熊本地震の発生から2ヵ月以上が経過しました。既に梅雨のシーズンですが、これからは台風などによる豪雨被害も到来も懸念されるところです。未だに多くの方々が避難生活をされており、一日も早い復旧・復興を願わずにはいられません。さて、私は5月下旬に熊本県を訪問し、益城町を中心に現地の様子について取材をしてきました。今回の記事は、この地震災害と被害が私たちに示唆する今後の住まいづくりの課題について紹介します。

繰り返しの大きな揺れに襲われた熊本地震

熊本地震
熊本城

屋根や石垣の一部が崩れてしまった熊本城の様子。城内の立ち入りが制限されているが、最近ライトアップが再開されたそうだ(クリックすると拡大します)

には阪神淡路大震災や東日本大震災など従来の地震災害にはなかった特徴があります。政府の発表によりますと、6月16日17時時点で震度6以上を観測した地震が累計7回、震度4以上が108回、震度1以上に至っては1751回も発生しています。

震度7の地震が2回発生した上、その間とその後に大きな揺れが続いたわけで、これほど繰り返しの地震に見舞われた地震災害は、我が国の地震観測史上初めてとのことです。

このことを頭に入れていただいた上で、最も伝えたいことを先に書いておきます。それは熊本地震により、「現在の耐震基準による住宅であれば大地震の揺れでも安心」という「常識」が通用しなくなったということです。

で、ここで注意点を。ここでいう倒壊、半壊という表現は、行政のそれとは異なる視点であるということをご理解ください。現地では一見安全とみられる住宅についても、「危険」、あるいは「要注意」との危険度判定がされているケースがみられました。

これは宅地の危険度判定、土地が受けた被害の状況とも関連するもので、建物が安全層にみえても土地の状況を含めると危険とされ、そのため「倒壊」とみなされているということがあるということです。

以上を踏まえた上で下の写真をご覧ください。これは震度7に二度襲われ大きな被害が発生した場所の一つである益城町で撮影したものです。2棟の倒壊した住宅が見られます。
築浅住宅

左側の住宅には、駐車スペースにテントが張られていた。一度目の震度7では倒壊せず、テントの中で避難生活をしていた形跡がうかがわれた(クリックすると拡大します)


右側の住宅は1階部分が崩れ落ち、左側の住宅は1階部分が今にも崩れそうな状態です。デザインなどから察するに、いずれも築10年程度、おそらく2000年以降に建てられたものだと推測されます。

これまで一般的に1981年以降の新耐震基準施行後に建てられた住宅、要するに近年建てられた住宅なら大きな地震の揺れでも倒壊することはないといわれてきましたから、それをくつがえす衝撃的な光景といえます。

無駄ではなかった耐震化の取り組み

倒壊した原因は、震度7など大きな揺れに幾度も襲われたことだと考えられます。言葉を換えると、一度目の震度7の揺れには耐えたものの構造体の強度が弱まり、その後の揺れで倒壊してしまったと考えられます。

ここに現在の耐震基準の限界があるわけです。耐震基準は阪神淡路大震災以降、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)の施行などにより、強化されました。しかし、それでも繰り返しの大きな揺れに必ずしも耐えられるものではないということが、今回明らかになったわけです。

古い住宅

1階部分が崩れていた2棟の住宅。熊本の住まいは台風対策のため重い瓦を乗せていた住宅が多く、それが今回の地震で災いしたといわれている(クリックすると拡大します)

ただし、だからといって耐震化をはじめとする地震対策の取り組みは決して無駄ではなかったといえます。というのも、熊本地震は阪神淡路大震災と同規模の地震が、しかも二度にわたって発生したにもかかわらず、被害の規模は圧倒的に少なかったからです。

発生した時間帯や人口の密集度合い、火災の発生状況など、発生した状況が大きく異なることがあげられますが、住宅をはじめとした建物の耐震性能が当時に比べ、格段に向上していたことが被害を小さくした大きな要因と考えられます。

また、大きな被害を受けた益城町ですが、全ての住宅、建物が倒壊、半壊したというわけではありません。倒壊した住宅のすぐ近くには無傷のように見える住宅もありました。

特に築後50~60年、あるいはそれ以上経過したとみられる老朽化した住宅の多くが倒壊していた一方で、比較的新しい住宅では倒壊を免れているものがより多く存在していました。このことは住宅の耐震化の取り組みが果たした大きな成果と考えられます。

では、熊本地震を受けて、私たちが今後の住まいづくりやそのあり方について教訓とすべきこととは何なのでしょうか。まず第一はこれまで申し上げてきたように、耐震基準やその性能についての過信をすべきではないということです。

本当に信頼できる住宅事業者なのか慎重な検討を!

