マクロ経済スライドが強化されると景気がよくなったら年金が減る!
賦課方式(仕送り方式)は、年金の仕送りをする現役世代が多い分には問題ないのですが、少子高齢化が進んで現役世代が減ってくると年金給付に支障が出てきます。そこで、そうなっても年金制度が維持できるよう、年金給付を抑制する大改革を行いました。2004年のことです。
それから、かなり年月が経過しましたが、抑制策がうまく機能せず、このままでは将来の年金給付に影響する可能性が。そのため、年金の抑制ができる新ルールが導入されることになりました。主な抑制策は、マクロ経済スライドの強化、物価と現役世代の賃金を年金額に反映することです。
マクロ経済スライドは、年金大改革のときに導入されたルールです。年金を支える現役世代の減少と平均余命の延びを考慮して、年金額の変動率を調整することです。2023年度まで毎年、物価の上昇率から0.9%ずつ年金額を減らしていく予定でした。しかし、物価下落時には適用できないルールがあり、これまでに適用されたのは2015年度と2019年度の2回のみ。このため、予定通りに年金額は減らず、年金給付の水準は高止まりしたままです。
筆者の周囲にいる高齢者は「年金が減った」と文句を言いますが、本来であればもっと減っていたはずなのですよ。
さて、マクロ経済スライドの強化策とは、物価下落時には今まで通りに適用しないが、物価上昇に転じたら数年分をまとめて減らすというものです。2018年4月から開始されています。2018年度の年金額は据え置きで、2019年度の年金額は0.1%増です。物価は1%上がっているのに年金額はそれに追いつかない事態が起きたわけです。
物価が上がっても年金額は増えなくなる……?
現在の年金額は物価上昇が反映されます。ところが、物価は上がっても、現役世代の賃金は減ることがあります。こうした場合、年金額は据え置かれます。高齢者の購買力の低下を避けるためだそうです。現役世代も賃金低下で購買力が低下するはずなのに、どうして高齢者の購買力だけに配慮するのでしょうか?……不思議です。税や社会保障制度の制度は、高齢者を優遇する策が盛りだくさんです。日本は「シルバー民主主義の国」だと言われる由縁ですね。
2021年4月から開始される新しいルールでは、物価が上がっても、現役世代の賃金が下がっていれば年金額も下げるというもの。現役世代の痛みを高齢者も分かち合うということですね。
これら抑制策が導入されても、年金額はすぐに思いっきり減るわけではありません。しかし、少しずつ減っていくことは確実です。