かつては自家用車の保有率が高く、マンションでは駐車場不足が深刻な問題でした。
新築マンションなら「100%駐車場設置」が大きな売り文句になったり、中古マンションなら空き駐車場の有無が売れるかどうかの要因になったりしていたものです。
中古マンションを探すときには「駐車場の空きがあること」を条件にするお客様もいたほか、順番待ちになっているマンションでは「どれくらいで空きが出そうか」を調べることも仲介業者に求められていました。
ところが、2000年代になってからでしょうか、とくに駅近の中古マンションなどで敷地内の駐車場が空いているという話をポツポツと聞くようになりました。詳しいデータはありませんが、その傾向は年々強まっているかもしれません。
戸数に対して100%の駐車台数が確保されたマンションだけでなく、戸数の半分程度しか駐車場がないようなマンションでも、いくつか空きが目立つケースがあるようです。
若い世代の車離れ、道交法改正で路上の駐車取り締りが厳しくなったこと、何度となく繰り返されたガソリン代の高騰など、その背景はいろいろとありそうです。もちろん、大都市圏と地方都市などで違いもあるでしょうが、居住者の高齢化も一因として考えられます。
空きがあっても満車でも、駐車場設備の維持メンテナンス費用は変わりませんから、この傾向が強まると管理(予算会計)に支障をきたすマンションがいくつか出てくるでしょう。とくに機械式の駐車台数が多いマンションは影響が懸念されます。
もともと駐車場の使用料が無料になっているマンション(実質的には管理費や修繕積立金に上乗せされて、車を使わない世帯も維持メンテナンス費用を負担している)では問題が表面化しにくいこともありますが、何らかの対策を考えることは欠かせません。
たとえば月額2万円の駐車場が10台分ほど空いたなら、毎月20万円、年間では240万円の収入不足が生じることになるのです。
そのため、マンションの居住者ではない外部の第三者に駐車場を貸すケースも増えつつあるようですが、それもうまくいかなければ「駐車場が過剰なために」管理費などの値上げを検討せざるを得ないマンションも出てくるでしょう。
以前とは違い、中古マンションを選ぶときに「駐車場が空いててよかった!」と素直に喜ぶわけにはいかないようです。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2007年3月公開の「不動産百考 vol.9」をもとに再構成したものです)
関連記事
マンションの駐車場マンション駐車場の権利に意外な落とし穴