食と健康

風邪予防への有効性は?マヌカハニーの健康効果

身近な健康食品でもあるハチミツ。ひと口にハチミツと言っても、密を集める花が違うと風味や味、健康効果までも異なるため、専門店も人気を集めています。今回は特に海外で健康効果が高いと人気のマヌカハニーについて解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

マヌカハニーとは…そもそもマヌカって何?

ハチミツ

近年人気のマヌカハニー。ニュージーランド原産の貴重価値の高いハチミツで、健康効果についても古くから知られています

「マヌカ」とはニュージーランドだけに原生するかん木です。マヌカは英語で「Tea Tree」というため、アロマオイルのティーツリーと混同してしまう人もいるようですが、別の植物。海抜1000メートルほどの高原地帯に生育し、樹高は4mくらいとやや低木です。林や森林として群生しています。ニュージーランドが盛夏の時期となる12~2月頃、梅の花に似た5枚の白い花びらとピンクの花弁を持った可愛らしい花を樹木いっぱいに咲かせます。この花から西洋みつばちが集めるハチミツが、マヌカハニーです。

メチルグリオキサールによるマヌカハニーの抗菌効果

マヌカは、ニュージーランドの原住民・マオリの人たちに欠かせないものです。マオリの人たちは、葉を煎じて薬効のあるお茶として用いたり、薬として使ったりしてきたそうです。

マヌカハニーの効果は、主に抗菌効果に集約されます。特に、研究がすすんでいるのは以下の2つ。

  1. ピロリ菌の除去効果(胃潰瘍の原因菌)
  2. メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に有効

特にピロリ菌については、5%水溶液に希釈しても除菌が可能であったという報告もあります。

マヌカハニーは風邪に効果があると聞いたことのある人もいると思いますが、風邪はかかってから1週間程度で治癒してしまうので、実はヒトを対象とした正式な研究結果は現時点ではありません。実際に効くかどうかは定かではないといったところだと思います。試験管内やラットでは効果があるという研究はありますが、冷静に考えればお分かりの通り、人間の身体は試験管の中やラットとは違います。ラットで効果があったからと言って人間にも効果があるとは断言できないのです。それでも、宣伝文句としては「効果があった」と書ければ十分ですので、マヌカハニーの宣伝文で見かけるものは、これらの論文を元にしているのではないかと思います。

歯周病に効果があるとも言われていますが、こちらも効果があるという小規模研究はありますが、あまり過度な期待はしないほうがよさそうです。虫歯の痛みに効果があると言われることもあるようですが、鎮痛効果があるといった研究成果は今のところ、ありません。人にもより、プラセボ効果などもあるかもしれませんが、過度な期待はせず、まったく効果はないと考えるほうが無難です。

マヌカハニーの抗菌効果のメカニズムは、他のハチミツとは違っているのではないかと考えられています。抗菌効果はマヌカハニーに含まれている「メチルグリオキサール(MGO)」によるものと言われていますが、まだ断定されたわけではないようです。

この「メチルグリオキサール」に発がん性があるのではないかという噂もあるようですが、マヌカハニーを毎日何リットルも飲むことはないので心配はありません。

実際の使い方としては、「胃が気持ち悪い」「しくしくする」「お腹が張る」「胸焼け」「下痢気味」などの時に小さじ2杯くらいのマヌカハニー(UMF10+で十分)を飲むとしばらくして体調が戻ることがあるようです。試してみるとよいかもしれません。

マヌカハニーの殺菌効果の単位…UMFとは

マヌカハニーの殺菌効果は、フェノール溶液の濃度に換算されて「ユニーク マヌカ ファクター(UMF)」として数値化されて評価されています。商品にもUMFの数字が示されています。これは、成分の良し悪しを示す数字ではありません。「何%のフェノール溶液と同じ殺菌力を持つか」を示す数字なので、数字が大きくなるほど、抗菌効果が高いとされています。

