東京湾に浮かぶ唯一の無人島「猿島」

東京湾に浮かぶ無人島があるのをご存じでしょうか?

東京都心から電車で、およそ一時間ほどの横須賀市沖に浮かぶ、周囲約1.6kmほどの無人島「猿島」。面積にすると、横浜スタジアムのグランド、約4個分。
 
『天空の城ラピュタ』の廃墟にそっくりと評判の「猿島」の要塞遺跡

『天空の城ラピュタ』の廃墟にそっくりと評判の「猿島」の要塞遺跡


この島は、江戸時代から太平洋戦争終戦まで、軍の要塞として使われたという歴史があり、さまざまな遺跡が残っています。

中でも、島内に残る明治時代の要塞の遺跡が、スタジオジブリのアニメ『天空の城ラピュタ』の廃墟にそっくりと評判になり、最近は、多くの人が訪れる人気観光スポットに。
上空から見た猿島(写真提供:横須賀市観光協会)

上空から見た猿島(写真提供:横須賀市観光協会)


今回は、「猿島公園専門ガイド協会」の方に案内していただきながら、島内の見どころをレポートします。

ガイドは有料ですが、ガイドをお願いすると、普段は見ることができない要塞の内部なども見ることができます。

猿島公園専門ガイド協会HP

なお、2019年の夏から秋にかけて、猿島で行われる大人気アニメ『ワンピース』とのコラボイベント「宴島2019 真夏のモンキー・D・ルフィ島」については、記事の末尾をご覧ください。
宴島2019 真夏のモンキー・D・ルフィ島 ©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

宴島2019 真夏のモンキー・D・ルフィ島 ©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 

まずは、猿島に上陸します

猿島のある横須賀市には、JR横須賀線と京急線の駅がありますが、猿島へ向かう船が出ている「三笠桟橋」へは、京急線の「横須賀中央」駅が近くて便利。

「横須賀中央」駅の東口から「三笠桟橋」までは、徒歩で約12分。日露戦争時に活躍した『戦艦 三笠』が記念艦として保存されている「三笠公園」に隣接しています。
「猿島」への船の乗船場所「三笠桟橋」

「猿島」への船の乗船場所「三笠桟橋」


猿島への船は、一時間に一本、運航されています。船の出航時間になると、冬だというのに、かなりのお客さんが並んでいて、驚きました。

「三笠公園」から猿島までは、わずか10分ほどの船旅ですが、いよいよ無人島に上陸すると思うと、ワクワクしますね!
「猿島」が近づいてきます!

「猿島」が近づいてきます!


船の時刻表などについては、運航する『株式会社トライアングル』のHPをご覧下さい。(冬季は土日祝のみの運航)

株式会社トライアングルHP
 

いよいよ無人島探検スタート!

桟橋で船を下りると、すぐに見える建物は公園の管理事務所。島内にトイレはここにしかないので、済ませておきましょう。
トイレを済ませておきましょう!

トイレを済ませておきましょう!


さあ、いよいよ無人島探検スタート!

坂道を登りはじめて、すぐ左手に煙突のある建物が見えてきますが、これは明治時代に造られた発電所。当時は、石炭発電を行っていたそうです。
味のある、たたずまいの発電所

味のある、たたずまいの発電所

 

時空を超えた傷跡

坂道を登って行くと、道が右側に直角に近い角度で曲がる場所にたどり着きます。

ここから先が明治時代のレンガ造りの要塞エリアですが、先に進む前に、左側の壁に注目してみてください。無数の”へこみ”があることに気づくでしょう。
銃弾の跡

銃弾の跡


これは太平洋戦争終結とともに、猿島に上陸した連合軍が発砲した銃弾の跡。見通しが悪い場所なので、日本兵が潜んでいるのではないかと思い、威嚇射撃したのでしょうね。

戦後、すでに70年以上が経過しているわけですが、このような生々しい「時空を超えた戦争の傷跡」が残っていることに驚きます。
 

要塞の兵舎と弾薬庫跡を見学

明治時代のレンガ造りの要塞エリア

明治時代のレンガ造りの要塞エリア


猿島の要塞は、東京湾口の守備のために明治時代の中期に造られたもの。猿島専門ガイドさんと一緒だと、「兵舎」や「弾薬庫」として使われた部屋の中も見学することができます。

下の写真は、兵隊さんが寝る「兵舎」として使われた部屋の奥から入口を見たところ。外から目立たないように岩壁に横穴を掘って部屋を造っているので、入口側にしか窓がありません。
要塞の兵舎内部

要塞の兵舎内部


ガイドさんにお話をうかがう中で意外だなと思ったのは、ベッドではなく、畳を敷いて寝たという話。生活様式や軍装の洋式化が進んだ明治時代ですが、やはり日本人は畳のほうが寝心地がよかったということでしょうか。
「猿島」の自然と人工がおりなす造形美

「猿島」の自然と人工がおりなす造形美


明治時代に東京湾防衛のために造られた猿島の要塞ですが、結局、明治時代には実戦で使われることはありませんでした。

やがて、太平洋戦争の時代になると猿島はふたたび要塞化されますが、この頃は、すでに飛行機全盛の時代。砲台などは新しいものが別に造られました。

明治の要塞は兵舎は使われたものの、ほぼ手を加えられることがなかったため、このような味わいのある廃墟が今に残ったのです。
 

愛のトンネル

道を更に先に進むとトンネルが現れます。これは「愛のトンネル」と名付けられた長さ90mほどの総レンガ造りのトンネル。お祈りすると恋愛運アップや縁結びにご利益があるのだとか。
トンネル内部の美しいアーチ

