東西叶神社と浦賀の渡し

今回の旅先、神奈川県横須賀市の浦賀エリアは、観光地というイメージはあまりありませんが、ペリーの黒船来航や、戦前・戦後を通じて「浦賀造船所(ドッグ)」で、およそ1000隻の船が造られた”造船の街”として知られています。

浦賀の渡し

浦賀の渡し


浦賀の町は、浦賀湾をはさんで大きく西浦賀と東浦賀に分かれています。そして、それぞれの鎮守として、西叶(かのう)神社と東叶神社がまつられており、西叶神社の勾玉(まがたま)を東叶神社のお守り袋に入れて持つと、良縁がかなうといわれています。

水の流れをはさんで結ばれる”縁”というのが、まるで七夕の物語のようで、ロマンチックですね。

この西浦賀と東浦賀を結ぶのが、地元の人たちの生活の足としても利用され、”ポンポン船”の愛称で親しまれている「浦賀の渡し」という渡し船です。

願い叶う神社

浦賀へは、品川駅や横浜駅から京浜急行を利用するのが便利ですが、快特や特急のほとんどが三崎口行きなので、途中の堀ノ内駅で浦賀行きに乗り換えます。

京浜急行の終点、浦賀駅から出発!

京浜急行の終点、浦賀駅から出発!


浦賀駅の改札を出て階段を下りると、正面に大きな三角屋根が見えますが、これが浦賀造船所のドックの屋根。造船所の敷地を左に見ながら、まずは西叶神社を目指します。

しばらく歩いて行くと、左手の造船所の敷地が途切れ、その先に海辺の遊歩道が現れます。海上に目を移すと、時折、屋形船のような見た目の小さな渡し船が、両岸を行き来しています。

屋形船のような見た目の小さな渡し船が、両岸を行ったり来たり

屋形船のような見た目の小さな渡し船が、両岸を行ったり来たり


さて、渡し船の乗り場から海と反対側に目を向けると大きな鳥居が見えますが、これが西叶神社の鳥居です。

叶神社という名前はちょっと変わっているなと思うかもしれませんが、源平合戦の時代に、文覚(もんがく)上人というお坊さんが、平家が滅び、源氏が再興されることを願ったところ、その願いが「叶った」ことから、源氏の氏神である八幡神をおまつりしたのが、叶神社のはじまりなのだそうです。

江戸時代に建て替えられた西叶神社の社殿には、名匠、後藤義光の手による見事な彫刻があり、見どころになっています

江戸時代に建て替えられた西叶神社の社殿には、名匠、後藤義光の手による見事な彫刻があり、見どころになっています


また、宮司の感見達也さんのお話によれば、「文覚上人が参籠して修行した房総半島の鹿野山(かのうざん 千葉県君津市)と海を挟んで相対する場所であることから、神様をおまつりするのにふさわしい場所として、この地が選ばれた」といういわれもあるそうです。

その後、江戸時代の元禄の頃、浦賀村が東西に分村し、その際に東叶神社を分祀(ぶんし)したことから、現在のように湾の東西それぞれに叶神社がまつられる形になりました。

お守りの勾玉は、翡翠(ひすい)、水晶(すいしょう)、瑪瑙(めのう)の三種類があります

お守りの勾玉は、翡翠(ひすい)、水晶(すいしょう)、瑪瑙(めのう)の三種類があります


さて、お守りの勾玉は、翡翠(ひすい)、水晶(すいしょう)、瑪瑙(めのう)の三種類があり、いずれも願い事が叶う「心願成就」のご祈祷がされているとのこと。

なぜ、このお守りが「縁結び」にご利益があると言われるようになったのかは、対岸の東叶神社に行けば分かるということなので、渡し船で対岸に渡ってみましょう。

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■西叶神社
住所:横須賀市西浦賀1-1-13 (地図)

渡し船で対岸に渡って

日本一短い船の定期航路といえば、広島県呉市の「音戸の渡し」(距離70m)が知られていますが、「浦賀の渡し」も距離はかなり短く、対岸の船着き場がはっきり見えます。その距離、およそ200mくらいでしょうか。この渡し船の歴史も古く、江戸時代にはすでに存在していたとのこと。