例えば、工法の問題。鉄骨だったら鉄筋コンクリート造(RC造)だったら安心、あるいは木造はちょっと心配など、色々な考えがあると思いますが、今回の地震災害ではこれまでの大地震で全半壊がなかったとされていたプレハブ工法やツーバイフォー工法の住宅でも全壊被害の報告があります。
健軍

アーケードが傾いている熊本市東区の健軍商店街の様子。左奥では倒壊したスーパー(RC造)の解体工事が行われていた(クリックすると拡大します)


RC造でも大きな被害を受け、居住が困難になった建物がありました。ですから、まず第一はしっかりとした施工品質と技術を持つ住宅事業者に住まいづくりを依頼すべきということです。

今回の地震災害で、比較的新しい住宅が倒壊していたケースでは、その原因はもしかしたら施工不良にあったのかもしれません。また、施工不良ではなく、建物のバランスが悪かった、言葉を換えると地震の際にどこか特定の箇所にダメージが集中するような構造だったことも考えられます。

これは、要するに設計段階で地震に対する配慮が足りていなかったということ、つまりハウスメーカーなど施工者の地震対策の技量や誠実さが足りなかったことが要因でありうるわけです。

ですから、私たちは施工業者の善し悪しをより厳密にチェックしたいものです。最近は、繰り返しの揺れにも対応する「免震」や「制震」の技術を有する事業者も増えてきました。そうした事業者を積極的に依頼先として検討すべきです。

ちなみに、住宅品質表示制度には地震対策として耐震等級がありますが、仮に最高等級4であっても必ずしも倒壊しないわけではありませんし、安全が保証されているわけではありません。また、設計上最高等級であっても施工に問題があればそれに見合った品質・性能にはなりません。ですから、施工者や供給者の信頼性は非常に重要なのです。

災害後にどんな対応をしてくれるかもチェックすべき

益城町

益城町の様子。傾いてしまった住宅、屋根に被害がある住宅、一見被害が全く見られない住宅など被災の状況は様々だ。ただ、被害が少ないように見える住宅でも、構造体の点検などを行う必要がある(クリックすると拡大します)

もう一つは、災害が起こった後のこと。皆さんの住まいを施工した人たちがどんなことをしてくれるのかを検討していただきたいということ。大きな災害の際でも、比較的早くから点検や補修の対応をしてくれるのか、ということです。

今回の取材を通じて大きな課題と感じたのは、大きな被害を免れた住宅についてです。既に大きな揺れを何度も受けており、構造体にダメージを受けている可能性があります。次に大きな揺れが発生した際、倒壊しないとは言い切れないわけです。

今後住み続けるためには構造体の状況を点検し、必要であれば補強しなければなりません。実際、熊本県内では被害の大小にかかわらず、「今後の地震が心配だから、我が家の耐震性について厳密な点検をしてほしい」という人たちが数多くいらっしゃるそうです。

このような点検や補修を含めて、災害の早い段階でしっかりとした対応をしてくれるか、ということも皆さんにはハウスメーカー選びのポイントとしていただきたいと思います。住まいの安全性が確保されていることが分かれば安心できますし、その分日常生活を取り戻すのも早くなるはずです。

くまモン

JR熊本駅の新幹線構内にあった特大くまモン。7月4日から通常ダイヤと運行本数に戻る予定で、市内中心部を中心に少しずつ通常の状態に戻りつつある。観光などで支援したいものだ(クリックすると拡大します)

このほか、事業者以外に検討すべき点として、住宅を建てる場所が地震発生時に被害を受けやすい場所か、そうではないかもしっかりと検討しておきましょう。熊本地震は二つある断層が動いた結果発生したものですが、被害はその直上周辺に集中していました。

今回被害が特に大きかった益城町は、まさにそうした場所でした。ここは丘陵地を切り開いた場所で、盛り土・切り土の上に建つ住宅も多く、それが崩れたて被害が大きくなっていた場所もありました。また、同じく被害が大きかった阿蘇町では傾斜地で大きな被害が発生していました。

それぞれの土地にどのような災害が発生し、被害がどのようになりそうなのかについては近年、各自治体がハザードマップとして情報を公開するようになっています。そうしたものにより、土地や地盤の安全性を確認した上で、住宅を建築、取得することも心掛けるべきでしょう。


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