2016年6月に九州で降り続いた大雨では、21日未明に熊本県甲佐町で1時間に150.0ミリの猛烈な雨が降りました。気象庁の記録によれば観測史上4位となり、150ミリに達したのは今世紀初めてのことのようです。
ちなみに観測史上1位は千葉県(香取:1999年10月)と長崎県(長浦岳:1982年7月)で観測された153ミリですから、ほぼそれらに匹敵するくらいの激しい雨だったのでしょう。
また、最大10分間降水量は新潟県(室谷)で2011年7月に観測した50.0ミリ、一日降水量は高知県(魚梁瀬)で同じく2011年7月に観測した851.5ミリとなっています。
さすがに150ミリもの雨は稀だとしても、1時間に100ミリを超える雨は毎年各地で頻発し、その発生回数も年々増える傾向にあるようです。「ゲリラ豪雨」「局地的豪雨」などとともに「線状降水帯」という言葉もよく聞かれるようになりました。
国内のどこでもこのような大雨になる可能性があり、山沿いであれば土砂災害、川沿いであれば河川の氾濫、そして都市部であれば下水道が溢れることなどによる「都市型水害」に気をつけなければなりません。
古い時期に整備された都市部の下水道などは、1時間に50ミリ程度の雨しか想定しておらず、近年に進められている改良工事でも80ミリ程度にしか対応できないケースが多いようです。
そのため、猛烈な雨が少し続けば道路が冠水したり、住宅の半地下車庫に雨水が流れ込んだりします。あまり新聞やテレビのニュースで報道されることはありませんが、半地下車庫の浸水や水没事故は決して珍しくありません。
もちろん同じエリアのなかにも水害を受けやすい敷地と受けにくい敷地があるわけですが、水害リスクの高い敷地にもかかわらず、その一部を掘り下げて半地下車庫を造った一戸建て住宅やマンションも多いのです。
都市型水害の危険性があっても、地価が高く敷地が狭い大都市の住宅などでは、半地下構造の車庫でも仕方がないという一面もありそうですが、リスクの内容をほとんど考慮せずに造られている場合もあるでしょう。
「そのような物件は買わなければいい」と単純に切り捨てるわけにもいかないのですが、半地下車庫物件の購入を検討するときには、水害リスクの確認とともに、車庫部分の浸水対策や構造、排水処理能力などについて十分なチェックを心掛けたいものです。
>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX
(この記事は2007年8月公開の「不動産百考 vol.14」をもとに再構成したものです)
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