Amazonがリアル店舗を経営
Amazon Goにはレジがない
Amazon Goへの入店から来店までの流れを説明します。- お店に入る前にスマホで専用アプリを起動しバーコードを表示する。
- お店の入口のゲートにそのバーコードをかざして入店する。
- 棚から商品を選ぶ。
- 入店のときに通ったゲートを通って外に出る。
顧客の行動をAIが解析する
公式動画より
■入店
顧客はスマホに表示したアプリをゲートにかざします。この際に店内のカメラによる顔認証とその顧客のAmazonアカウントが紐付けられます。したがって顧客は個人認証された状態で買い物をすることになります。そしてカメラは店内での顧客の行動を常に追跡します。
■商品選択
顧客が商品を手に取ると、カメラはそのパッケージからそれが何の商品かを識別します。商品を手に取り、結局買うのをやめて棚に戻すといった動作も認識することができます。棚の方にも圧力センサーや重量センサーが内蔵され、陳列の移り変わりをモニタリングします。また、店内にはマイクも配備され、顧客の行動を追跡するための情報を音声からも収集します。このような様々な視覚的、聴覚的、触覚的情報はAIによって情報処理され、顧客の行動を様々な角度から分析します。
■退店
顧客が商品を手にするごとに仮想上のカートに商品が記録されていきます。再びゲートを通って退店する際、その仮想カート上の商品はアプリに登録されたクレジットカードから自動的に決済されます。
このようなシステムを使用しているため、理論上では万引きは不可能であり、様々な角度から顧客行動を監視することによって商品選択を認識することが可能となります。
日本でも普及するか?
Amazon Goの1号店は、Amazon本社がある米国シアトルにあり、現在ではAmazon社員のみが利用可能ですが、2017年前半には一般顧客も利用できる予定となっています。まだ米国でも始まったばかりのサービスであり、このスタイルが受け入れられるか未知数ですが、一歩踏み込んで日本で普及するかを考えてみます。
Amazon Goに必要なものは以下の3つです。
- スマートフォン
- Amazonアカウント
- 専用アプリ
つまり、Amazon Goを利用するためにはAmazon会員であり、なおかつクレジットカードユーザーでなければなりません。
米国と比較して、日本ではクレジットカード決済よりも現金決済が主流です。そのため利用可能な顧客数があらかじめ限定されるリスクがあります。ただし、現時点では可能ではありませんが、Amazonユーザーと一般ユーザーが併存できる技術が開発される可能性は十分にあります。
TSUTAYAやマクドナルドなどが既存の有人レジを設置した上でセルフレジの導入を開始した例もあります。顧客の選択肢の1つとしてAmazon Go方式が徐々に導入されていく未来が現実的だと考えられます。
Amazon Goの本当の目的は?
Amazonがこのスタイルのコンビニを展開させていく可能性はもちろんのこと、このAmazon Go方式を他の小売業に販売していく可能性も十分に考えられます。Amazonはこれまで商品の保管や発送からクラウドサービスまで、他の企業から業務委託を受けたり、プラットフォームを提供してきた経緯があります。決済や認証テクノロジーをAmazonが代行する形で、様々な既存のリアル店舗がレジレス、決済レス機能を導入していく可能性があります。
さらに、Amazon Goに導入される個人認証や行動追跡に関するテクノロジーは、小売だけでなく建築や公共交通といった様々な分野に応用が可能です。
例えば、美術館、遊園地、駅、高速道路などの入場料やチケットが必要な施設にこれを導入することができます。さらにそうした施設において入場者の動線(人の移動経路)を監視・分析することで、より効率的かつ魅力的に展示物やアトラクションを再配置したり、渋滞や混雑の解消を目的として改築を施すことができるようになります。また、このような認証・追跡システムは、より精度の高い防犯システムの構築にも有用です。
つまり、Amazon Goの目的とはコンビニを作ること自体ではなく、Amazonの持つ高い技術力をプレゼンテーションする場としてコンビニを利用することだと考えられます。Amazonの目指す未来とは、オンラインはおろか小売というジャンルを飛び越え、ありとあらゆる事業分野のインフラを提供することにあるのではないでしょうか。