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日本のヴェネツィア「佐原」の美しい街並みと舟めぐり

都心からおよそ2時間の千葉県香取市の佐原(さわら)は、かつて水運で栄えた街。街中を流れる小野川を小舟が行き交う様子は、まさに"日本のヴェネツィア"。江戸時代、商家が軒を連ね、「江戸優り(えどまさり)」と呼ばれ繁栄し、今なお「土蔵造り」の家々が建ち並ぶ、美しい佐原の街並みのぶらり散歩と「舟めぐり」を楽しむ日帰り旅へ出かけてみましょう。

森川 天喜

執筆者:森川 天喜

国内旅行ガイド

"日本のヴェネツィア"佐原へ

千葉県香取市の佐原(さわら)は、かつて水運で栄えた街。街中を流れる小野川を小舟が行き交う様子は、まさに"日本のヴェネツィア"。
佐原の「舟めぐり」

佐原の「舟めぐり」


江戸時代、商家が軒を連ね、「江戸優り(えどまさり)」と呼ばれ繁栄し、今なお「土蔵造り」の家々が建ち並ぶ、美しい佐原の街並みのぶらり散歩と「舟めぐり」を楽しむ日帰り旅へ出かけてみましょう。

あの偉人のふる里でもある佐原

佐原へは、都心からおよそ2時間。JR線または京成電鉄で成田まで行き、JR成田線に乗り換えます。

佐原の駅に下り立ったら、駅前の道を真っ直ぐに歩いて行きます。
街並みに合わせた和風建築のJR佐原駅

街並みに合わせた和風建築のJR佐原駅


この先に、佐原出身のある偉人の銅像が立っているというので、まずは見に行ってみます。道の途中には、観光案内所もあるので地図などを入手しておきましょう。

諏訪神社の大鳥居をくぐり、300mほど歩いて行くと、公園の中に大きな銅像が立っています。この銅像は、江戸時代に全国を測量してまわり、日本史上、はじめて日本の国土の正確な地図を作成した伊能忠敬(いのうただたか 1745~1818年)の像。
測量する伊能忠敬の銅像

測量する伊能忠敬の銅像


忠敬は千葉県の九十九里の生まれですが、17歳で佐原の酒造家である伊能家に婿養子に入り、家業を継ぎ、村の名主まで務めました。

そして、隠居後の50歳になってから江戸に出て天文学を学び、55歳のときから幕府の命で何度も測量旅行に出かけ、17年の歳月をかけて全国の海岸線を測量し、精密な地図(伊能図)を作り上げました。

50歳を超えて第二の人生を歩み始めて活躍した忠敬の話を聞くと、物事を始めるのに遅すぎるということはないのだなと改めて思います。人生に勇気と希望が湧いてきますね。
歴史上の人物の大きな人形が乗せられた佐原の大祭の山車

歴史上の人物の大きな人形が乗せられた佐原の大祭の山車


忠敬の銅像の公園に隣接するのが、毎年、夏(7月)と秋(10月)に行われる佐原の大祭のうち、秋の祭礼が行われる諏訪神社。(夏祭は八坂神社の祭礼)

佐原の大祭では、江戸時代後期から昭和初期に、江戸・東京で活躍した人形師たちによって制作された大きな人形が乗せられた、いくつもの山車(だし)が街中を曳きまわされ、大変にぎわいます。

<DATA>
■佐原の大祭
香取市役所ホームページ

「舟めぐり」を楽しむ

諏訪神社の参拝を済ませたら、街歩きを再開。次は、「忠敬橋(ちゅうけいばし)」を目指して歩いて行きます。

佐原を歩いていて面白いなと思うのが、街の地名表記。目の前の電柱を見ると「佐原イ」と書いてありますが、イロハ順に「佐原ホ」まであるそうです。
「佐原イ」と地名が表記された電柱

「佐原イ」と地名が表記された電柱


忠敬橋は、佐原の街の中心を南北に流れる小野川に架かる橋で、橋の上からは、建ち並ぶ古い家々と舟が行き交う川の情景がコラボした、とても絵になる眺望を楽しめます。
「忠敬橋」からの眺め。小野川の流れに沿って、古い建物が建ち並ぶ

「忠敬橋」からの眺め。小野川の流れに沿って、古い建物が建ち並びます


小野川沿いや、周辺の香取街道沿いには、江戸~明治時代に建てられた家々が建ち並んでいます。このうち、「土蔵造り」の家は、明治25年に発生した佐原の大火の後に建てられたものが多いそうです。
佐原の土蔵造りの商家。この街並みは平成8年に関東地方では初めて「重要伝統的建物群保存地区」に選定されました

佐原の土蔵造りの商家。この街並みは平成8年に関東地方では初めて「重要伝統的建物群保存地区」に選定されました


というのは、大火によって380戸、1200棟の家屋が焼失したにもかかわらず、呉服店の土蔵が焼け残ったことから、耐火性の高い土蔵への関心が高まり、次々と建てられたということです。

さて、いよいよ「舟めぐり」を楽しみます。忠敬橋のひとつ上流に架かる「じゃあじゃあ橋」の通称で呼ばれる「樋橋(とよはし)」のたもとに船着き場があり、小さな遊覧船が発着しています。
もとは佐原村用水を水田に送るための大樋(とい)だった。樋からじゃあじゃあと水が溢れ出ていたことから「じゃあじゃあ橋」の通称が付きました。現在は30分に一度、水を流しています

もとは佐原村用水を水田に送るための大樋(とい)。樋からじゃあじゃあと水が溢れ出ていたことから「じゃあじゃあ橋」の通称が付きました。現在は30分に一度、水を流しています


