スキューバダイビングは、事故の原因と対処法を理解して楽しもう
必要な知識・スキルをしっかりと身につけて、安全にダイビングを楽しみましょう!
<目次>
スキューバダイビングの事故はなぜ起こる?
前述の海上保安庁の資料を見ると、ダイビング事故の原因で目立つのが、「知識・技能不足」と「ダイバーの不注意」によるもの。浮力コントロールがきちんと取れなかったり、口から外れたレギュレーターのリカバリーができなかったり。あるいは、体調や優れなかったり、海況が良くないのに無理に潜ってしまったり。どれもCカード(ライセンス)取得講習で知識とスキルをきちんと身につけ、確実に実践できれば、大きな事故にはつながらなかったはずです。それが事故になってしまうのは、慌ててパニックになってしまったり、きちんとした予防・対処策を実施できていないことが考えられます。講習で学ぶ知識・スキルは、ダイビングを安全に楽しむうえで最低限必要なものばかりなので、自分で「できた!」と自信を持って言えるようになるまで、時間をかけてしっかりと習得しておくことがおすすめです。なお、最近では中高年でダイビングを楽しむ人も増えてきていますが、どうしても体のいろいろな箇所にトラブルが発生しやすいお年頃。陸上で発症してもすぐに対処すれば問題ないようなものも、水中という特別な環境では対処が遅れたり、陸上よりも重い症状が出るなどして、大きなトラブルにつながる可能性も。年齢に応じた体調管理を心がけ、決して無理をしないこと。特に持病がある人は、ダイビングを始める前に医師の診断を受け、問題がないことを確認しましょう。
ダイビング中の事故1:エア切れ
◆ダイビング中にエアがなくなった!バディからオクトパス(予備の空気源)をもらう手順もしっかり確認しておきましょう
ダイビング中の事故2:パニック
◆水中で急に不安になった!水底の見えないドロップオフを泳いでいるときなど、ダイビング中に突然不安を感じることがあります。これはパニックの初期症状。まずは動きを止めて大きく深呼吸をし、落ち着くことを心がけましょう。海底や棚の壁、それらがない場合はバディやガイドの腕につかまって静止するのが◎。大きく吸って大きく吐くのを何度か繰り返し、落ち着いてきたら、再び泳ぎ出します。まだ不安が残っている場合はダイビングを中止しましょう。
ダイビング中の事故3:水中で迷子
◆ガイドやバディとはぐれた!海の透明度が悪かったり、水中撮影や生物の観察に夢中になりすぎて、ふと気がつくと「ガイドやバディの姿が見えない」というのはよく聞く話。はぐれないように常にガイドやバディの位置を確認しておくことが大切ですが、万が一はぐれてしまったときは「まずはその場で周囲を一分間探してみて、見つからなければ水面に浮上」という基本を実践すること。ずっと水中で探し回るのは、エアを無駄に使ってしまい、事故につながることもあります。ダイビング前にバディ同士で、はぐれてしまったときの手順を打ち合わせしておきましょう。
ダイビング中の事故4:器材のトラブル
◆使っていた器材が壊れた!器材のトラブルの対処法は、Cカード取得講習でしっかりと学ぶことができます
・マスク(水が入った、レンズが曇った、ストラップが切れたなど)
・フィン(ストラップが切れたなど)
・レギュレーター(口から外れた、エアが出なくなった、エアが出っ放しになったなど)
・BCD(エアが抜けない、エアが漏れる、タンクが外れたなど)
・ウエイト(水中で外れたなど)
そのほとんどが、日頃からきちんと器材をメンテナンスし、ダイビング前にチェック&適切なセッティングを行ない、正しい使い方をすれば防げるもの。また、万が一トラブルが発生しても、Cカード取得講習で習得した知識・スキルを使えば難なく対処できるはずです。慌てずに落ち着いて対処することがポイントです。
ダイビング中の事故5:漂流
♦浮上したらボートが見えない!ドリフトダイビングの場合、潮の流れによっては思いも寄らない場所まで流されてしまうことも。浮上してすぐにボートが見えない場合は、水面でグループでまとまり、ボートを待つのが基本。シグナルフロートを上げるなどすると、ボートから見つけられやすくなります。 万が一、ボートに見つけてもらえず漂流してしまった場合は、不安になりがちですが、グループで声をかけ合いながら元気づけ、しっかりと浮力を確保すること。夜間の捜索にはフラッシュライトやカメラのストロボなども役立ちます。
⇒「ドリフトダイビング」とは?
