五葉松盆栽の正面決めと剪定
まずは盆栽の正面を決めましょう。この苗木は、向かって右側に太めの枝が出ています。主幹もまだやわらかいので針金で曲げることを視野に入れ、右側の枝を大きく流して右流れの樹形に整えていきます。
盆栽の正面は、左右両翼の枝ぶりがよく見えること、木が樹冠部でやや前傾姿勢となるところです。 五葉松をより大木に見せるため、鑑賞用の鉢は現状よりも一回り小さなものを選びました。 この木は上の写真のように、正面に向かって突き刺すように出ている「突き枝(つきえだ)」という「忌み枝(いみえだ)」があります。忌み枝は忌み嫌われる生え方をした枝の総称で、幹の流れも覆い隠してしまいます。 忌み枝は見つけた段階で元から切りましょう。 木の中間部分には上の写真のように車の車輪のような付き方をする「車枝(くるまえだ)」という忌み枝がありました。松にはよくある忌み枝です。 細く小さな枝から落とし、10本以上出ている枝を今回は3本まで減らしていきます。 また、この写真の枝のように太めの枝の付け根から生えている「わき枝」という忌み枝も切りましょう。
このように忌み枝を見つけ、減らしていくことで盆栽としての枝の骨格が出てきます。
五葉松盆栽に針金を巻く
針金は、主幹から巻くのが基本です。曲げたいと考えている枝の太さに対して、約3分の2の太さのアルミニウムの園芸用針金を用意しましょう。 先端をくの字に曲げて、根元に数センチ針金を埋め込みながら針金を差し込みます。 幹に対して斜め45度の等間隔になるように、指の腹で幹と針金の接点を抑えながらひと巻ずつ巻き上げていきます。 次に、上の写真のように低い位置に生える2本の枝の太さがほぼ等しいので、同じ太さのひとつながりの針金を巻いていきます。 枝と枝の間の幹を巻き付ける起点とし、左側と右側のそれぞれの枝に斜め45度の等間隔で針金を巻いていきます。 同じように、中間部分の枝や裏側の枝にも針金を巻きました。針金の力で枝を曲げる
針金を全体的に枝に巻いたら、曲げたい部分を指の腹で押さえ、徐々に力を加えて曲げていきます。上の写真は幹を右側へ倒し、木の頭の先の部分をやや前傾させているところです。 向かって右側の枝にも抑揚を入れ、右流れの見所となる枝に整えます。 枝に抑揚を入れ、不等辺三角形の輪郭に収まるように成形しました。鑑賞鉢への植替え
成形ができたら、鑑賞鉢に鉢底網や根を固定する針金をセットし、植替え作業へ移ります。 プラスチック鉢の形に根が固まっていますので、竹箸を使って、根をほぐしていきます。根元方向から根先方向へ箸を入れ、絡まった根をほぐし、古い土を落としましょう。 また、長い根のままでは小さめの鑑賞鉢に植えられませんし、新しい根の発根を促すためにも根の半分程度を目安に、根の先を切りましょう。 上の写真のように根鉢を小さく整え、新しい鉢へ植えつけます。 赤玉土極小粒を用土とし、鉢の中央に幹が来るように据えて植えつけします。盆栽では、鉢縁よりもやや高い位置に根の張り出す「根張り」の高さが来るようにします。高さを確認し、土を漉(す)き込んだら、根を固定するための針金を、両端から引き寄せて、松の根元の根をまたぐ形で交差させます。交差してねじった部分を“やっとこ”という盆栽用のペンチでつまみ、さらに数回ねじって緩みが無いように締めましょう。
今回の盆栽の場合、元の根の量よりもかなり根を切っていますので、こうした補助の固定具があることで、植替え後の弱りや枯死を減らします。
仕上げのお手入れ
植えつけができましたら、排水口から出る水が透明になるまでたっぷり水をやりましょう。表面の土には苔を張り、美観を整えます。 ここで完成と思いきや、木の頭の部分(樹冠部)ばかりが大きく見えてバランスが悪いので、先端の小枝を切ることとしました。 頭の部分の長い小枝を3本剪定し、軽くしましたが、今後も盆栽の下の方の枝を育て、枝葉を増やして頭の部分とのバランスを整えるのが宿題です。 プラスチック鉢から鑑賞鉢へ植替えられ、盆栽としてのデビューとなった五葉松です。ぜひ一鉢は持ちたい王道の五葉松を育ててみてくださいね!【関連記事】