日本国内でも毎年死者を出す落雷

雷

時として命を奪うことがある雷。都市部でも油断は禁物です。雷の怖さをしっかりと認識しておきましょう

夏の風物詩の一つでもある雷や雷鳴。しかし毎年人が亡くなる事故も相次ぎますので、旅行先でも町なかでも油断は禁物です。

近年国内で発生した落雷事故について、以下で引用します。特にコンサート会場での落雷死亡事故では、女性側の遺族が主催者に損害賠償を求めたところ棄却され、落雷を予見することの難しさが論じらたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

▼沖縄の海水浴場での落雷事故(朝日新聞デジタルより)
海水浴場に落雷 4人搬送、1人が一時心肺停止 沖縄
2016年7月24日22時30分
24日午後2時50分ごろ、沖縄県糸満市の海水浴場「美々ビーチいとまん」の係員から「雷が落ちてけが人が出ている」と119番通報があった。男性4人がドクターヘリなどで救急搬送され、うち1人が一時心肺停止となった。

糸満署などによると、午後2時45分ごろ、海水浴場に隣接する広場を歩いていた宜野湾市の会社員男性(40)に雷が直撃し、心肺停止となった。数時間後に自発呼吸できるようになったが、意識は回復していない。近くにいた30~50代の男性3人は左手の小指を骨折するなどのけがを負った。(中略)ビーチでは昼過ぎから小雨が降り、落雷の直後から大雨になったという。沖縄気象台は落雷の数分前に沖縄本島全域に雷注意報を出していた。
▼EXILEコンサート会場での落雷事故(朝日新聞デジタルより)
落雷で死亡、遺族の請求棄却 EXILEなど出演の会場
2016年5月16日17時45分
大阪市の長居公園で2012年8月、野外コンサートに向かっていた女性(当時22)が落雷で死亡した事故で、主催した2社に遺族が計約8200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、大阪地裁であり、長谷部幸弥裁判長は「会社側に保護義務はなかった」として訴えを棄却した。

(中略)判決は「野外での落雷回避はもっぱら自己責任で行うもの」と指摘。事故現場が主催者の管理下にはなかったことに加え、会社側は具体的に落雷を予見できなかったと結論づけた。(後略)
   

落雷を受けたときに人体に起こること

万一人間の身体に雷が落ちてしまった場合、「1000分の1秒」というごく短時間に、体内に大量の電気が流れます。数字が大きすぎてイメージしにくいかもしれませんので、先に身近な例を挙げましょう。最も身近な電気の痛みとしては、静電気でピリッと痛みを感じる電圧が約3キロボルト程度です。もっと大きな電圧で、手全体を強打したくらいの痛みを感じる場合は12キロボルトほどと言われています。

これに対して落雷を受けた場合に流れるのは、電圧にして200万~1億ボルト、電流にして1000~20万アンペアという巨大な電気です。心臓や脳が感電、つまりショートしてしまうと、この打撃のために死亡してしまうことがあるのです。
 

国内では致死率70%……年間20人の落雷被害

1994年から2003年の警察白書によれば、日本全体での落雷による被害者は平均して年間20人です。死亡者は年間13.8人とされていますので、つまり落雷被害者の70%は命を失ってしまっているという致死率の高さがわかるかと思います。
 

落雷が心臓に与える影響

上記のような強烈な電気の刺激によって、心臓が停止したり、不整脈が発生して呼吸停止にいたることがあります。心拍は自然に再開することもありますが、再開しなければ当然死に至ります。

ですから万一落雷にあってしまった場合、後述の「BLS(一次救命処置)」が大切なのです。今回の沖縄での事故では、周囲の方々が心肺蘇生をされたのか心拍は再開されたそうですが、現時点ではまだ意識が回復していないと報道されています。

ちなみに脳については電気による外傷のため意識がなくなります。脳の損傷が激しいと昏睡になってしまいます。そのあと意識がもどった場合でも落雷前のことが思い出せないなど、さまざまな障害が残ることがあります。
 

落雷事故が起きやすい場所

ゴルフなどの野外スポーツや作業中に直接落雷を受けるケースや、大木など危険な場所での雨宿り中に落雷を受けて死亡するケースが多く報告されています。また、高いものへの落雷ではなく、今回の沖縄での事故のように海あるいはサッカースタジアムやゴルフ場に落雷した例もあります。

以前は高校野球の試合中に投手に落雷する死亡事故もありました。被雷対策のない建物内では電化製品などを介して感電することもあります。

世界平均では落雷被害者の30%が死亡していますが、日本では70%と極めて高率です。これは日本ではその多くが屋外で危険な木の下などで雨宿りをしていて側撃雷(近くに落雷し電気が伝わって感電すること)にやられており、落雷に直撃された場合と同様の強い感電になっているためと考えられています。

EXILEコンサートでの落雷事故では高い木の下に雨宿りしておられたのが残念な結果につながってしまったようです。
 

落雷事故が起きて縛った場合の応急処置・治療法

落雷は一瞬の出来事です。落雷直後も被害者の体はすでに電気を帯びていることはないので、直ちに安全に応急処置をすることができます。

もし意識がなく心肺が止まっているような場合は、ただちに心肺蘇生(CPR)を開始します。もしAEDがあれば使用し、救急隊を呼んでください。このためにも一度はBLSなどの研修を受けておかれることをお勧めします。多くの人が正しい知識を身につけておくことで、お互いに命拾いする確率を上げることができます。

心拍や呼吸が再開したら、やけどやその他の治療へと進みます。これらは主に病院での治療になるでしょう。
 

落雷リスク回避ー雷から身を守るために覚えておくべきこと

落雷観測技術は進歩しており、2010年から気象庁による「雷ナウキャスト」という情報提供が開始されています。全国を1000m四方、60分先まで10分刻みで局地落雷予測した情報が確認できるので、特に野外でのレジャーなどの活動予定があるときは、天候が不安定な時には、これらのツールを活用することも大切です。落雷はどこでも起こりうることなので、最大の自衛手段は、「雷注意報が出ている時には、屋外に出ない」。これがベストです。

もしも雷が聞こえたらすでに危険な状態になっているため、大きな建物や、クルマなどの完全に閉鎖された金属製の乗り物などに避難すると安全です。展望台のように開放部がある構造の避難所は安全とはいえません。雷鳴や稲妻が消えても30分間は野外活動を再開しないのが賢明です。

野外イベントの場合は天気予報を聞き、特に主催者には野外活動を中止するかどうか決断することも求められるでしょうが、参加者も自分の身を守るため上記を念頭に置くことが大切です。

屋内でも油断は禁物です。水道配管、電気配線、有線電話、パソコンなどケーブルでつながったものを避け、窓やドアから離れるなどの対策を取りましょう。
 

落雷についての事故・対策のまとめ

今回は2つの落雷事故報道から、個々人が考えるべき落雷対策をご紹介しました。

落雷に関する不幸な事故を避けることは、平素の心がけや準備でかなり可能なのではないかと思います。そしてBLSつまり基本的な蘇生救命のトレーニングを是非一度受けておかれることをお勧めします。愛する人が目の前で死んでしまうのを食い止められる可能性がある、となれば、その意義は十分かと思います。

落雷に関しては、「カミナリに関する誤った常識に注意」記事にも危険回避方法が記載されています。より具体的な情報を知りたい方はご覧ください。

▼参考サイト
心臓外科手術情報WEBのお知らせのコーナー:BLS(一次救命処置)のお勧め  その重要性とポイントをまとめてあります

【関連記事】
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項