トンネル内部の美しいアーチ


トンネルの中に入って上を見上げると、レンガで造られた天井のアーチの美しさに驚くばかり。電気や重機のなかった時代に、よく、このような精巧な建造物を造ったものだと思います。

当時のことですから、危険を伴う工事は囚人を使ったりして行ったのかもしれませんが、それにしてもたいしたものです。
 

トンネルを抜けると、そこは『ラピュタ』の世界

「愛のトンネル」を抜けた先が、おそらく猿島で一番のフォトジェニックなスポット。

そう、あのスタジオジブリの名作アニメ『天空の城ラピュタ』の廃墟を思わせる世界が、目の前に!
『天空の城ラピュタ』の廃墟にそっくりと評判の「猿島」の要塞遺跡

『天空の城ラピュタ』の廃墟にそっくりと評判の「猿島」の要塞遺跡

 
『天空の城ラピュタ』の廃墟にそっくりと評判の「猿島」の要塞遺跡

『天空の城ラピュタ』の廃墟にそっくりと評判の「猿島」の要塞遺跡

 

猿がいないのに、なぜ猿島?

ところで、猿島というからには、猿がいっぱいいるのだろうと思われる方もいるかもしれません。

しかし、実際に島に行ってみると、猿はまったくいません。

では、猿がいないのに、なぜ猿島なのでしょうか? そのヒントは島の北西岸にある「日蓮洞窟」にまつわる伝説に由来します。
「日蓮洞窟」

「日蓮洞窟」


鎌倉時代、日蓮宗の開祖である日蓮聖人が、現在の千葉県から鎌倉へ布教をするために舟で海を渡っていると、嵐になってしまいます。

この時、白い猿が現れ、猿島へと導いたことで難を逃れたという伝説が残っており、これが猿島の名前の由来になりました。

鎌倉へ出発するまでの間、島で日蓮がこもって修行したというのが、この洞窟です。
 

太平洋戦争時代の遺跡

このほか、猿島には太平洋戦争時代の高角砲座(飛行機を狙う大砲)の跡などの遺跡が残っています。しかし、この時代の建造物は、先ほどまで見てきた明治時代の精巧な造りの遺跡とはまったく違います。
高角砲座跡

高角砲座跡


造りが粗雑だし、これが果たして、同じ民族が造ったものなのだろうか?と首をかしげてしまいます。このような工作物の出来映えひとつをとっても、国力の衰退が見て取れるように思えました。

猿島探検のしめくくりは、島の北東に位置する「卯ノ崎台場跡」からの眺望。対岸の房総半島の景色がよく見えます。
「卯ノ崎台場跡」

「卯ノ崎台場跡」


東京湾の入口の浦賀水道は、最も距離が短いところでは7kmくらいしかなく、ここを首都の防衛ラインにしたというのがよくわかりますね。
 

猿島の魅力をお聞きしました

最後に、今回、ご案内いただいた『猿島公園専門ガイド協会』のガイドさんに、猿島の魅力をおうかがいしました。

「一言でいえば、猿島は決して広くない面積の中、様々な魅力が閉じ込められた"東京湾の宝石"です。

道の角を曲がると、パッと要塞が現れ、トンネルを抜けるとジブリの世界が広がるなど、立体迷路のような空間とタイムスリップを楽しむことができます。
「猿島」は、海鵜(ウミウ)の生息地でもあります

「猿島」は、海鵜(ウミウ)の生息地でもあります


また、無人島ならではの豊かな自然、特に日光を求めてしのぎをけずる木々の様子や、自然と人工がからみあった造形美などは、よくご覧いただきたいと思います。

そして何よりも、猿島は、まだまだ謎の多い島。私たちのようなガイドでも、歩くたびに新たな発見があるのも猿島の大きな魅力です」

猿島公園専門ガイドは、一名から予約可能です。皆さんも、ぜひガイドさんと一緒に無人島探検を楽しんでみて下さい。あなたが、歴史的大発見の発見者になるかもしれませんよ?

なお、猿島の史跡中の「猿島砲台」と、同じく横須賀市内にある「千代ヶ崎砲台」(非公開)が、「国防のために建設された施設」としては全国で初めて、2015年3月に国の史跡指定されました。

<DATA>
■猿島
アクセス:「三笠桟橋」まで、京浜急行横須賀中央駅から徒歩12分
乗船料:1,300円(往復)
猿島公園入園料:200円(小・中学生100円)
ガイド料金:6名以上の場合、1人600円/5名以下の場合、全員で3,500円

猿島ではこのほか、手ぶらBBQ、磯釣りや磯遊び、そして夏は無人島のビーチで泳ぐ海水浴など、様々なアクティビティーを楽しめます。
 

麦わらの一味が猿島を丸ごとジャック?

2019年7月8日~10月20まで、あの大人気アニメ『ワンピース』とのコラボイベント「宴島2019 真夏のモンキー・D・ルフィ島」が猿島で行われます。

宴島2019 真夏のモンキー・D・ルフィ島(公式サイト)

このイベントは、アニメ『ワンピース』20周年、カレーの街よこすか20周年、京急電鉄創立120周年に合わせて行うもの。

期間中は、東京湾のリアル無人島・猿島が「ワンピース」の世界観で彩られます。
 
宴島2019 真夏のモンキー・D・ルフィ島 ©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

宴島2019 真夏のモンキー・D・ルフィ島 ©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション


『ラピュタ』と『ワンピース』の世界観を同時に味わえる今年の猿島、もう行くしかないですね!

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