うっかり使ってしまう「実は意味が正反対」の言葉
本来の意味は実は正反対!こんなうっかり間違いには注意しましょう
日常や親しい友達などとのくだけた場面ならば笑い話で済むこともありますが、ビジネスなどの改まった場面では、相手と自分とが別の意味で解釈しているのですから、誤解を与えたり、話が成り立たなくなったりする恐れもあります。
文化庁が平成7年度から毎年実施している『国語に関する世論調査』では、以下のような調査結果が出ています。
(ア)(イ)どちらの意味が正しいか? どちらの言い方を使うのが正しいか?
問【1】他山の石(ア)他人の誤った言行も自分の行いの参考となる
(イ)他人の良い言行は自分の行いの手本となる
問【2】世間ずれ
(ア)世の中の考えから外れている
(イ)世間を渡ってずる賢くなっている
問【3】煮詰まる(例文:「七日間に及ぶ討論で計画が煮詰まった」)
(ア)(議論が行き詰まってしまって)結論が出せない状態になること
(イ)(議論や意見が十分に出尽くして)結論が出る状態になること
問【4】天地無用(例文:「天地無用の荷物」)
(ア)上下を気にしないでよい
(イ)上下を逆にしてはいけない
問【5】やぶさかでない(例文:「協力を求められればやぶさかでない」)
(ア)喜んでする
(イ)仕方なくする
問【6】まんじりともせず(例文:「まんじりともせずその時間を過ごした」)
(ア)じっと動かないで
(イ)眠らないで
問【7】役不足
(ア)本人の力量に対して役目が重すぎること
(イ)本人の力量に対して役目が軽すぎること
問【8】気が置けない
(ア)相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい
(イ)相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない
では、回答を見てみましょう。
回答問【1】他山の石
○(ア)他人の誤った言行も自分の行いの参考となる
×(イ)他人の良い言行は自分の行いの手本となる
正答率:30.8%
問【2】世間ずれ
×(ア)世の中の考えから外れている
○(イ)世間を渡ってずる 賢くなっている
正答率:35.6%
問【3】煮詰まる(例文:「七日間に及ぶ討論で計画が煮詰まった」)
× (ア)(議論が行き詰まってしまって)結論が出せない状態になること
○(イ)(議論や意見が十分に出尽くして)結論が出る状態になること
正答率:51.8%
問【4】天地無用(例文:「天地無用の荷物」)
×(ア)上下を気にしないでよい
○(イ)上下を逆にしてはいけない
正答率:55.5%
問【5】やぶさかでない(例文:「協力を求められればやぶさかでない」)
○(ア)喜んでする
×(イ)仕方なくする
正答率:33.8%
問【6】まんじりともせず(例文:「まんじりともせずその時間を過ごした」)
×(ア)じっと動かないで
○(イ)眠らないで
正答率:28.7%
問【7】「役不足」
×(ア)本人の力量に対して役目が重すぎること
○(イ)本人の力量に対して役目が軽すぎること
正答率:41.6%
問【8】「気が置けない」
○(ア)相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい
×(イ)相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない
正答率:42.7%
(問1~6は文化庁『平成25年度国語に関する世論調査』、問7,8は『平成24年度国語に関する世論調査』より。回答と割合も同じ。)
なぜ「実は意味が正反対」の認識が広まってしまうのか
いかがでしょうか? 正しいほうを選んではいても何となくであったり、迷ってしまったりという言葉も中にはあるかもしれません。言葉の言い回しや態度などで察せられることもありますが、「Aさんは気が置けない人だ」「企画会議が煮詰まった」などは、解釈の仕方でまったく逆になってしまいます。これらが間違いやすい理由としては、以下のような点が考えられます。「気が置けない」「やぶさかでない」などの「~ない」が付く言葉には、否定の意味を表す言葉が多いことも原因なのでしょう。たとえば、頼りない、仕方ないなどがそうです。
「頼りない」は、頼りにならない、あてにならない、心もとないという否定の意味をもって使われます。そちらとの混同で「気が置けない」は、気を許せない意味、「やぶさかでない」は、仕方ない意味に解釈してしまっての誤用と思われます。
「役不足」は、「力不足」と言葉が似ている点も、間違いやすい理由でしょう。しかし、自分では恐縮したつもりで「私には役不足ですが」と言っても、こちらも自分には軽すぎるという意味です。ですから、場合によっては偉そうな言葉に誤解されたり、恥をかいてしまったりといった困ったことになりかねません。
そのような誤解や失敗を防ぐためには、よく使う言葉は、本来の意味を確認し、ときには言い換えるなどの注意や工夫も大切でしょう。
「真逆」もじつは正反対の意味だった!?
正反対と言えば、その意味でよく使われる「真逆」という言葉も、そもそも本来は違うものでした。「真逆」と書けば本来は「まさか」と読むもので、辞書にも「「逆」を強調した俗語」とあります。元々の「真逆(まさか)」は、ふつうは仮名書きで「まさか、そんなだとは思わなかった」のように使われます。この「真逆(まさか)」を「まぎゃく」と誤って読み違えたという説もあるようですし、もうひとつは、辞書の解説にあるように、逆を強調する意味で使われ出したとも言われます。
たとえば、「真っ白」と言えば、まったくにごりのない白という意で白を強調する際に使いますが、それと同じ意味の真、真逆というわけです。言葉本来の意味も、知れば意外なものもありますね。
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