「自尊感情」って何?
自尊感情を育てるって、どういうことでしょう?
2016年の大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で、「自尊感情」という言葉に触れた人も多いのではないかと思います。ガッキー演じる主人公と同じ臨床心理士で「小賢しい女」であるところの筆者が、自尊感情について解説し、子どもの自尊感情を育てる方法についてお伝えしたいと思います。
「自尊感情」、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。字面を見ればだいたいの意味は想像できるけど、「そもそも自尊感情って何?」と思った人も多いかもしれません。似た言葉に「自己尊重感」とか「自尊心」とか「自己肯定感」というのもありますが、ざっくり同じような意味です。英語だと全部「self-esteem(セルフ・エスティーム)」です。
辞書で調べてみると「尊重」は「価値あるもの、尊いものとして大切に扱うこと」とあります。「自尊心」は「自分の人格を大切にする気持ち。また、自分の思想や言動などに自信をもち、他からの干渉を排除する態度。プライド」とありました。ちなみに「肯定」は「積極的に意義を認めること」。(デジタル大辞泉)
心理学的な文脈で、これらの言葉を使うときは「自分を価値あるものと認めて、大切にする」という意味合いになります。人それぞれ感覚の違いはあるでしょうが、筆者は、
(♪ありのままで~)自己尊重感 − 自己肯定感 − 自尊感情 − 自尊心(誇り)
といった印象でしょうか。ニュアンスが違うので話の流れによって使い分けますが「自己尊重感」をいちばんよく使います。
自尊感情と自己愛の違い
「自尊感情が高すぎるのもねー」という意見もよく聞きます。自尊感情が高まりすぎて「うぬぼれる(実際以上に自分がすぐれていると思い込んで得意になる)」と良くないということですね。辞書によっては「自尊」に、うぬぼれという意味を載せているものもあります。「うぬぼれ」は、漢字で「自惚れ」「己惚れ」と書きます。泉の水に映った自分の姿に恋をしたギリシャ神話の美青年を思い出します。そう。ナルシシズム(自己愛)。
しかし「自尊感情(Self Esteem)」と「自己愛(Narcissism)」は、似て非なるものです。
自尊感情の高い人は、自分で自分を尊重できている、ありのままの自分にOKを出せているので、他者からの評価はあまり気にならないし、批判されても適切に対処することができます。自分を大切にするように、相手を尊重し、対等な関係を築くことができます。また、他者の成功を自分のことのように喜び、嫉妬することはあまりありません。
一方、自己愛の強い人は、根拠なく自分をすごい人間だと思い、特権意識を持っています。ほめちぎられることを求め、批判に弱いのが特徴です。他者は利用する存在だと思っているので、対等な関係を結べません。他者の成功に嫉妬したり、自分が嫉妬されていると思い込んだりします。本当は自分に自信がないので、他人を見下して安心したり、他者からの評価を得ることに執着します。
つまり、自己愛の強い人は、自尊感情が低い。自己愛と自尊感情は反比例の関係にあるのです。
自分を尊重する、とは?
自分を尊重するというのは、「俺ってスゲエ! パーフェクト!」と、いつも自信満々、といったものではなく、「自分には弱いところもダメなところもあるけれど、いいところもあるし、全体的には、まあまあいいよね」と、自分にOKを出せるということです。日本の女性運動に大きな影響を与えた田中美津さんの著書に「かけがえのない、大したことのない私」というタイトルの本があります。「かけがえのない、大したことのない私」。こういう感じが、自分を尊重するということだと思います。
かけがえのない、大したことのない私
自尊感情を育てるには
「自信を持つ」というのは、どちらかというと、自分の「能力への自信」といった印象が強いかと思います。自分は優秀だ、とか、自分は頑張れる、とか、自分に対する信頼感や有能感であるところの「自己効力感」による自信です。
しかし、自尊感情はそれだけでは育まれません。「自分は自分のままで、ここに居ていい」という、いわば「存在への自信」が、自尊感情のベースです。つまり親が(先生でも友達でも祖父母でも)その子の個性を面白がり、あるがままを受け入れて愛することで、子どもの自尊感情は育っていくのです。
ちなみに、大人でも同じです。自尊感情を高め合える人間関係を築いていきましょう。
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