ダイビング中の事故6:ダウンカレント/アップカレント
◆潮の流れに巻き込まれた!ダウンカレントとは、浅いところから深いところへの流れ。強い流れに巻き込まれると、どんどん深場に引き込まれていってしまいます。まずはBCDに空気を入れ、リーフや岩礁に近づくこと。そこにたどり着いても流れが強いようなら、ロッククライミングの要領で岩場を登ります。途中で体がフワッと浮くような感覚があれば、ダウンカレントから離れた証拠。BCDから余分な空気を抜いて、ダイビングを続けましょう。
一方のアップカレントは、ダウンカレントとは逆に、深いところから水面へ向かっての流れ。これに巻き込まれると、急浮上してしまう危険があるので、やはり注意が必要です。アップカレントにつかまってしまったら、BCDの空気を完全に抜き、吐き気味の呼吸にして、体が浮上するのを防ぐこと。水底でつかまる場所を探し、流れの影響を受けないところまで、ほふく前進をするようにして進みましょう。部分的に流れていることが多いので、横切るように移動すれば、流れから抜け出すことができるはずです。
ダイビング中の事故7:寒さ
◆寒くて震えが止まらない!水中では空気中の約25倍もの速さで体から熱が奪われるため、水温の低い海ではもちろんのこと、南の島の温かい海でも長く潜っていると寒さを感じることがあります。そのまま潜っていて、震えが止まらない状態になると、非常に危険。低体温症(ハイポサーミア)となり、意識がもうろうとしてくることも。震えが止まらなくなったら、ガイドやバディにすぐに伝え、浮上すること。すぐに温かいシャワーを浴び、ストーブなどにあたって、できるだけ早く体温を上げましょう。
ダイビング中の事故8:海の危険生物によるケガ
◆毒のある生物に刺された!ヒレに毒のトゲがあるミノカサゴ。海の生物には触らないことが、自分の身も海の環境も守るのに役立ちます
⇒最悪、死に至ることも? 海の危険な生物と対処法
ダイビング中の事故9:窒素酔い
◆深場で頭がボーっとする!深場に潜ると空気中の窒素分圧が高くなるため、麻酔作用によってアルコールに酔ったような症状が出ることがある。これが「窒素酔い」で、ダイビング中の判断能力などに悪影響を与えるので注意が必要です。個人差があるので、どの水深で起こるかは一概にはいえないのですが、頭がボーッとするなどの症状を感じたら、ひどくなる前に浅い水深に移動するべき。窒素酔いになりやすい人は、なるべく水深30m以深には行かないようにしましょう。
ダイビング中の事故10:減圧障害
◆急浮上して減圧症の疑いが・・・ダイビング中に体に溶けた窒素が、減圧のときに気泡化して組織が圧迫され、しびれや痛みなどの症状を伴うのが「減圧症」です。動脈に気泡が詰まり、血液の流れが遮断されたために生じる「動脈ガス塞栓症」と合わせて、「減圧障害」と呼ばれます。減圧症の症状が出た場合は、早い時期での再圧治療が非常に重要。減圧症の症状は8割以上がダイビングの直後~6時間以内で起こりますが、ときには48時間以上後に発症することもあるそうです。インストラクターに相談するか、再圧医療治療機関などに連絡を取り、適切に対処しましょう。
⇒減圧症と減圧障害について
スキューバダイビング中に事故が起きても慌てず冷静に
「ダイビング事故」というと、すごく危険な感じがしますが、その多くは事前の予防や、トラブルの素早い対処で防げるもの。パニックになってしまうことが、潜水事故へとつながりがちなので、とにかく「慌てず冷静に」対処することが大切です。そのためには、普段から予防法や対処法をしっかりと頭の中に入れておき、いざというときのシミュレーションをしておくことがおすすめ。そうすることでダイビング中のストレスを減らすこともでき、より快適に海を楽しむことができます。ぜひ皆さんも、高い安全意識を持ってダイビングを楽しんでくださいね。【関連記事】