海外で据え置きハード市場を取り合うPS4とXbox One
海外では、まだまだ据え置きハードが元気です
日本ではスマートフォンがメインのゲーム市場となり、コンシューマーゲーム、とりわけ据え置きハードは不調ですから、ピンと来ない人もいるかもしれませんが、海外ではまだまだコンシューマーハードは元気ですし、主流はむしろ据え置きハードです。
その中でもPS4は絶好調でグングン普及台数を伸ばして、2016年5月22日時点で、累計販売台数4,000万台突破を発表、歴代PlayStation史上でも最速のスピードで普及を続けています。その半分ほどの普及台数でXbox Oneが追いかけていて、さらに遅れてWii Uという形になっています。
というわけで、SIEとMSの発表に大きな注目が集まったE3ですが、その内容は、ゲームプラットフォームのこれからを考える手掛かりになる、とても興味深いものとなりました。
ゲーム、ゲーム、ゲームのPS4
大人気のPS4。PSVR対応タイトルも含め、多くの新作タイトルの紹介に終始しました
PS4には、開発コード「Neo」と呼ばれる新型PS4のうわさがあり、一時期はE3での発表もささやかれましたが、SIEは、PS4 Neoの存在を認めながらも、E3での発表を否定しました。そして実際、新型機の話も全くせずに、タイトルの紹介に集中していました。
唯一ゲームタイトル以外の大きな話題というと、PS4用バーチャルリアリティシステムのPS VRがありますが、これも、PS VRで遊べるゲームをたっぷり紹介ということで、結局のところ、PS4で遊べるゲームの話に終始していました。
このSIEのすがすがしいまでの姿勢は、ゲームの魅力でPS4の販売を伸ばしていくという確固たる意志を感じます。一方MSは、SIEとはちょっと違う方向の提案をしていました。
Xbox Oneは選択肢の1つでしかないMS
もちろん、新作ソフトの発表もありましたが、サービスやハードの紹介もあったXbox One
MSの発表で注目したいのは「Xbox Play Anywhere」という、新しいサービスです。これは、対応タイトルをダウンロード購入すると、Xbox One版でも、PC版(WIndows10版)でも、ゲームをダウンロードして遊べるようになる、というサービスです。
しかも、実績やセーブデータなども共有されるということで、本当にどちらでもプレイできる環境を用意しようとしています。さらには「Play cross-platform」という、Xbox OneとWindows10のユーザーが一緒に遊べるマルチプレイサービスも発表しています。
新ハードを2つも発表したとだけ聞くと、ハードをとにかく売ろうとしているように思えるかもしれませんが、同時に「Play cross-platform」を提案するとなると、話はちょっと変わってきます。MSは、Xbox Oneでも、PCでも、ハードはなんでもよくて、とにかく自分たちのプラットフォームでゲームをする際の選択肢を増やそうとしているように感じられます。
小さくなったXbox One Sでもいいし、4Kのゲームに対応した高性能型も予定しているし、PCでも同じゲーム体験を共有できますよ、そういうプレゼンテーションでした。
ハードにこだわるSIEと、プラットフォームという概念を広げるMS
ゲーム専用機としての魅力を打ち出すSIEと、プラットフォームの枠組み自体を変化させて勝負をしようといしているMS
一方、新ハードを2つも発表したMSは逆に、Xbox Oneというハードにこだわってはいませんでした。Xbox Play Anywhereは、Xbox OneユーザーがPCへ移行することを容易にしますし、一方で「Project Scorpio」が発売された時にも、PCユーザーが移動しやすくなります。ゲームユーザーがハードを自由に乗り換えをしやすくしつつ、物理的なハードウェアを超えた大きなプラットフォームでの囲い込みをしていく作戦です。
ハードウェアのSIEとソフトウェアのMSという見方もできますし、圧倒的勢いで普及が進むPS4と、大きく後れをとったXbox Oneで、次の一手が大きく違ったというようにも取れます。
前を走るSIEと追うMS
SIEとMSの違いが、ゲーム業界にどんな影響を及ぼしていくのか、興味深い発表となりました(イラスト 橋本モチチ)
しかし、今回のE3ではPS Nowに関する発表はなく、PS4のタイトル充実アピールに注力していました。もしかしたら、今後、ストリーミングゲームなどの技術革新によって、プラットフォームの垣根がなくなっていくというストーリーをSIEが提案するタイミングもあるかもしれませんが、少なくとも2016年はPS4の販売に力を入れていく、という判断だと思われます。
今回発表を見送った新型のPS4 Neoについて、SIEの代表取締役社長アンドリュー・ハウス氏は、PS4をよりパワーアップさせたバージョンを用意することについて、より高画質で滑らかな映像を求めるハイエンドユーザーが、PCに移行するのを防ぐ意味があることを、インタビューで答えています。今普及しているPS4のプラットフォームをより盤石にするための、バージョンアップ版というわけです。
一方で、MSは多彩にハードを用意しつつも、Windowsというプラットフォームを既に持っていますので、これを活用して、専用ゲームハードのシェア争いという土俵を崩して、より広い枠組みでユーザーを囲い込む形に舵を切ってきました。
横綱相撲のSIEと、プラットフォームの枠組みから変えていきたいMS、E3で露わになった2社の戦略は、ゲーム業界の構図や未来を示唆する、とても興味深いものとなっているように思います。
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