乗船料は大人一人200円、自転車は50円。料金は船の中で支払います。毎日朝7時~夕方6時の間就航(12時~1時は昼休み)

乗船料は大人一人200円、自転車は50円。料金は船の中で支払います。毎日朝7時~夕方6時の間就航(12時~1時は昼休み)


船頭さんに聞いたところ、現在、渡し船の利用者は、平日は50~60名くらいで地元の人たちの通勤利用が中心。休日になると、平均200~300名が利用しており、近年は、叶神社のお守りを求める若い女性が多く見られるとのことでした。

この渡し船がユニークなのは、船の呼び方です。時刻表があるわけでなく、お客さんが来たら運航するというスタイルなので、もし、船が対岸にいるときは「ピンポン」の呼び鈴を鳴らすと、こちら側に船が来てくれるシステムになっています。

こちら側に船がいないときは「ピンポン」(呼び鈴)を押します

こちら側に船がいないときは「ピンポン」(呼び鈴)を押します


さて、短い船旅を終えて対岸に着いたら東叶神社を目指します。東叶神社は、その昔、浦賀城という戦国時代の城のあった明神山にまつられており、拝殿は山のふもと、本殿(奥の院)は山頂にまつられています。

本殿に向かうには、「恵仁志坂(えにしざか)」、「産霊坂(むすびざか)」と呼ばれる2つの坂を登りますが、2つ合わせると「縁(えにし)があって結ばれる」ということで、この坂を登ってお参りすると縁結びにご利益があるとされます。

西叶神社の勾玉と東叶神社のお守り袋は2つあわせて、一つのお守りにします

西叶神社の勾玉と東叶神社のお守り袋は2つあわせて、一つのお守りにします


同様に、西叶神社の勾玉と東叶神社のお守り袋は、2つあわせて一つのお守りになるということから、恋愛に限らず、仕事・友人・その他諸々の良縁を結んでいただけるといわれるようになったのだそうです。

ちなみに、今回は西叶神社、東叶神社の順でお参りしましたが、とくに決まった順番はなく、近隣には有名な走水(はしりみず)神社もあるので、あわせて巡拝するのもオススメです。

<DATA>
■東叶神社
住所:横須賀市東浦賀2-21-25 (地図)

自家製の天然酵母のパン

さて、お昼になったのでランチタイムにしましょう。訪れたのは、窓の外に海が広がる絶好のロケーションのパン屋さん、「ワンこぱん(One Copain)」。

東叶神社の境内を出て、道路を左手に進むと、「サニーサイドマリーナ ウラガ」の赤い三角屋根が見えますが、お店はその2階にあります。

赤い三角屋根が目印

赤い三角屋根が目印


店名は、「One(一番の)」と「Copain(友達)」を合わせて「一番の友達」というのが元々の意味なのですが、声に出して読むと「ワンこパン」に聞こえるので、お店のロゴにもワンちゃんがあしらわれ、「チョコ ワンちゃん パン」というワンちゃんの顔をかたどったパンも人気商品になっています。

窓の外に海が広がるロケーションと自家製天然酵母のパンが人気

窓の外に海が広がるロケーションと自家製天然酵母のパンが人気


海の見えるロケーションや「チョコ ワンちゃん パン」のかわいらしさもさることながら、こちらのお店の一番の特徴は、油脂と砂糖を生地に一切使っていない、自家製の天然酵母のパンへのこだわり。都内の有名ベーカリーで修行した後にこのお店を開いたオーナーのわんこさんは、

「パン作りには、当たり前のように油脂や砂糖が使われていますが、使わなくても美味しいパンが焼けることが修行する中で分かりました。シンプルでより美味しいパン作りを目指して独立しました」と話します。

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■ワンこぱん(One Copain)
住所:横須賀市東浦賀2-22-2 サニーサイドマリーナ2階
営業時間:10:00~16:00
定休日:月曜日・火曜日

