海中でも砂浜でもクラゲに注意! 強い毒を持つ刺すクラゲも
夏といえば家族みんなで海水浴! 万が一のリスクに備えておくと安心です
クラゲには刺すクラゲと刺さないクラゲがいますが、危険なのはもちろん刺すクラゲです。刺すクラゲは触手に「刺胞」をもち、ここから外敵に向かって毒針を発射します。クラゲの刺胞は死んだ後でも機能するので、砂浜に打ち上げられた死骸でも安心はできません。珍しいからと触りたがる子どもは多いでしょうが、絶対に触らせないようにしましょう。
クラゲは日本沿岸に200種類ほどいるといわれています。刺すクラゲでいちばんポピュラーなのが「ミズクラゲ」ですが、毒性が弱いので、刺されても痛みはあまりありません。
しかし、刺すクラゲのなかには強い毒性をもつ、危険性の高いものもいます。たとえば「アンドンクラゲ」は、刺されると電気ショックのような強い痛みがあるため「電気クラゲ」とも呼ばれます。刺された患部はミミズ腫れになり、数週間痛みが続くことがあります。「アカクラゲ」は2mもの長い触手が40~56本もあり、強い毒性をもっています。「カツオノエボシ」も毒性が強く、刺されるとアナフィラキシーショックを引き起こすことがあり、死亡例も確認されています。とくに危険性が高いのが、主に沖縄や奄美に生息する「ハブクラゲ」です。刺されると強烈な激痛が走り、重症になると呼吸困難や心停止になることもあります。
クラゲに刺されたときの対処法・応急手当法
もしも子どもがクラゲに刺されたら、絶対に患部を素手で触ってはいけません。患部に触手が残っていることがあり、触れた手まで刺される可能性があるからです。なお、昔から、「クラゲに刺されたら酢や尿で洗い流せ」といわれますが、尿やアルコール、酢は刺胞を刺激して、毒針の発射を促進させるので逆効果です。ただし、ハブクラゲだけは酢が有効とされています。対処法としては、まず、決して患部をこすってはいけません。ゴム手袋を着け、ピンセットなどで患部から触手を取り除き、海水で静かに洗い流します。水道水は刺胞を刺激するので使わないこと。その後は、市販の消毒薬で患部を消毒し、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。
クラゲだけではない猛毒を持つ小さなタコや貝も
引き潮でできた小さな潮だまりには、さまざまな海の生き物が棲んでいます。こうした場所は、子どもたちの格好の遊び場ですが、やはり危険な生物は潜んでいます。たとえば、ウニの仲間の「ガンガゼ」。長さが30cmもあるトゲには毒があり、刺さると強い痛みを感じます。トゲは一度刺さると抜けにくいので、爪で強く押し出すか、患部を切開して取り出す必要があります。近年、日本沿岸に生息域を広げている「ヒョウモンダコ」も、危険な海の生物です。体長10cmほどの小さいタコですが、その唾液にはフグ毒と同じテトロドトキシンが含まれており、解毒薬がありません。この唾液が人の体内に入ると呼吸困難に至る麻痺が起こり、心停止を引き起こします。ヒョウモンダコの被害にあったときは、口で毒の吸引をするのは禁物です。心臓マッサージを行いながら、すぐに病院に搬送する必要があります。
砂浜で見つけたきれいな貝にも、気をつけなければなりません。巻貝の一種である「イモガイ」の仲間は毒をもっているものが多く、なかでも「アンボイナ」は、30人分の致死量に相当する神経毒をもっています。刺されると血圧が低下して全身が麻痺し、死に至る危険性があります。刺されたらすぐに病院に搬送しなくてはなりませんが、アンボイナの毒には血清がなく、治療は生命維持を行いながら自然に毒が抜けるのを待つしかありません。
海や磯を楽しむために……クラゲなどに刺されない工夫を
海のレジャーでは、子どもたちも軽装になりがちですが、危険な生物対策として、服装にも注意を払いたいものです。砂浜ではビーチサンダルでも、磯遊びのときは濡れてもよい運動靴か、靴底がしっかりしたマリンシューズに履き替えることをおすすめします。これは、滑りやすい岩場を安全に移動するためと、危険な生き物をうっかり踏んだときのためです。また生き物を素手で触らないように、軍手やマリングローブなどを用意しましょう。上半身は、薄手で伸縮性のいいラッシュガードなら、強い日差しから肌を守り、さらにクラゲ対策にも効果が期待できます。海水浴でも磯遊びでも、素肌の露出を少なくすることが、危険な生物へのもっとも有効な対策となります。事前に知識と装備を備えることで、海に潜む危険な生物から子どもたちを守ってください。