長期で見れば高いインカム(利子)収入が期待できる
ハイイールド債券投資の妙味とは
ハイイールド債券、別名「高利回り社債」とも呼ばれる企業の債券を一言で言えば、信用力が劣る分、高い利回りを期待することができます。通常、投資信託経由で投資することになりますが、長期投資という観点からは、実は投資妙味が高い債券であることがわかります。
注目の投資信託のポートフォリオ・マネージャーにインタビュー
今回はフィデリティ投信のハイイールド債券のポートフォリオ・マネジャー、ハーリー・ランク氏に、ハイイールド社債に投資する魅力を聞いてみました。ランク氏が運用する投資信託は、1986年から2015年までの間、米ドルベースでの年間運用成績がマイナスになったのはわずか6回(年)。しかも、2年連続でマイナスになったことは1度も無いのです。「ハイイールド債券は短期では乱高下が激しい時期もあるが、長期で見れば高いインカム(利子)収入を基本に優れたリスク・リターン特性を兼ね備えた資産クラスです。長期投資では私たちの期待以上の収益を上げ続けているのです。足元で、未だ2016年年初からの原油安を背景としたファンダメンタルズを無視した投資家のリスク回避による売却の影響が残るものの、米国経済の良好さを考えれば、むしろ通常の評価に戻るだけでも相応の収益が期待できる」と語ります。
次の原油安でハイイールド債券が売られたときがチャンス
インタビューさせていただいたハーリー・ランク氏
「残念ながら投資家は企業の悪い面ばかりを見たために、ファンダメンタルズから大きく乖離するほどハイイールド債券を売り込んでしまったようです。このため、この先再び原油安が来た場合、全ての投資家が合理的な判断をせずに、一時的にハイイールド債券が売られる局面があったとすれば、そこは投資妙味の高いハイイールド債券へ投資するチャンスですよ」とランク氏は考えています。
米国の政策金利の引き上げも世界のマーケットを震撼させましたが、政策金利の引き上げはハイイールド債券市場にとってフォローの風となるとみています。
「政策金利を引き上げるということは、つまり米国経済が良好な証です。ハイイールド債券にとってみれば、債務不履行(デフォルト)が減り、また財務内容の健全化などにより格付けが引き上げられることが多くなるという経験則があります。仮に政策金利が引き上げられなかったとしても、それば米国経済が悪いからではなく、グローバル経済が悪いことに端を発しているということです」と解説します、米国の政策金利の有無は、米国国内よりもグローバル経済の動向がカギを握っていると言えそうです。
「イエレンFRB議長は政策金利の引き上げにより、グローバル経済を混乱させないことを念頭に政策遂行を考えているからだ」とランク氏は続けます。
米国の政策金利の引き上げは年内1回とハンク氏は予測しており、引き上げたほうがよいのか、引き上げない方がよいのか質問したところ、「引き上げたほうがよい」と答えました。
「政策金利を引き上げることにより、今後も米国経済、あるいはグローバル経済が混迷の度合いを深めた時などに、今度は政策金利を引き下げる余地につながるからです」
運用スタイルの基本は償還期限までホールド
運用しているフィデリティ・USハイ・イールド・ファンドは、2009年以降6年連続でモーニングスターアワード「最優秀ファンド賞」、「優秀ファンド賞」を受賞していますが、その運用スタイルを聞いてみました。基本は満期償還時まで保有するホールドの戦略ベースに、売却も交え運用を行っているようです。ただ、ハイイールド債券の売買コストは高いため、売買の頻度を高くするとパフォーマンスを下げてしまうそうです。このため、長期での保有コストを抑えるために売買は積極的に行わないとのこと。ただし、ファンダメンタルズの改善などにより割高になった銘柄は売却を行うようです。
長期で投資するなら妙味は高い
最後に、ランク氏にハイイールド債券ファンドに投資する場合の注意点などをうかがってみました。「昨年のチャイナショック以降、ハイイールド債券市場はボラティリティが大きくなったいますが、そのほとんどがファンダメンタルズが悪化したものではなく、投資家のセンチメントの悪化によるもので過度に悲観する必要はないでしょう。
今後も米国の大統領選を始めとする投資家のセンチメントに大きな影響を与えるイベントなどがあるため、短期的にボラティリティが大きくなる場面はありますが、長期で見ればむしろ良好なハイイールド債券を割安な水準で投資するチャンスとなるはず。長期投資という観点に立てば、今後も期待を裏切らないパフォーマンスが期待できるのがハイイールド債券です」
投資家のセンチメントの影響が大きいため、泰然自若の心境でハイイールド債券ファンドに長期投資を行うことが大きな果実を得る方法と言えるでしょう。今後に期待したい資産クラスと言えそうです。
※インタビューは平成28年7月11日に行いました。