陽の降り注ぐコンサバトリーで英国の雰囲気を

ランチの後には、ゆったりくつろぎたいもの。どこかいいお店は?と探してみると、先ほどの東叶神社の境内から入ることができる、「ティーサロン アカンサス」という素敵なお店があるときき、足を運んで見ることに。

森の木々に包まれるようにたたずむ白いコンサバトリーは、隠れ家のよう

森の木々に包まれるようにたたずむ白いコンサバトリーは、隠れ家のよう


恵仁志坂の石段を登ったところに、ユニオンジャック(英国の国旗)と「営業中」の文字が書かれた小さな札がかかっているのを見つけて歩を進めると、まるで森の木々に包まれるように、白い「コンサバトリー」がたたずんでいました。

コンサバトリーというのは温室・サンルームのこと。オーナーの國松登美さんが20年ほど前に、「英国から輸入できるというのを雑誌で見つけて、あまりの美しさに娘へのプレゼントとしてすぐに注文しました」という思い入れのある建物です。

紅茶をいただきながら、優雅なひとときを

紅茶をいただきながら、優雅なひとときを


最初は友人が集まってパーティーを開くなどしていましたが、娘さんが紅茶のインストラクターの資格を取得したのを機にティーサロンとしてオープン。途中、8年間ほどお休みした時期もありましたが、この小さなティーサロンは常連客も多く、英国式のアフタヌーンティーが自慢だそうです。

店長のボブ君は、ウエルッシュ・コーギー

店長のボブ君は、ウエルッシュ・コーギー


コンサバトリーを囲む周囲の庭に植えられているのは、オールドローズ。原種に近いバラで、現在の一般的なバラの品種に比べて、より強い香りが楽しめます。そして、バラの向こうに広がる陽光に輝く海は、國松さんが大好きだという広島県尾道の瀬戸内海の景色に重なって見えました。

<DATA>
■ティーサロン アカンサス
住所:横須賀市東浦賀2-21-1
営業時間:10:00~17:00
定休日:不定休
※アフタヌーンティーのセットのみ、事前予約が必要

散歩のシメはワインとケーキで

さて、浦賀駅に戻る途中で、もう一軒立ち寄りたいお店があります。

酒屋さんの左端の入口から店内へ

酒屋さんの左端の入口から店内へ


お店の名前は「cafe & wine MIYAMASA」。ワインのお店ときいていたので堅い感じを想像していましたが、店内は思いの外カジュアルな雰囲気。ワインとケーキを中心とするカフェなのだそうです。

オーナーの宮井麻里子さんは都内のケーキ屋さんで働いていましたが、2012年に地元に戻り、親戚の伯父さんが営む酒屋さんの倉庫だった、この場所をカフェに改装しました。

ワインとケーキで乾杯!

ワインとケーキで乾杯!


ワインとケーキというのは、ちょっと不思議な組み合わせに思えますが、酒屋の地下のワインセラーには、世界各国の豊富なワインが貯蔵されており、お店をオープンした頃、ちょうど都内などでは、ワインとスイーツをオシャレにあわせるのが流行りだしていたこともあり、「浦賀でやってみよう」ということで、ワインとケーキのコラボをはじめました。

「昼はランチとワイン、午後はカフェ、夕方以降はワインとおつまみを中心に提供しています。ワインは、伯父と相談しながら、季節に合うものや、なるべく世界各国のものが出せるようにチョイスしています。最近は、ワインを召し上がった後に、ケーキも注文してくださるお客様が増えました」(宮井さん)

地下のワインセラーにはおよそ300本の世界中のワインが!

地下のワインセラーにはおよそ300本の世界中のワインが!


浦賀散歩のシメは、ワインとケーキで決まりですね。

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■cafe & wine MIYAMASA
住所:横須賀市東浦賀1-15-15
営業時間:水曜~土曜11:00~16:00 18:00~21:00/日曜8:00~17:00
定休日:月曜日・火曜日
※隣の酒屋で購入したボトルワインの持ち込みもオーケー(抜栓料が必要)

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