長生きするほどトクする保険
長生きでオトクになる保険?
たとえば加入者1人につき500万円の保険料を一時払いし、1000人の加入者を集めたとします。保険料は50億円です。保険期間が満了する30年後、1000人の加入者のうち500人が亡くなったとします。この間の運用利回りを年平均1%とすると、50億円は67億3900万円になります。これを500人の生存加入者で分配すると、加入者1人あたりの満期保険金は、1347万8489円になります。
このように、長生きできた加入者ほどトクをする仕組みになるわけですが、一部では「他人の死を待つようで倫理的にいかがなものか」という声もあり、これを積極的に取り上げる保険会社は、これまであまりありませんでした。まあ考え方次第ですが、この手の仕組みはあっても良いでしょう。
今の年金制度は、現役世代が高齢者世代の年金を負担する賦課方式になっていますが、今後、全人口に占める高齢者の比率が一段と高まる一方、現役世代の比率が低下していくなかでは、賦課方式にも限界が生じてきます。
でも、トンチン保険のように、高齢者間で相互扶助させる仕組みを作れれば、幾分なりとも若い人たちの負担を軽減させることが出来そうです。
実際、一部の生命保険会社が、トンチン保険の発想を盛り込んだ商品を提供し始めています。
保険による老後資金運用は有利なのか
ただ、問題は保険商品で運用することの非効率性です。たとえば日本生命の長寿生命保険「グランエイジ」は、死亡保障をせず、解約返戻金を低めに抑えることで、払込期間満了時に受け取れる保険金を手厚くしたものです。50歳でこの保険に加入し、保険料の払込満了・年金開始年齢を70歳にして、20年間、月払いで保険金を払い込んだ場合の保険料は、10年間年金を受け取れる10年確定年金型で、毎月2万2632円です。
これを20年間払い込んだ場合の保険料合計額は、543万1680円になります。そして保険料の払込期間満了後は、毎年60万円の年金を10年にわたって受け取れるわけですから、毎月2万2632円を20年間、積立運用した結果、20年後の元利合計額が600万円になるための年利回りが何パーセントになるのかを計算すると、運用面での有利さがわかりそうです。
これを積立のシミュレーターで計算すると、年利回りは0.975%になります。確かに、年0.001%しかない定期預金で運用するのに比べればはるかに有利です。
ただ、20年という運用期間で年0.975%の利回りが、本当に有利なのかどうかという点については、いささか疑問です。もし、上手に分散されたポートフォリオで年平均3%の運用が可能なら、20年が経過した時点での元利合計額は、744万8706円になります。
もちろん、投資信託は20年後、確実にいくらになるとは言えませんが、必要な時、いつでも解約できる流動性の高さもあります。これに対して保険の場合、保険料の払込期間の解約は顧客の損になるので、一度積み立てを始めたら、払込期間が満了するまで続ける必要がありますし、積み立てた保険料の一部を取り崩すこともできません。
こうしたメリット、デメリットを考慮したうえで、保険を使った老後資金運用の是非を考える必要があります。
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