意外と知らない「ドラマの撮影現場」の裏側
一見、空港のように見えますが実は……
空港と“似ているロケ地”で撮影されるドラマのシーン
ホテルや劇場でのシーンは、実際にホテルや劇場を使って撮影されることが多く、法廷のシーンは一からセットをつくって撮影されることが多いです。一方、警察署や空港などは、それらしいところを探して撮影することが多いと言えます。たとえば、地方の警察署はローカルな雰囲気のある建物を利用し、架空の「〇〇警察署」の看板を作って設置。パトカーを止めたり、出入口に警官役を配置したりして警察署らしくします。また、正面玄関、受付、食堂、会議室など警察署の建物内でのシーンは、それぞれ全く別の建物で撮影していることも少なくありません。
空港も実際の空港で撮影されることは、まずありません。 1階から5階までを吹き抜けるアトリウム、長いエスカレーター、高い天井、ベンチの雰囲気など空港の雰囲気が出ていますね。撮影では、ベンチに座っている人、通行人、空港の職員などはすべてエキストラが演じています。
“隠される”撮影現場
通行シーンもドラマの設定と同じ住所で撮影されているかといえば、そんなことはありません。坂道、線路、歩道橋……物語を表現してくれる空間を探し出してシーンごとに場所を変えて撮影していることが多々あります。そのため現場では、たとえば電柱の住所表記が映り込まないようにするなど、整合性のないものを隠すことに細心の注意を払っています。また、撮影機材や配線、ガムテープはもちろん、一般の人たちも映らないようにするなどカメラの外では結構慌ただしいことに。視覚ばかりでなく、余計な音を拾わないように周囲の環境も常にチェック。そのほか車道や歩道で交通整理をするスタッフもいて、そうした影の存在がドラマを支えています。
刑事ドラマなどで、政治家が逮捕されたり、主人公が指名手配になったりして、行き交う人たちサイネージを見ながらザワザワする場面を見たことがあると思います。これは、街角のサイネージに、あとから架空のニュースのシーンを入れ込んでつくられています。つまり、撮影時は、まったく関係ない画面を見て、驚く演技をしているのです。このように、隠すだけではなく加工することでドラマの世界を作り上げていくこともあります。
現場を支えるエキストラ
エキストラは、衣装を何着も用意して現場に臨みます。ほかに同じような服の人がいれば着替えることになります。一日分のシーンを数日間にわたって撮影する場合は、ずっと、同じ服が必要になるので洗濯も大変! また、レストランの利用客を演じて横断歩道の通行人も演じるなど、1人が何役かを担当することがあります。そういった場合に備えて、演じ分けるためにメガネや帽子など小道具を用意して撮影に臨みます。心情を映すアイコンとなっている風景
ロケ地は登場人物の心情を映す役割をすることも。たとえば、仕事でうまくいかずに落ち込む登場人物が夜の街を歩くシーンでは、背景に東京タワーが映ることがよくあります。 東京タワーの赤い灯りに、やさしさや希望を感じるのでしょう。ドラマをいくつか見比べて、登場人物の心情をそっとうまく表現する共通の風景を発見するのも楽しいかもしれません。ロケ地に興味を持った方は、ドラマのロケ地を訪れてはいかがでしょうか。「愛知県フィルムコミッション協議会」など、撮影現場を誘致している自治体ではロケ地を紹介するサイトをつくっているところも。ロケ地情報のほか、撮影可能な場所の紹介、地元エキストラの募集などが載っていてなかなか楽しいですよ。
たくさんの人が集まり、撮影が終わると、いつの間にか、サッと解散している現場。私たちが知らない間に、名シーンがすぐ近くで撮影されているかもしれない。そう思うと、ワクワクしてきますね。
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