働き方改革は、非常に広い概念です
働き方改革を政府が積極的に推進
昨年あたりから、「働き方改革」という言葉を耳にする機会が増えました。安倍晋三首相は、「働き方改革」を「第三の矢、構造改革の柱」と位置づけ、実現に向けた取り組みを進めています。
昨年8月に発足した内閣では、厚生労働大臣とは別に「働き方改革担当大臣」というポストが設けられ、注目を集めました。
また、首相自ら議長を務める「働き方改革実現会議」では、昨年秋以降、積極的な議論・検討が行われています。
年度内に具体的な実行計画を取りまとめ、スピード感をもって国会に関連法案を提出する考えとのことですので、かなりの“本気度”といえます。
結局、「働き方改革」って?
では、政府が進めようとしている「働き方改革」とは、何を指すのでしょうか。もしかしたら、人によって捉え方が異なるかもしれません。
「長時間労働の是正のことでしょ? 『ブラック企業』が社会問題になっているから」
「企業が育児支援やワーク・ライフ・バランス関連の制度を導入することだと思う」
「在宅勤務のような働き方かな。ITがあれば、会社に行かなくても仕事ができる時代だし」
「パートなど“非正規”の問題のことかも。『同一労働同一賃金』の話をニュースで見た」
「副業を認める企業が増えているみたいだけど、これも働き方改革?」
「外国人労働者の問題とかも関係してくるかも…」
これらは、どれも正解。
働き方改革実現会議では、当面取り上げるテーマとして、以下の9項目を挙げています。
- 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
- 賃金引き上げと労働生産性の向上
- 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
- 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
- テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
- 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
- 高齢者の就業促進
- 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
- 外国人材の受入れの問題
このように「働き方改革」というのは、大変幅の広い概念なのです。
働き方改革は、労働者にも企業にもメリットがある
「働き方改革」は、「日本人・男性・正社員で、家庭よりも仕事を優先する」という画一的な働き方からの脱却を目指すものです。政府が改革を進める背景には、
- 労働力人口の減少が続いていること
- 長時間労働の是正が進んでいないこと
- ダイバーシティー(多様性)や生産性向上につなげたいこと
また、これらが実現すると、一人ひとりに合った働き方が可能となり、労働者にとってメリットがありそうです。
一方、企業の側はどうかというと、
- 深刻な労働力不足が進む中、人材の確保・定着につながる
- 従業員のメンタル不調や過労自殺等のリスクを回避できる
- 外国人や女性、育児・介護中の社員などを戦力にできる
- 生産性が高まり、企業競争力が向上する
ただ、具体的な施策に落とし込むことは、簡単ではありません。
注目度の高い「同一労働同一賃金」や「時間外労働の上限規制」などは、特に、労働者と企業の利害が対立するところです。
とはいえ、「先送りは許されない」と捉える政府は、昨年12月に「同一労働同一賃金ガイドライン案」を示し、今年2月からは、労働基準法の改正を視野に、残業の上限規制に関する議論を本格化させる予定です。
皆さんの働き方にも大きな影響を与えそうな「働き方改革」。今後の動きに注目です。