皮膚科と美容皮膚科の違い
■保険診療で、どこでも同じ料金の一般皮膚科皮膚科の保険診療では診察や処置の内容により定額になっている。値段はどこのクリニックでも変わらず、一般的には3割負担となる。
■自由診療で、クリニックによって料金も異なる美容皮膚科
ボトックスやヒアルロン酸の注入は自費診療となり、美容皮膚科での値段設定はクリニックにより大きく異なる。
■一般皮膚科と美容皮膚科の両方の治療を行うクリニック
一般皮膚科なので自費診療は行いません、美容皮膚科なので保険診療は行いません、と各クリニックが完全にわかれていれば分かりやすいのですが、最近は両方の診療を行っているクリニックが多いため、自分の症状についてどこに行けば良いのか、迷うケースも多いようです。
皮膚科と美容皮膚科の両方を行うクリニックが最近増えている
最近はこの一般皮膚科診療と美容診療の両方を行うクリニックが増えています。元々院長の専門が皮膚科で保険診療をメインに行なってきたが、開業前に美容皮膚科の技術も習得して開業した、というケースが多いです。一般保険診療を行っていてもシミ、ホクロ、シワに関する相談は多いですので、そのときにレーザーを中心とした自費診療も扱っていないとクリニック内で治療を完結できない、というのが大きな理由です。シミ・ホクロをとりたいと相談されたときに、「それはうちでは治療していないので美容診療を行っているクリニックに相談して下さい」と言われてしまうと、他院を受診するのは手間ですし、一から信頼できるクリニックを探すのは大変です。患者さんとしてはそんなところよりも一つのクリニックでなんでも悩みを解決してくれるところを選んでしまいます。形成外科や美容外科でトレーニングを積んできた医師は美容外科もしくは美容皮膚科を、保険診療は行わず自費診療のみで開業する、というのが一般的ですが、開業前に一般皮膚科のトレーニングを積み、両者を標榜する、ということもあります。
一部のレーザー治療、脇汗のボトックス、眼瞼下垂の手術は保険適応になることもあるので、美容皮膚科が一部の施術を保険診療で行うこともあります。
美容皮膚科と皮膚科はどっちがいい?探し方、症状別の選び方
かゆい、痛い、皮膚がガサガサする、赤い発疹が出てきた、と皮膚のトラブルは多岐に渡ります。最近はスマホやパソコンでWebを見て受診することが増えていると思いますが、受診する皮膚科はどのように選べばいいのでしょうか?
湿疹、水虫、じんましん、といった一般の皮膚のかゆみや発疹に関しては一般皮膚科の保険診療をメインで行っているクリニックが良いです。院長の経歴を見て、 皮膚科専門医をもっている先生であれば安心です。最低でも5年間は皮膚科診療に従事していなければ専門医は取得できないからです。
一方、ボトックスやヒアルロン酸といったいわゆる注入系の施術、美容外科的施術に関しては、実際に施術を行うドクターの技量によって左右されます。技術だけでなく、カウンセリングにおける相性もありますので、自分の信頼できると思う医師にお願いするのがいいでしょう。
特に受診先を迷われるのはニキビ、イボ、ホクロの場合ではないでしょうか。これらは一般皮膚科の保険診療の範囲でも治療できますし、美容皮膚科の範疇の自費診療でも効果が出ます。さらに言えば、両者を組み合わせたときに治療の選択肢が多くなり、適切な治療を選べるようになります。多種の治療を用意していて、選択肢を多く提示してくれるクリニックが安心でしょう。
■ニキビ
ニキビはここ数年で多くの塗り薬が認可され、保険適応で処方できるようになりました。どれも効果的で、2週間から3ヶ月と長い期間使うとほぼ確実に効果は出ます。そのため、まず保険診療で塗り薬と飲み薬を試し、それで効果が不十分であれば保険外の自費診療を試すといいでしょう。パルスダイレーザーなどのレーザー治療はニキビ自体やニキビ後の赤いニキビ跡に効きます。ピーリングは回数を重ねるとニキビができにくくなり、肌質も改善します。アキュテインやイソトロインといった商品名で知られるイソトレチノイン(isotretinoin)という飲み薬はアメリカを始めとした海外では保険適応のある中等度から重症のニキビに効く飲み薬で、ボコッとしたニキビや治りにくいニキビには非常に効果的です。
ニキビは保険でカバーされる塗り薬と飲み薬が治療の基本となる。ほとんどの場合は保険診療の範囲内で大きく改善するが、効果不十分の場合は自費診療の内服薬やピーリング、レーザー治療も選択肢になる。
