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縦割り行政がもたらす住宅への弊害

すべての国民にとって欠かすことのできない生活の基盤が「住宅」ですから、そのすべてに関することを一元的に管理する「住宅省」があってもおかしくありません。しかし、実際には省庁間の縦割りもあり、情報が共有されないことによる事件もかつてありました。

執筆者:平野 雅之


だいぶ前のことになりますが、中国から輸入された「構造用集成材」(一戸建て住宅の柱に使用されるもの)に不良品が見つかったという問題(事件?)がありました。

当時の報道によれば、この事実を農林水産省が把握したのは2004年11月のことですが、それを国土交通省に報告したのは翌年3月3日だったようです。

その翌日の3月4日には国土交通省が対応措置を発表したわけですが、農林水産省が情報を公にしなかった3~4か月の間に、その集成材を使って何棟もの住宅が建築されたことでしょう。

住宅の耐震性など強度に影響を及ぼすこともあったようで、工事関係者も気付かないままに、欠陥住宅がいくつも建てられた可能性も否定できません。その後、ある程度の是正工事は実施されたでしょうが……。

柱89本のうち65本に不良品があったことを把握したものの、実際にその使用が明らかになった住宅建築現場は1棟だけだったため、(報道によれば)農林水産省は「とくに問題はないと考えていた」のだそうです。はっきり申し上げて異常な感覚だというほかありません。

ちなみに、農林水産省が情報を隠匿している間に流通した不良集成材は700~900戸分に相当する量だったとか。大地震がきて、まだ新しい住宅の柱が断裂、破断し、倒壊してから問題提起をすればよいと考えていたのでしょうか。

住宅行政に関しては基本的に国土交通省の管轄ですが、住宅建築に使用される資材などについては、その材料・原料によって農林水産省の管轄だったり、経済産業省の管轄だったり、さらに話を広げれば住宅に関して財務省が管轄する部分も少なくありません。

すべての国民にとって必須の住宅に関する事項ですから、いくつもの省庁が縦割りで管轄するのではなく、建築から税金まで、住宅に関することはすべて一元的に管轄する「住宅省」があって欲しいものです。

2001年の中央省庁再編で、それまでの22省庁が12省庁に統合されるなどしているため、現実に「住宅省」ができることはないでしょう。

近年は国土交通省を含む複数の省庁が「共管」する事例も多くなっているようですが、住宅に関する問題事項などが発覚したら、国土交通省住宅局へ速やかに通報することを他の省庁に義務付けるだけでもかなり違うはずです。

省庁同士の力学など、なかなか難しい側面もあるようですけどね。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2007年5月公開の「不動産百考 vol.11」をもとに再構成したものです)


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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