い浮かぶと思います。
フラワーセンター大船植物園に咲く「玉縄桜」(2016年3月17日撮影)

フラワーセンター大船植物園に咲く「玉縄桜」(2016年3月17日撮影)


河津桜が咲くのとちょうど同じ頃、2月中旬頃から「染井吉野(ソメイヨシノ)」に似た白い花を咲かせはじめ、およそ1ヶ月もの長期間、鑑賞できる「玉縄桜(タマナワサクラ)」という桜があるのは、まだ、多くの人が知らないのではないかと思います。

今回は、玉縄桜発祥の地である神奈川県鎌倉市の「神奈川県立フラワーセンター大船植物園」を訪れ、玉縄桜の誕生秘話や、開花時に行われるイベントの様子などをお伝えします。

玉縄桜の誕生まで

玉縄桜は、フラワーセンター大船植物園で生まれた"鎌倉生まれ"の桜。

新しい品種を作ろうとして意図して掛け合わせたわけではなく、接ぎ木のための「台木」にするために種を蒔いたところ、その中に1本だけ芽が出るのも成長するのも早い個体があり、選抜・育成することに。

種から育った最初の一本である玉縄桜の原木も見ることができる(2017年2月24日撮影)

種から育った最初の一本である玉縄桜の原木も見ることができる(2017年2月24日撮影)


昭和44(1969)年に実生から選抜したその木は、昭和49(1974)年に花を咲かせ、挿し木や接木で繁殖を開始。その後、平成2(1990)年4月に、農林水産省に新しい品種として「品種登録」されました。品種登録というのは、植物の特許のようなもの。ちなみに、玉縄桜の種子親(母親)は染井吉野ですが、花粉親(父親)は、不明とのことです。

なお、名前の「玉縄」とは大船植物園の北西に、戦国時代に北条早雲が築いたとされる「玉縄城」(城址は現在の清泉女学院の敷地一帯)に因みます。「玉縄」は周辺の地名にもなっています。

当初は、大船植物園の東から南を流れる「柏尾川」から、「柏尾桜」と名付ける案もあったそうですが、電算機メーカーの名前と紛らわしいとのことで、「玉縄桜」に落ち着いたそうです。

玉縄桜の特徴

玉縄桜の特徴は、まず、早咲きで長咲きであること。寒い時期に咲き始めるので、花が長く持つのだそうです。

玉縄桜の原木(2016年3月17日撮影)

玉縄桜の原木(2016年3月17日撮影)


2つ目の特徴は、早咲きなのに、染井吉野に似た白い(淡いピンク色の)花が咲くこと。

早咲きの桜は、河津桜をはじめ、紅がかった花が咲く品種が多いですが、その理由は寒緋桜(カンヒザクラ)など、早咲きで紅色の花を咲かせる品種との掛け合わせであることによるそうです。ちなみに、河津桜は、大島桜と寒緋桜の自然交雑種であると推定されています。

玉縄桜は白っぽい、染井吉野によく似た花が咲くのも特徴

玉縄桜は白っぽい、染井吉野によく似た花が咲くのも特徴


一方、玉縄桜は種子親が染井吉野であるため、その特徴を引き継ぎ、白い花が咲きます。このため、一般的な桜のイメージに近い「桜らしい桜」の花を長期間、楽しむことができます。

玉縄桜の広がり

現在、玉縄桜はフラワーセンター大船植物園の園内に19本が植えられているほか、鎌倉を中心に北は岩手県陸前高田市から南は沖縄県まで、多くの場所に植えられています。

玉縄桜を各地に植樹し、広める活動をされているのが「玉縄桜をひろめる会」の皆さん。会の発起人・長田克己さんに話をうかがいました。

大船駅前の並木として植樹された玉縄桜(2017年2月24日撮影)

大船駅前の並木として植樹された玉縄桜(2017年2月24日撮影)


長田さんが玉縄桜という桜の品種があるのを知ったのは、平成17(2005)年のこと。

鎌倉・玉縄地域の"宝物"として広めたいとの思いがあったものの、農水省に品種登録すると種苗法の育成者権の関係で、長期間(当時の法律では18年間)、当事者以外による増殖ができませんでした。

品種登録の拘束期限が切れるという情報を耳にし、当時の園長にお願いして苗木(挿し木)の作り方の指導をしてもらう一方、会員を募り、「里親制度」を設け、苗木鉢を各自宅で面倒を見てもらいました。

しかし、1000本挿し木をしても、発根するのはせいぜい一割程度。また、植樹後のメンテナンス作業にも想定外のものがあり、苦労が多かったそうです。

その後、東日本大震災の翌年の平成24(2012)年3月24日には、被災地である陸前高田市へ苗木6本を持って行き「鎮魂の植樹」を行い、玉縄城築城500年祭(2012年)の折には、北条早雲に所縁のある各地に植樹するなど、その活動とともに、玉縄桜は全国に広がりつつあります。

現在は、相模湾を取り巻く、平塚、茅ヶ崎、藤沢、鎌倉、逗子、葉山(湘南国際村)に植樹を進めるとともに、今後の夢として、開花時期がほぼ重なる河津桜(紅)と玉縄桜(白)で、「紅白源平桜」を実現するのが夢だそうです。

イベントとその他の花々

大船植物園では、玉縄桜の開花にあわせ、園長による花散歩、スタンプラリー、ミニコンサート、夜間ライトアップなどのイベントを行っています。

園長による花散歩の様子(2017年2月24日撮影)

園長による花散歩の様子(2017年2月24日撮影)


なお、私が訪問した2017年2月24日には、玉縄桜のほか、園内に30数種植えられている桜のうち、早咲きの品種である「河津桜」や「大寒桜」、遅咲きの梅、クリスマスローズ、スノードロップなどが花を咲かせていました。

<DATA>
■神奈川県立フラワーセンター大船植物園
住所:鎌倉市岡本1018
アクセス:大船駅西口観音側から徒歩16分
地図:大船駅からの歩行経路

■2017年のイベント(玉縄桜を楽しもう)
開催期間:2月24日(金)~3月5日(日)
詳細は、フラワーセンター大船植物園ホームページをご覧ください

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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