ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

平間壮一、芯の強さを高めたい【気になる新星vol.23】(3ページ目)

抜群の体のキレと、爽やかで優しいオーラで注目される平間壮一さん。この秋冬には『ミュージカル バイオハザード』『ロミオ&ジュリエット』と、2本の話題作に出演します。ミュージカル界期待の星ながら、実は数年前までミュージカルというものを殆ど知らなかった(!)という彼。新作に寄せる思いから、その道程、夢までじっくりと伺いました!*2作品の観劇レポートを掲載しました*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

はにかみ屋の少年が出会い、追いかけ続けた“ダンス”

『RENT』エンジェル役undefined写真提供:東宝演劇部

『RENT』エンジェル役 写真提供:東宝演劇部

――平間さんは北海道のご出身なのですよね。どんな少年だったのですか?

「石狩市の出身です。札幌と感覚的にはほぼ変わらないですね。小学4年の時に、たまたまお姉ちゃんが録画していたダンス番組のビデオを観て、ダンスに出会ったのですが、それ以来ずっと、夢を聞かれると“ダンサー”と答えていました。なりたいという思いが強くて、それより前のことは覚えていないくらい、ダンスばっかりしていましたね。母によると、体験レッスンでダンススクールに行った時から体は動いていたそうで、これはやらせたほうがいいかと思って通わせてくれたそうです。やりたいことを見つけたならそれに集中しなさいという家で、母からも踊りの仕事につきなさいと言われ、“絶対(ダンサーに)なる”と思っていました。

でも札幌だとどうしても、ダンスの流行を知るのが遅いんです。だんだん南の方から上がってくるので、いつも東京の方では観たことないステップをやってるな、知りたいな、と思っていたら、今の事務所に入れることになり、中学2年で上京し、寮に入りました。反抗期と重なっていたこともあって“今だ”と思って出てきたけど、後々、親の有難味が分かりましたね」

――(『Love Chase!!』『HEADS UP!』等に出演している)青柳塁斗さんと一緒に上京されたのだとか?

「僕と塁斗は同い年で、幼馴染。地元のダンススクールで知り合って、一緒に事務所に入って、一緒に飛行機に乗ってきたんです。今もどこかで、お互い負けずにここまで頑張っているからこそ、ふんばっている部分はあると思います。どっちかがやめてしまったりすると、ちょっと冷静になって考えることもあるかな」

――ミュージカルにはいつ頃から触れていたのですか?
『The Love Bugs』

『The Love Bugs』

「北海道ではなかなかミュージカルに関わる機会がなくて、僕は全然観ていませんでした。(岸谷五朗さん作・演出の)地球ゴージャスがミュージカルということも、自分が出演していながら(『星の大地に降る涙』09年)認識していなかったほど、ミュージカルを知りませんでしたね。

その後、12年に『RENT』のオーディションに挑戦したのですが、一言発したらもう帰っていいよと言われて、悔しくて。昨年の公演の前にまたオーディションの話があって、歌も練習して臨んだのだけど、1次審査で帰されてしまって、またか、悔しいなあと思っていたら、エンジェル役でもう一回受けてみませんかと連絡をいただいたんです。ミュージカルってとにかく“歌”だと思っていたけれど、演出家の方が、僕の演技を観てエンジェルはどうかと声を掛けてくれたと聞いて、歌って芝居なんだ、と気が付きました。頑張れば自分も行けるかも、と思って、そこからミュージカルに俄然、興味を抱き始めたんです。
『オーシャンズ11』

『オーシャンズ11』

まだ、何かを掴めてきたという感覚は何一つなくて、必死に頑張るのみです。僕は本来、すごく恥ずかしがり屋で。小さい頃から母親にすらあまり思ったことを言ったり表現することをしない子で、人前でご飯を食べるのも恥ずかしかったし、ましてや歌うなんて考えられなかった。そんな僕がダンスに出会って、これだったら自分が表現できるかもと思って夢中になってやってきて、岸谷五朗さんから「ダンスがうまくなるには絶対芝居をやったほうがいい」と言われて経験を積む中で、ステージに立って喋ったり歌ったりすることへの恥ずかしさが、ここ2,3年でやっと抜けてきたところなんです。

例えば人間関係だと相手次第で思うようにはいかないけれど、表現に関しては、自分を信じて、あきらめないでやっていけば、絶対に裏切られることはない。続けて行けばきっといいことがある、ということを五朗さんのもとで学んだ気がします」

舞台を通して“愛し続けること”を知り、生きやすくなった

『ラディアント・ベイビー』(C)Marino Matsushima

『ラディアント・ベイビー』(C)Marino Matsushima

――『ラディアント・ベイビー』の、主人公キースの親友ツェン役のように、内面の表現が求められるお役も増えてきましたね。若くして世を去らなければならない無念を語り、歌うラスト、印象的でした。

「このお仕事をしていると、どうしても自分主体になるけれど、ツェンにしてもエンジェルにしても、“死ぬ”という体験をさせてもらえる舞台に立つことで、自分はもちろん大事だけど、人に対する愛を教えてもらったと思います。なんだか不思議な感覚でした」

――もともと温かな、愛に溢れた方というイメージがありますが……。

「愛があっても、どこかでそれを失うことを、僕は恐れていたのかもしれませんね。ちっちゃいころは、誰かに心を開きすぎると、いつかいなくなっちゃうんじゃないか、とどこか怖がっている部分がありました。でもたとえ相手がいなくなっても、その先も自分が好きでいればいいんじゃないか、と出演してきた作品から教えてもらった。それで居やすくなった、生きやすくなってきた部分はあります。作品から学んだことは多いですね」

――今後はどんな表現者を目指していらっしゃいますか?

「もっと自信をもって人前で歌うとか、(自分のレベルを)上げていきたいですし、ちょっとでも人の助けになれるように……といったらおかしいかもしれませんが、舞台は直接助けになることはなくても……そこが悔しいところではあるんですけど……、落ち込んだ時に舞台を観て笑えてよかったとか、そういうふうに誰かの助けになれるように、自分の幅をどんどん広げられたら。いろいろなことに挑戦して、人と関わっていきたいです」

*****
舞台から得た“生きる力”を糧に、今度は観客の“助け”になれたらと願い、精進を続ける平間さん。ステージという有機的な場の素晴らしさを体現する彼は、終始気負わず、自然体で話してくれました。エンジェル役を探していた『RENT』の演出家が彼の中に見出したのは、おそらくこの飾らない“優しさ”だったのだろう、と容易に想像された取材。彼が今、この飛躍の時に挑む『ミュージカル バイオハザード』と『ロミオ&ジュリエット』、どちらも見逃せない演目です!
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