身近な日本の海にも、危険性を持った生物がいろいろ。いざというときの対処法をしっかりと理解して、安全に海を楽しみましょう。
トゲに毒を持つ海の危険生物たち
ここに紹介するのはヒレなどに毒のトゲを持つ生物たち。この毒のトゲは、人を襲うためのものではなく、外敵から身を守るためのもの。こちらから手を出さなければ襲われることはまずありません。・ミノカサゴ ヒレを広げて海中を漂う姿が、華麗な花のようで美しく、ダイバーに人気の魚。あまりの可憐さについ触りたくなってしまいますが、「きれいな花にはトゲがある」。ヒレの先端に毒針がついているので、絶対に触らないこと。
【症状】
刺されると激痛があり、患部が赤く腫れ上がって発熱。時間とともに毒が全身に広がり、関節痛や心障害などが起こります。
【対処法】
目に見えるトゲは取り除き、傷口を真水で洗います。刺されたところを40~45度のお湯につけ、病院で手当てを受けましょう。
・ガンガゼ 20cm以上もの長いトゲを持つウニの仲間。夜行性のため、昼間は岩の隙間などに隠れていることが多いので、むやみに岩の隙間や下に手を突っ込まないこと。水中で足や手をつく場所に気をつけましょう。
【症状】
トゲの内部に毒があります。鋭くてもろいので、刺さるとトゲが体内に残り、激痛が走ります。刺された後の症状は人によって異なります。
【対処法】
トゲ抜きなどで、ていねいにトゲを抜き、痛みがなくなるまで40~45度のお湯につけます。トゲが抜けない場合は病院へ。
・エイの仲間 独特の姿形で人気の生物ですが、エイの仲間には尾の付け根に強力な毒針を持ったものもいます。エイが自ら襲ってくることはまずありませんが、砂地に隠れていることが多く、気がつかずにうっかり触ってしまうこともあるので注意しましょう。
【症状】
刺し傷が深く、毒により激痛が走ります。ショック症状が起きたり、患部が壊死することも。その他、下痢、発熱、失神、不整脈などの症状があります。
【対処法】
海から出て患部から毒を絞りだし、40~45度のお湯につけたら、すぐに病院へ。
・ゴンズイ 黒地に黄色いラインが特徴的な魚。幼魚の頃は数十尾の群れで行動し「ゴンズイ玉」と呼ばれます。背ビレと胸ビレに毒のトゲがあるので注意。水中で刺されることはほとんどありませんが、釣りの際に刺されたという話をよく聞きます。
【症状】
刺されると激痛が走ります。患部が赤く腫れ上がり、水ぶくれのようになります。
【対処法】
患部を真水で洗い、傷口を絞って毒を出します。40~45度のお湯につければ毒は分解されますが、どうしても痛みが激しい場合は、病院で診てもらうことがおすすめです。
クラゲやイソギンチャクの仲間たち
サンゴやクラゲの仲間は、触手に毒を持っており、痛みやかゆみを引き起こします。中には強力な毒を持ったものもいるので注意しましょう。⇒クラゲについては「知っておきたいクラゲの対処法」で詳しく解説していますので、そちらもご覧ください。
・ガヤの仲間 日本各地に生息しているため、ダイビング中などにもよく見かけます。一見すると植物のようですが、小さなヒドラ虫が並ぶ群体で、この小さな個体すべてが毒を持っています。岩などを不用意に触ると刺されるので注意しましょう。
【症状】
刺されるとピリッとした痛みが走り、その後ミミズ腫れのように赤く腫れます。場合によってはかゆみが数日以上残ることも。
【対処法】
患部を海水でよく洗い、アルコールやアンモニア水などで消毒します。水で冷やすと痛みやかゆみが緩和されます。
・スナイソギンチャク 直径20cmほどで、太い触手が特徴的なイソギンチャクの仲間。色彩変異がとても豊富で、花のように美しい個体もあります。カクレエビなどが共生しており、水中写真の被写体としても人気ですが、触手に毒を持っているので、決して触らないこと。
【症状】
電気が流れたような痛みが走り、痛かゆい状態が続きます。毒は強いですが、体内には少量しか入らないため、大事には至りません。
【対処法】
海水で患部を洗い流し、痛みがある場合は冷水で冷やします。酢をかけるのはNG。痛みが数日経っても消えない場合は病院へ。
・アナサンゴモドキ
一見するとイシサンゴの仲間のように見えますが、ガヤ類と同じくヒドラ虫の仲間。ごく浅いところから水深30mほどのところまで幅広く生息し、板状の群体を作ります。肌を露出しがちなスノーケリングの際などにも注意が必要です。
