新「モット・キッチン」の展示
最大の特徴は「行動観察」という調査手法によって、使い手自身が気づいていなかったキッチンの無駄を発見し、ハード面・ソフト面で改善したことです。どんな無駄があって、どう改善したのでしょう。
行動調査を行った理由は、作業スペースと収納で意見が割れたから
開発したオリジナルキッチンの名称は、新「モット・キッチン」。つまり、伊藤忠都市開発が2009年に開発した「モット・キッチン」(ミセスモニターのニーズを基に、汚れが落ちやすいレンジフードやホーローキッチンパネル、包丁やまな板などをスッキリしまえる収納などを搭載)をさらに改善したものです。この6年間で、「モット・キッチン」を導入した新築マンションを数多く販売したことから、ユーザーへのアンケート調査や訪問インタビューを繰り返したそうです。その結果、全体の満足度は80%と高いものの、「スパイスラックの高さや幅が足りない」「包丁差しは子どもが開けてしまいそうで不安…」といった声も聞かれ、改善の余地があることが確認されました。
一方、「作業スペース」と「収納」については、十分派と足りない派に意見が分かれ、改善策が見えにくい結果となりました。そこで、「行動観察」(無意識にキッチンを使っている動きを観察して、どこに問題があるか分析する)という手法でモニタリングすることにしたというのが経緯です。
行動観察でわかった「キッチンのムダはここに隠れていた!」
ディンクスとファミリー、家事をしながら調理をするのか、集中して調理をするのか、などタイプの異なる4人のモニターのお宅を訪問して、調理する工程を観察したところ、浮き彫りになったのが次のような点です。(1)収納の仕方を知っているかどうかで、調理時の作業効率が変わる
- 作業台にモノがあふれて作業スペースを埋めている
- 物を上に積み上げているので、使うものを取り出すのに時間がかかる
- 実家と同じレイアウトにすることで、かえって非効率な収納レイアウトになっている
- 使う場所としまう場所が離れているので、動線が長くなっている
- 調理時に出たゴミを溜めて置いていたり、レシピ本が幅を取ったりして、調理するモノの置き場を狭くしている
- コーヒーメーカーや出しっぱなしの調味料などが、定位置は違うのに常時作業スペースを占領している
この話を伺って、筆者は思わず頭を抱えました。思い当たる節が大いにあったからです。
写真のように、まさに作業台にモノがあふれて、調理のためのスペースが狭くなっています。大徳さんが例示された、「ゴミを溜めて置いてしまう」というのも、わが家にありました。ほかにも、調味料やラップ類をしまっている調味料ラックが右端にあるので、行ったり来たりしなければならないという動線になっていました。
収納と動線を改善して作業をスムーズに
意見が割れた「収納」と「作業スペース」の不満を解決するために、次のような収納と動線の改善プロセスを踏むことになりました。○「収納」と「動線」の改善プロセス
(1)モノの量を把握
・モノの適正量を設定する。
・食品・調理用具以外にもキッチン空間にあると便利なものを設定する。
(2)モノの定位置を決める
・調理動作とモノのしまう位置をリンクさせる。
(3)モノのしまい方を整理
・空間を最大限に活かすしまい方を検討。
では、具体的に見ていきましょう。
セミナーや個別フォローでキッチンの最適な使い方をアドバイス
このように適正なモノのしまい方や動線などが綿密に考えられているキッチンなのですが、こうした考え方を理解してキッチンを使わなければ効果は発揮されません。加えて、各家庭で収納するモノの量や種類も違います。そこで、新「モット・キッチン」では、アフターフォローのサービスを導入しています。希望する家庭は、「入居前」にセミナーに参加し、モノの最適量や定位置について学んだり、「入居後」に自宅に収納アドバイザーに訪問してもらい、各家庭の状況に応じた片付けコンサルティングを受けることができます。 一般論ではなく、わが家の場合を知りたいと思う人が多いでしょうから、ぜひ利用してみたいサービスだと思います。
また、モデルルームのキッチンは、下の写真のように開放感を演出するために、「吊戸棚」を無くしたり、シンクとカウンターの間の「立ち上がり」を無くしたりする場合が多いのですが、「モデルルームの開放感に惹かれて吊戸棚のないタイプを選んだけど収納量が不足していた」とか、「立ち上がりのない形状を選んだら水はねが気になった」といった感想もあったといいます。
モデルルームのキッチンの形状
モット・キッチンの展示とモデルルームのキッチンを見比べることで、違いを実感しやすくすることと合わせて、セミナーなどでモノの量を把握するなどすれば、吊戸棚や立ち上がりの有無の選択を後悔することも避けられるでしょう。
キッチンは、朝昼晩と使う頻度も多く、汚れがちなので掃除もコマメにする必要があります。しまうのが面倒で出しっぱなしにしてしまうモノも多いので、きれいにすっきり使うことが難しいというのが筆者の実感です。しまい場所が綿密に計算されていることもうれしいのですが、「わが家の場合はどうしたらよいの?」という疑問に答えてくれるフォローサービスは、とても有効だと思いました。
■関連リンク
モット・キッチンの専用サイト(伊藤忠都市開発)