国土交通省が2005年に実施した調査によれば、戦時中に造られた防空壕など「特殊地下壕」のうち、埋め戻しなどがされていないものが全国で10,280箇所にのぼったようです。
このうち「危険またはその可能性があるもの」は1,210箇所で、市街地内にある危険な地下壕も476箇所でした。
それ以降に対策工事は進められているわけですが、2013年10月の調査では8,458箇所の地下壕が残り、「危険またはその可能性があるもの」は368箇所となっています。
また、この危険な地下壕を都道府県別にみると、千葉県、愛知県、京都府、長崎県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県が20箇所以上でした。市街地内の危険な地下壕は優先的に対策がとられたと考えられますが、その詳細は明らかにされていません。
2005年の調査へ至る前には、地下壕の上に建てられた住宅の地盤が陥没する事故もありました。その存在を知らないまま地下壕の上に住宅が建てられた例は少なからずあったのでしょう。
別の調査によれば、地下壕が存在する土地の所有者は個人が69%にのぼり、所有者不明の土地も9%です。個人の土地が多いことを考えれば、調査から漏れている地下壕が相当数あることも否定できず、不安が残るところです。
地下壕ではなくても道路の地下の空洞など、インフラの老朽化に伴ってさまざまな問題も生じています。すでに家が建っている住宅地の地下に、空洞が生じているケースもありそうです。
実際に地下壕や空洞の上に建てられた住宅に遭遇することは滅多にないでしょうが、地表に何らかの兆候が現れていないかどうか、物件見学の際には注意深く観察してみることが大切です。
いざ陥没事故などが発生したときの補償問題はあいまいで、国の責任を認めた判決と、そうでないものがあります。地下壕などに関して地元の自治体が何らかの資料を公表していれば、忘れずにチェックするよう心掛けることも欠かせません。
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(この記事は2006年12月公開の「不動産百考 vol.6」をもとに再構成したものです)
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