「舟めぐり」の船頭は、地元の女性が務め、衣装は、昔、田んぼの仕事をするときに着た服装を再現したもの。
船頭さんの話を聴きながら、のんびり舟めぐり。水辺から眺める佐原の街並みの風情は格別

船頭さんの話を聴きながら、のんびり舟めぐり。水辺から眺める佐原の街並みの風情は格別


船頭さんの話によれば、江戸時代、佐原周辺の穀倉地帯の米や、佐原で造った酒、味噌、醤油などを小舟で2kmほど下流の利根川まで運び、そこで大型の帆掛け船に乗せ替え、江戸まで運んだのだそうです。

逆に、舟運を通じて江戸からも文物や人、情報が入った佐原は、江戸にも負けないという意味で「江戸優り(えどまさり)」といわれるほど繁栄しました。

しかし、モータリゼーションが進むとともに、次第に水運は自動車による運送に取って代わられ、今では観光用の舟が行き交うのみとなりました。

<DATA>
■小江戸さわら 舟めぐり
料金・運行時間

伊能忠敬旧宅と伊能忠敬記念館

「じゃあじゃあ橋」をはさんで、小野川の両岸にあるのが、伊能忠敬旧宅と伊能忠敬記念館。
伊能忠敬旧宅

伊能忠敬旧宅


伊能忠敬旧宅は、忠敬が家業である酒造業を営んだ家。江戸時代の当時と比べると規模は縮小しているものの、旧家の雰囲気をよく残し、昭和20年代まで伊能家の住居として実際に使われていたそうです。

ちなみに、通りに面した門扉には、明治25年の大火の時についた焼け跡が、今もそのまま残されています。

一方、伊能忠敬記念館は、忠敬の業績や、測量に使った道具、忠敬が作成した地図「伊能図」などを展示しています。なお、記念館所蔵の2345点にものぼる「伊能忠敬関連資料」は、国宝に指定されています。

<DATA>
■伊能忠敬旧宅
水郷佐原観光協会ホームページ

■伊能忠敬記念館
香取市役所ホームページ

ランチは何を食べる?

さて、旅の楽しみといえば食事ですが、川に囲まれた佐原は、鰻(うなぎ)が有名で、江戸時代から続く老舗「うなぎ割烹山田」をはじめ、いくつかの鰻専門店があります。

鰻以外なら、小野川沿いにある「板前割烹 真亜房」というお店は、近隣で取れた旬の素材を使った美味しい料理を出していて、おすすめです。
「石ちゃん」こと石塚英彦さんも食べたという「板前割烹undefined真亜房」の「恋する豚他人丼膳」(1,620円undefined税込)。味付けは塩味と醤油味がある

「石ちゃん」こと石塚英彦さんも食べたという「板前割烹 真亜房」の「恋する豚他人丼膳」(1,620円 税込)。味付けは塩味と醤油味がある


足をのばしてパワースポット香取神宮・鹿島神宮へ

佐原観光を楽しんだ後は、佐原駅から4kmほど離れており、バス移動になりますが、香取神宮もぜひ訪れたい場所です。
香取神宮拝殿

香取神宮拝殿


香取神宮にまつられている神様は、フツヌシ(経津主)という神様で、出雲の「国譲り」の神話に登場し、オオクニヌシ(大国主)を相手に「国譲り」の交渉をし、日本の国を平定したとされます。

ちなみに、香取神宮と利根川をはさんで相対するようにまつられている茨城県の鹿島神宮のご祭神は、タケミカヅチ(武甕槌)といい、フツヌシとともに出雲に出向いた神様。
周囲を深い森に包まれた鹿島神宮

周囲を深い森に包まれた鹿島神宮


香取神宮と鹿島神宮は、ともにかなり古い歴史を持ち、平安時代に成立した『延喜式神名帳』では、全国で、伊勢神宮・香取神宮・鹿島神宮の三社のみが「神宮」号を許されたという格式を持ちます。

また、とても面白いと思うのが"巨大ナマズ"の話。その昔、この地方は地震が頻発し、人々はいたく恐れていました。

そこへやって来たのが、出雲で「国譲り」を成功させたフツヌシとタケミカヅチ。地震は地中に潜む巨大なナマズの仕業ときいた二神は、地中に石棒を深く差し込み、ナマズの頭と尾を押さえ、地震を鎮めたとされます。
鹿島神宮境内の大鯰(なまず)の石碑

鹿島神宮境内の大鯰(なまず)の石碑


これが、今も香取神宮と鹿島神宮の境内に残る「要石(かなめいし)」。地上に露出している部分が、香取神宮のものは凸型、鹿島神宮は凹型で、あたかも陰陽や男女を表し、対になっているようです。

このように香取神宮と鹿島神宮は、とてもかかわりの深い神社です。鹿島神宮へ行くには、いったん佐原駅まで戻り、電車で鹿島神宮駅へ移動することになるのでちょっと大変ですが、両社をお参りすれば、ご利益も倍増しそうに思います。

<DATA>
■香取神宮
住所:千葉県香取市香取1697
アクセス地図 → 香取神宮ホームページ
佐原循環バス【周遊ルート】

■鹿島神宮
茨城県鹿嶋市宮中 2306-1
アクセス地図 → 鹿島神宮ホームページ
佐原駅から鹿島神宮駅までは5駅20分ほど

なお、佐原(香取市)と、埼玉県川越市、栃木県栃木市は、かつて江戸との舟運で栄え、蔵造りの家並みや江戸の天下祭の影響を受けた山車があることなどから「小江戸」と呼ばれています。いずれも、東京からの日帰り旅行におすすめです。

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