ニキビができた後の黒ずみ、赤み、盛り上がり、凹み、といったニキビ痕に悩まされている患者さんが多数いらっしゃいます。どれも治療が難しく、ニキビそのものとは違い保険診療の範囲では治療の選択肢が少ないのが問題です。ニキビ痕の赤い色や茶色い色素沈着にはレーザー治療、ニキビ痕の凹みにはダーマペンやフラクショナルレーザー、といったように保険外の自費治療では有効な治療法がありますので、ニキビ痕の治療を専門とする美容皮膚科専門のクリニック、もしくは一般皮膚科と美容皮膚科の両方を行っているクリニックを受診するのがいいでしょう。Webを見ると最近のクリニックはメニューを詳細に記載していることがあるので、受診前にチェックすると参考になります。
■イボ
いわゆる「イボ」といっても手足に多いウイルス性のイボ、顔や頭で目立ちやすい茶色の老人性のイボ(脂漏性角化症)、首やまぶたにできるアクロコルドン(スキンタグ)という小さな肌色のイボまでいろいろな種類があります。また、顔ですとイボとホクロを見分けるのも専門科の目を借りなければ難しいことがあります。
ウイルス性のイボであれば一般皮膚科のクリニックで液体窒素を用いて凍らせる方法を何度か繰り返すことで治療できます。これは保険適応です。ただ、足の裏など皮膚の厚い部分だとウイルスが深くまで入り込み、10回以上は通常治療が必要です。中には1年間治療したけれども治らなかった、という何件もクリニックに通った方が受診することがあります。数ヶ月液体窒素で改善がない場合には、サリチル酸のパッチ、モノクロロ酢酸、硝酸銀の塗布、ブレオマイシンの注射、レーザーや手術、といった他の方法を模索する必要があります。液体窒素以外の方法は多くが保険外になりますが、治りにくいイボの場合は治療の選択肢が多い一般皮膚科を受診するのがいいでしょう。
ウイルス性イボの治療の基本は液体窒素で、綿棒やスプレーでイボを凍らせてヤケドのような反応を起こす。イボが大型で治りにくい場合は、レーザーや手術、硝酸銀の貼付、ブレオマイシンの注射など、ほかの方法を検討する必要がある。
ウイルス性以外のイボであれば、液体窒素でとることもできますが、その場合はヤケドの反応が起きるので、その後にメラニンが沈着して黒ずみが残ることがあります。顔や首であればラジオ波メス(サージトロン)や炭酸ガスレーザーという皮膚表面を削る機械を用いるときれいにとれることが多いですので、自費診療も扱っている一般皮膚科、もしくはサージトロンや炭酸ガスレーザーの施術を得意とする美容皮膚科を受診するとよいでしょう。
■ホクロ
ホクロには平たんなもの、盛り上がっているものがあります。通常の境界のはっきりとして色の均一なホクロであれば問題ないですが、急に大きくなっているものや形がいびつで色ムラがある場合は皮膚科専門医に拡大鏡(ダーモスコピー)で診察してもらいましょう。
ホクロの切除を行うには、保険の範囲内で手術でとる方法、自費でレーザーでとる方法があります。顔ですとレーザーでとったほうがキズが目立たない場合が多いです。場所や大きさによっては手術のほうがキレイにとれる場合もありますので、ホクロの切除の経験数が多く、しっかり情報がWebに書かれているところを受診すると安心です。ホクロと思って切除しても、ホクロではなく基底細胞癌などの悪性腫瘍であることもあります。ホクロ以外の可能性もある場合、大型で色むらがあったり拡大傾向の場合には、病理検査をできる皮膚科で切除したほうがいいでしょう。
まとめ
保険診療と自費診療の両者を扱う皮膚科が増え、一般皮膚科と美容皮膚科の垣根は少なくなってきています。湿疹、水虫、じんましんといったよくある皮膚のトラブルは保険診療で治療のほとんどが網羅されていますので、皮膚科専門医を受診しましょう。一方、ボトックス、ヒアルロン酸といった注入系の美容的手技はドクターの技術で結果が大きく変わりますので、信頼できる医師を選びましょう。ニキビ、イボ、ホクロは一般皮膚科と美容皮膚科の境界に位置するので判断が難しいことがありますが、保険診療と自費診療両者を扱い、メニューを多く用意しているところで治療するのがよいでしょう。
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