公示地価や路線価などでは、大都市圏だけでなく地方の主要都市などでも地価の上昇が目立つようになってきました。その背景には国内の景気動向や国際的な要因もあるのですが、とくに商業地では投資マネーの動きも大きく作用しています。
さまざまなファンド(REITや私募ファンドなど)をはじめ、国内外の投資マネーが優良な物件を求めて活発に動いていますが、本来このようなマネーによる物件の選別はシビアなものです。同じ都市部であっても、投資に適した物件とそうでない物件で優劣がつけられるのです。
首都圏や近畿圏などでも、全体の地価が一様に上昇しているわけではなく、依然として下がり続けている地域も少なからずあります。さらに細かくみれば、通りが1本違うだけで表側の土地は上昇し、裏側の土地は下落するようなケースもあるのです。
ところが地価上昇期になると、もともと価格が上がるような要因のない物件の売主まで、かなり強気になるケースが少なくありません。
たぶん「回りが上がっているのなら自分の土地だって」という意識でしょうが、商業地にかぎらず一般の住宅地や中古マンションなどでもみられる傾向です。逆に、物件を仕入れる側の焦りが高値を招くケースもあるでしょう。
地価上昇と下落のどちらがよいとは一概にいえませんが、それを買う側としてはしっかりと選別して見極めたいものです。買い手までが地価上昇に惑わされて勘違いし、本来の価格よりも高い買い物をすれば、それが売買事例となってさらなる勘違いも引き起こしかねません。
「大都市の地価は上昇しつつある」という現在の状況は一つの事実として受け止めたうえで、自分が購入を検討するエリアや物件は上昇要因があるのか、それともこれから価格が下がるのか、社会背景なども考えながら冷静に対応したいものです。
とくに今後の人口減少社会は、これまで経験したことがないほど住宅需要のありかたを大きく変えていくでしょう。将来の街の様子をしっかりとイメージしてみることも大切です。
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(この記事は2007年1月公開の「不動産百考 vol.7」をもとに再構成したものです)
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