【症状】
触るとピリッと電気が流れたような痛みがあり、かゆみが残ります。英名で「ファイヤーコーラル」と呼ばれるように、軽い火傷のような症状が特徴的です。
【対処法】
海水で患部を洗い流し、痛みがある場合は患部を冷やします。痛みがひどい場合は病院へ。
・カツオノエボシ
南の海で大発生し、初夏から初秋にかけて黒潮に乗って日本近海にもやってきます。「電気クラゲ」と呼ばれることも。触手は10mを超すこともあり、強力な毒を持っているので要注意。死んでも毒は強力なので、絶対に触らないこと。
【症状】
触手には小さなトゲがあり、刺されたところはミミズ腫れのようになります。頭痛、吐き気、呼吸困難のほか、死に至ることも。
【対処法】
絶対にこすらず、海水で洗い流します。酢をかけるのは、症状が拡大する可能性があるのでNG。患部を温熱湿布で温めるなどして、病院へ急ぎましょう。
強力な毒を持つ海の危険生物たち
これらの生物には、海で見かけても絶対に触らないようにしましょう。・ヒョウモンダコ
大きさは10cm程度。興奮すると体に現れる青い斑紋がとてもきれいなタコですが、フグと同じテトロドトキシンという神経毒を持っています。鋭いクチバシで噛まれるときに、この毒を注入されるので、絶対に触ろうとしないこと。
【症状】
噛まれると5分くらいで患部がマヒし、毒が全身に広がるとともに、けいれんや呼吸困難、意識不明、心臓停止などに陥ります。
【対処法】
すぐに海から出て救急車を呼ぶこと。血を絞り出して、流水で洗い、噛まれたところの心臓寄りの部分をヒモで縛ります。
・ウミヘビの仲間 海には、魚類のウミヘビと爬虫類のウミヘビの2種類がいますが、危険性があるのは爬虫類のほう。コブラ科に属し、ハブよりも強力な毒を持ったものもいます。ただし、こちらから何もしなければ、襲ってくることはないので、見かけても慌てないこと。
【症状】
噛まれて傷口から毒が入ると、呼吸のときに使う筋肉がマヒし、呼吸困難に。ひどい場合には死に至ることもあります。
【対処法】
すぐに海から出て救急車を呼ぶこと。噛まれた患部から血を絞り出し、アルコールで消毒し、傷口の心臓寄りをヒモで縛ります。
・イモガイの仲間
貝殻のきれいなものが多いのですが、小魚などのエサをとるため、矢のような形の鋭い歯舌を持っており、それに猛毒が含まれています。刺されると人間でも死に至ることが。特にアンボイナという貝は強力な毒を持っているので注意しましょう。
【症状】
刺されても痛みはありませんが、数分後に神経毒により意識がなくなり、全身マヒ、呼吸マヒなどの症状が現れます。
【対処法】
患者は刺された自覚がないので、意識不明になるまで気がつかないことが多いようです。異変に気づいたら、周りの人が海から上げ、救急車を呼びましょう。
・オニダルマオコゼ
サンゴ礁域や岩礁域にすむ魚で、周囲に擬態しているため、見つけるのがとても難しい生き物です。そのため、誤って踏みつけてしまうことが多いのですが、背ビレに猛毒を持っているので要注意。浅瀬にもいるので、ハダシの場合は足をつく場所に注意しましょう。
【症状】
刺されると激痛が走り、患部が腫れて紫色になります。症状は吐き気や呼吸困難、ひどいときには意識障害を引き起こすことも。
【対処法】
すぐに海から上がって、傷口を真水で洗います。その後、患部を40~45度のお湯につけ、急いで病院へ行きましょう。
海の中の生物には触れない、攻撃しない、邪魔をしない
海の生物によるトラブルのほとんどは、人間の不注意によるもの。海の生物のほうから襲ってくることはほとんどなく、私たちが不用意にさわってしまったり、近づき過ぎてしまうことが原因となっています。「危険」というイメージの強いサメでも、こちらから追いかけたり脅かしたりしなければ、襲ってくることはまずありません(⇒「危険な生き物? サメの本当の姿を知ろう」)。また、“なわばり”を持つ生物の場合、その中に人間が入ってくると攻撃してくることがあるため、「海の生物に攻撃された」と感じる人もいるようですが、海の中は彼らのルールがあります。私たちはその世界にお邪魔しているだけなので、彼らに迷惑をかけないように楽しむことを心がけましょう。【関連記事】