一戸建て購入/新築一戸建て購入

駅からの距離、徒歩時間だけではない住宅立地の要素

物件を検索するときの基本的な条件設定のひとつが最寄り駅からの「徒歩時間」です。しかし、数字で表示される徒歩時間では判断できない立地の要素もあるため、あまりそれにこだわりすぎないことも大切です。(2017年改訂版、初出:2016年11月)

執筆者:平野 雅之


購入する住宅を探すとき、まず手始めに物件検索サイトでいくつかの物件をピックアップしてみる人も多いでしょう。サイトによってさまざまな「絞り込み条件」が設定されており、自分の好みや使い勝手によって、よく使うサイトが分かれるかもしれません。

価格や間取り(面積)、路線・最寄り駅、市区町村などとともに、ほとんどの物件検索サイトに共通する基本的な条件のひとつが「徒歩時間」です。今回はこの「物件検索における徒歩時間」について考えてみることにしましょう。


徒歩時間の設定はどうなっている?

通勤時間帯の踏切

そもそも人によって歩く速さは違うのだが……

物件検索サイトで使われる徒歩時間は不動産広告における表示基準によるものであり、同じ物件が「サイトによって時間が違う」ということは原則としてありません。

主な物件検索サイトを調べてみると、選択する徒歩時間の区切りはおおむね同じような設定がされているようです。

【物件検索サイトH】
1分以内、5分以内、7分以内、10分以内、15分以内、20分以内、指定なし
【物件検索サイトS】
1分以内、3分以内、5分以内、7分以内、10分以内、15分以内、20分以内、指定なし
【物件検索サイトA】
3分以内、5分以内、10分以内、15分以内、20分以内、指定なし

他の物件検索サイトをみても、1~10分の間は比較的細かく分かれるのに対して、10分超は5分刻みで、20分を超えると選択肢はないことが一般的です。これは駅近の物件数が多く、駅から離れるに従って物件数が減っていくことも影響しているでしょう。


徒歩時間「10分」が分かれ道!?

日常的に車での移動が多い人は別かもしれませんが、一般的に徒歩「7分以内」と「10分以内」はあまり印象が変わらないでしょう。しかし、「10分以内」と「15分以内」はだいぶ異なる感覚になり、まずは「10分以内」に設定して検索をする人も多いようです。

そのため「徒歩10分」は比較的売りやすいのに対して「11分」は売りづらいなど、売る側にとって(とくに中古マンションの場合は)「10分」がひとつの分かれ道とされることもあります。

しかし、物件を探すほうの立場で理解しておきたいのは、記載された徒歩時間があくまでも広告表示上のルールによるものだということです。

不動産広告のルール(不動産の表示に関する公正競争規約、同施行規則)では、道のりの距離を「80m=1分」で換算することになっていますが、その際に信号や踏切の待ち時間、坂道や階段状の道路などは考慮されません。

したがって、たとえば途中で信号待ちの多い「徒歩8分」よりも、信号待ちのない「徒歩12分」のほうが実際には早いという現象も起きるでしょう。


徒歩時間は柔軟に考えることが大切

信号待ち以外にも、徒歩時間だけでは判断できない要素があります。途中にきつい坂道がある立地と駅からずっと平坦な立地を比べれば、坂道を含む「徒歩10分」よりも、平坦な「徒歩15分」のほうが楽ということも考えられます。

とくに、重い荷物を持っているときや仕事で歩き疲れて帰るとき、酔っ払って帰るときなど、坂道を上るのがかなりきついこともあるでしょう。

また、同じ平坦地でも活気のある商店街を抜けていく「徒歩12分」と、何もない道を歩く「徒歩8分」では、前者のほうが体感時間は短いこともありそうです。都心ではあまり関係ないかもしれませんが、郊外エリアなどのときには考えておきたい要素です。

さらに、特急・急行停車駅から徒歩11分、各駅停車の駅から徒歩9分というような2駅利用の物件の場合、不動産会社による物件登録の方法、あるいは物件検索サイトによっては、特急・急行停車駅を指定したときしか検索結果に表示されないこともあります。

信号待ちや坂道の有無、途中の街の様子、近隣駅など、さまざまな要素を考えれば、物件検索をする際にたとえば「徒歩10分」で区切ってしまうことが必ずしも得策ではありません。「徒歩10分」にこだわるあまり、徒歩11分の「より良い物件」を見逃していることもあるのです。

検索結果に表示される物件数が多すぎるときは別として、そうでなければ徒歩時間の範囲を少し広げて探すことも効果的でしょう。


街の「軸」を考えること

これからの時代は人口が減少していくこともよく考えなければなりません。人口が減れば需要も減り、住宅の資産価値が落ち込むだけでなく、エリアによってはインフラ整備など行政サービスの質の低下も起きるのです。

しかし、すべての地域で一律に人口が減るわけではなく、同じ市町村のなかでも人口減少や利便性の低下が起きる地域と、そうではない地域に分かれます。そこで考えておきたいのはそれぞれの街における「軸」の配置です。

最寄り駅からの徒歩時間で考えた場合には、途中の道のりによって少しいびつになるものの、徒歩5分、10分、15分といったエリアがほぼ同心円状に広がっていくでしょう。

しかし、実際には鉄道の路線、幹線道路、商店街などの「軸」の組み合わせによって、利便性を維持しやすいエリアが複雑な形状で広がることも多いはずです。

たとえば、鉄道と幹線道路が並行して東西に延びていれば、「利便性を維持しやすいエリア」は主要駅を中心にして東西方向が長い楕円形状になりやすく、東西に延びる鉄道に対して幹線道路や商店街などが南北方向に交わっていれば、角が丸い菱形のようになるかもしれません。

また、主要駅が街の中心となるケースが多い一方で、駅から少し離れたところに市役所などの公共施設があったり、大型商業施設があったりして中心エリアが分散することもあります。これらの位置関係と「軸」をもとに、その地域の将来像を考えてみましょう。

さらに、急な坂道や高台など「地形の要素」や、自治体で「立地適正化計画」が策定されていればそれを参考にすることも必要です。

そうすることで、たとえば「徒歩10分」でも将来性が危ぶまれるエリア、「徒歩15分」でも大丈夫そうなエリアがみえてくるでしょう。一戸建て住宅の需要に絞って考えれば、もう少し広い範囲でも大丈夫かもしれません。

物件検索サイトには、表示された地図から物件を探す機能が備えられたものもあります。ある程度の土地勘のあるエリアで探すのであれば、徒歩時間で区切るよりも現実の利便性などを想像しながら地図上で物件を探すほうが有効な場合もあるでしょう。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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