テクノポップ

艦これ吹雪役・上坂すみれから遡る、声優テクノの歴史(3ページ目)

2016年の邦楽テクノポップ部門で、僕の隠れベストワンは、上坂すみれの「恋する図形 (cubic futurismo)」! この曲は「共産テクノ」であり、「声優テクノ」でもあります。声優テクノの歴史を遡りながら、代表する5人の歌姫をここに紹介します。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

桃井はるこ

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アキハバラブ

桃井はるこは堀江由衣と同年代のベテランですが、声優デビューは2001年で、歌手活動が先行しています。また、作詞作曲もするシンガーソングライターでもあり、上坂すみれの2枚目シングル『げんし、女子は、たいようだった。c/w テトリアシトリ』(2014年)は、桃井が提供したものです。ソ連発祥のゲーム「テトリス」をモチーフにした「テトリアシトリ」は、第4のYMOと呼ばれたシンセサイザーのプログラマー、松武秀樹が編曲したテクノポップ曲となっています。


元祖アキバの女王の異名を持つ桃井はるこは、ぱふゅーむ X DJ momo-i名義でPerfumeとコラボ、楽曲提供をし、秋葉原賛歌『アキハバラブ』を2005年にリリースしています。テクノポップというよりもハイエナジーって感じですが、Perfumeが『リニアモーターガール』に始まる近未来三部作をリリースする手前の出来事です。今まで数えきれない数のPerfumeライヴに参戦しましたが、この曲だけは聴いたことがありません。

もちろん、桃井はるこ本人の作品からもテクノポップへの傾倒は窺えます。彼女のカヴァー曲集『桃井はるこ COVER BEST -カバー電車-』(2007年)では、The Bugglesの「VIDEO KILLED THE RADIO STAR(ラジオスターの悲劇)」を歌っています(ちなみに筆者は「ラジオスターの悲劇」のカヴァー曲を集めるのが趣味)。
cover best

桃井はるこ COVER BEST -カバー電車-

また、アルバム『Sunday early morning』(2008年)収録のタイトル曲「Sunday early morning」は、CAPSULEを意識したような曲です。

他にも、サエキけんぞう&Boogie the マッハモータースの『21世紀さん sings ハルメンズ』(2010年)に収録の「電車でGO」「隣の印度人」 、RAM RIDERの「ベッドルームディスコ」などでボーカリストとして参加しており、この界隈への接近度が高い声優の第一人者と言えるでしょう。

 

宮村優子

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大四喜

声優テクノのトリを飾るのは、宮村優子。愛称は「みやむー」。……声優は愛称を持つことが定番のようです。まあ、Perfumeだってそうですが。声優としてのデビューは1994年と、今回紹介する中では最古参となりますが、1995年~1999年の歌手活動では、テクノポップ系の人たちの楽曲を歌っています。その中でも際立つのが、平沢進が提供したミニアルバム『魂』(1998年)に収録され、シングルとしても発売された「Mother」。平沢らしい大陸的なテクノポップとなっています。

平沢自身もこの曲をソロアルバム『救済の技法』(1998年)に別のアレンジで収録しており、宮村版が女性としての「わたし」であるのに対して、平沢版はアンサーソング的に男性からの「君」と立場を変えることで、微妙に歌詞が違います。聴き比べてほしい、つがいのような曲です。

平沢は他にも、このアルバムで「MOON」(こちらも『救済の技法』で「MOON TIME」として収録)、翌年のアルバム『大四喜』(1999年)で「Ruktun or Die」を提供しています。「Ruktun(ルークトゥン)」とは、「田舎者の歌」を意味するタイの歌謡曲の呼び名(大して悪気はないが、ゆるく蔑称)です。こちらも平沢自身が「Luuktung or Daai」として後にカヴァー。平沢はタイに対しては特別な思いがあるようで、『SP-2』というタイのレディーボーイ(日本で言うところのニューハーフ)との交流を写真とともに記録した書籍を2008年に出版しています(タイが好きなんで、買いました)。

『大四喜』や『鶯嬢』(1999年) には、他にもYAPOOSのメンバー(戸川純、戸田誠司、中原信雄)が提供した楽曲もあり、宮村優子は声優テクノの先駆者であると考えます。

 

ラジオ番組『上坂すみれの乙女*ムジカ』に平沢進がゲストとして出演していたりするので、相性が良さそうな上坂すみれと平沢進のコラボなんかも実現してほしいものです。他にも声優テクノと呼べる楽曲は存在すると思われますが、以上、上坂すみれから始まり、宮村優子に終わる声優テクノの約20年の歴史を感じ取っていただければ、幸いです。
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