病院等でフェノールを使って殺菌する場合(最近はあまり使いませんけれど……)手術室や排泄物の殺菌など、かなり高濃度で使う場合でも、5%以下です。

販売されているマヌカハニーのUMFは低いものでも+10以上。UMFが高くなるほど効果が高いようですが、一方で味のクセは強くなり、あまりに高いものはやや使いづらくなるようです。家庭で殺菌効果を狙う程度であれば、UMFは一番低いもので十分だと思います。他に「MGO」という数字もありますが、こちらも低いもので問題ないと思います。

食べるだけではないマヌカハニーの健康効果

上記の食用以外にも、マヌカハニーには様々な効果があると言われています。

■マヌカハニーによる傷の治療効果
すべてのハチミツに共通していますが、ハチミツは天然由来のものとしては異常なほど糖度が高く、水分含量が少ないことも特徴の1つ。高糖度・低水分含量のものは浸透圧現象を生じ、患部の水分をコントロールすることで治癒効果を得ることができるのです。特に、褥瘡などは栄養素として「たんぱく質」の強化を同時に行えば、治療スピードが格段に上がる可能性があります。実際、病院等で使用されている「イソジンシュガーパスタ」は赤チンと砂糖を練り合わせたお薬です。これだけの理由であれば、他の花のハチミツでも効果があるはずですが、マヌカハニーは上記のような抗菌作用を持っていることから、さらに治療効果が高い可能性があります。 軽症の場合でも、皮膚に塗ることで、痛みやかゆみが軽減する例も少なくないようです。

■マヌカハニーによる美肌効果
美容への応用として、マヌカハニーをそのままパックの要領で顔に塗り、水でパッティングをしながら含ませます。その後、パック用のカバーシートをつけて就寝。翌朝、湯で洗い流すと肌がすべすべになる効果が期待できます。

■マヌカハニーによる歯周病等の予防・治療効果
さらに、歯科への応用もあります。歯周病の菌は皮膚病や頭痛、背骨の痛みの原因になります。マヌカハニーを歯茎に塗ったり、食べたりすることで副作用もなく治療ができるのです。味もおいしいので、子どもや老人も好んで治療してくれるので、回復も早いといわれます。

マヌカハニー以外のハチミツでは効果がないのか?

このように健康効果の高いマヌカハニーですが、日本国内ではまだまだ入手が難しい場合があります。国内産のハチミツは、日本は南北に細長い島国なので、単花ハチミツの種類も多くあります。レンゲ、アカシア、とちなどさまざまな花の蜜のハチミツが販売されています。これだけの種類があれば、マヌカハニーのように健康効果を持つハチミツがあっても不思議ではありません。実際、日本国内で生産されたハチミツを使って、ハチミツの種類によってマウスの食後血糖値が異なることを報告した研究もあります(白井ら:糖尿病に対するハチミツの影響:糖尿病マウスを通して、1-17)。国内産のハチミツを使った研究ももっと進んでいくといいですね。

もう1点、気をつけてほしいことがあります。ハチミツは薬ではないので万人に同じ効果があるとは限らないということです。その場合は、別の花のハチミツを試してみて、自分と相性のよいハチミツを探すのもよいのかもしれません。

マヌカハニー、ハチミツを選ぶ際の2つの注意点

実際にハチミツを選ぶ際の注意点をお話します。これはマヌカハニーに限ったことではありません。国内産のハチミツを選ぶ際にも注意して下さい。

  1. 殺菌済みのハチミツを選ぶこと:ハチミツは自然の恵みから得たものなので、有害菌が混入していることも考えられます。有害菌を殺菌するために、ガンマ線を照射することを奨励する専門家もいます。ガンマ線照射による殺菌をしたハチミツも抗菌性や酵素活性は減少しないと言われています。ぜひ、殺菌済みのハチミツを選ぶようにして下さい。仮に殺菌済みであっても、まだ免疫力の弱い乳児の離乳食には使用しないで下さい。
  2. ハチミツアレルギーがある人は要注意:ハチミツは採取した花やミツバチ自体にアレルギーがある人もいます。細心の注意を払うようにして下さい。

おいしいだけでなく、身体にもよい影響を与えるマヌカハニーや、ハチミツ。上手に取り入れて、元気で楽しい毎日を送りましょう。
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